2012年11月10日土曜日

[映画] 悪の教典

11月10日(土)夕方の回でみました。シネコン、最大のスクリーンが割り当てられており満員御礼期待だったみたいですが、残念ながらそこまでは混んでおらずといったところ。

三池崇史監督作品。当たりと外れが混在し、当たった時でも予想外の演出をされる印象。
本作の場合、なんとなく主人公の特異性が三池監督にマッチしていそうな予感があり、当たりを予想してました。

結果から言えば、当たり。要因は三池監督のハスミン愛でしょう。
原作は上巻でサバイバルゲームへの序章としての水面下の動きが描かれ、下巻途中からサバイバルゲームが描かれます。サバイバルゲームパート=バトルロワイヤルとの類似性は映画を終わった直後から聞こえてきましたが、これは原作がそもそもそういう作品なので当然かなと。
原作について言えば、正直傑作か問われると私は疑問です。これは「新世界より」の存在があっての事なのですが、あとは先ほど言及した、校内サバイバルものとしての傑作である「バトルロワイヤル」の存在があります。その類似性ついて言えば二番煎じは確か。
ただ本作は希代のサイコパス蓮見聖司を産み出したという一点において意義があると思う。

映画は上巻の修学旅行や交通事故シーンはカットした事でサバイバルゲームパート突入の早さはストーリーの整理が出来ていて好印象。但し私は原作を読んでいるので、説明不足または荒い展開に見える人もいらっしゃる可能性はありそう。
サバイバルゲームシーンは散弾銃の連射。ただ弾込めしては発砲を繰り返しているのでそこで反撃をせず泣き叫んで撃たれるのを待つという描写だけ違和感。階段シーンも全員で駆け下りようとして全員を止められるかと言えばそれはないはず。但し先頭が撃たれる可能性はあり、これを誘導する人がいるか、暴走として実現されるのか。それとも映画のように撃たれるのを待つのか。生き残りに際してそこまで従順な人はいないと思うのですが、この点も原作が孕む弱点の一つなので言っても仕方が無い話ではあります。

本作の良い点は三池監督の悪ふざけというか悪趣味さが良い意味で主人公=蓮見聖司にマッチしていた事。末期の台詞が「東大」に対しての蓮見教諭の誤解した回答の酷い事。「究極超人あ〜る」の「灯台に入りたい」に似た駄洒落っぷりには呆れつつ心中爆笑でした。
映画が終わった後で文庫版「悪の教典」をチェックしたら下巻解説に三池監督登場。本作のハスミンを如何に愛しているか切々と説明されていました。まあ、これだけ思い入れがあったから、見事はまったんだろうなと思います。
最後の「To be continued」、原作は「悪の教典」しかなかったと思うのでこのあたりに三池監督の思い入れが見て取れます。

キャスティングについては伊藤英明=蓮見聖司ははまり役。その分高校生キャストはヒミズ組の染谷健太、二階堂文など最近の映画の高校生役ではまり役だった二人がセッティングされていたりと意外感がない人選。ただ本作の目的がハスミン愛だとすれば、高校生役は定評あるキャスティングを行ってうまく手抜きするのは確かにありでしょう。
何を入れて何を外すか、そのいった観点でみると映画作りとはどのような思考の産物か見えて来て面白い一作です。この意味で原作は読んでから見た方が楽しめるかなと思います。