2012年12月9日日曜日

[映画] 砂漠でサーモンフィッシング

2012年12月8日(土)18時の回で見ました。

英国のユーモア小説「イエメンで鮭釣り」の映画化作品。
イエメンの王族の資産管理会社の女性が送ったメールがきっかけで一見噓みたいなプロジェクトが内閣広報、外務省側の都合により具現化。主人公である漁業省の研究者は最初反対していたにも関わらずいつの間にか取り込まれて行くという物語。

本作では"Faith"(信心)という言葉が繰り返されます。
一つはイエメンで鮭釣りを実現してみせたいという夢の為に資金を投じるイエメンの王族の信心。その言葉に動かされて具体化の為に動こうとする主人公とヒロインの信心。
もう一つは主人公のヒロインに対する愛。途中、従軍中のヒロインの恋人が作戦中行方不明になってしまい、職務放棄状態に。主人公がいたわりそれでも君が必要だし、何かあればすぐ帰国出来るように王族にも頼んであると説明してようやくイエメンへ。そして……というあたりはステレオタイプなロマンスものの展開。このロマンス、あくまでも主人公側からヒロインを見た愛を試す物語になっているように思えます。
英陸軍大尉との付き合いは「3週間」で、主人公とヒロインは大尉が行方知れずの間も仕事で接していてその関係の方が深まったという事なのだと思いますが、これは人によってはあまり気に入らない展開かもしれないですね。

脇役としては、ある種非情さをもつ内閣広報官(原作は男性。本作では子供が何人かいる女性)、主人公に対して冷たく交渉下手でプロジェクトを危機に追い込む漁業省の上役など魅力的。特に内閣広報官が繰り出す陰謀は時に笑いを、時にそのブラックさに呆れる他なかったです。この女性広報官を主人公にしてシリーズ化しても面白いかも知れません。

本作にプロジェクトX的な側面があるという説があるようですが、鮭の導入に関してあり得る程度の論証レベルで行われているレベルで現実的にありえるかは疑問です。鮭の回遊を狙った稚魚放流ではなく、生育した鮭を離して疑似遡上させたところでルアーフィッシングするというプロジェクトになっているので科学的にありえるであろう範囲に調整しているように思われます。
作中でいくつか関係者ヒアリングシーンがありますが、必要とはしないと思われるものも含んでいて、作中のリアリティラインをクリアするために細部を少し描いてみせたという程度ではないでしょうか。そう考えるとプロジェクトX云々は考えない方が良いかと思います。

原作、amazonのレビューを見ると映画とかなり違う物語になっているようなので、取り寄せて読んだ上でまた比較した感想は書く予定です。(白水社から出てますが、出版社在庫も乏しいらしく手に入らない可能性はありそう。amazonのマーケットプレイスはそのような状況を反映した価格設定になってますし。。。)