戦国時代の攻城戦映画として:防衛側の積極的な策は最初の交戦シーンでしか描かれず。浮城の特性である「一本道」を活かした防衛戦は良かったのですが、その後、水攻めに対して積極策が何気に何一つないのが残念。
事前に城内に入っていない農民たちへの工作を仕掛けるといった場外戦を仕込むシーンがあるだけで随分違うのですが、そのような描写はない。これは「のぼう」というキャラクターに対して脚本や演出が引きずられた結果に見えた。
戦国領主の政略戦映画として:冒頭、領主は秀吉軍に渡りをつけて裏切りを仕込んでいた訳ですが、城代が「挑発」(されたうちに入るのか?あれで)を受けて籠城合戦を選択するという展開。秀吉は三成の軍功を期待して内通情報を伏せて忍城に差し向けている訳ですが、そういう設定するより「何が何でも戦って押しつぶせ。降伏を認めるな」と命ずればいいだけではないか。のぼうが合戦を選択する理由に曖昧さを引き入れた演出意図がさっぱり分からない。
コメディ映画として:水攻めされた中、舟を出すシーン。攻城戦ものとしては落第ですが、狙撃される事で士気を取り戻そうという展開はなかなか楽しめたのは確かです。
ということで戦国時代の攻城戦、政略戦としては落第だと思うのですが、コメディ映画としては最後の最後でなんとか成り立ったように思える。ただそれで犠牲にしたものも多かった訳で、忍城攻城戦として描く必要があったのか題材選定ミスではないかというのが本作に対する懐疑です。