2012年12月1日土曜日

[映画] 007 スカイフォール

2012年12月1日(土)公開初日12時30分の回(字幕版)で見て来ました。ファーストデー1000円の日、期待作としては入りはボチボチといったところか。
(12月8日(土)20時に吹替版)

オープニングはいきなり奪取されたHDD(何故そんなところにそんなものがあると思ったらいけないんだろうな)を巡って一大チェイスを経て下される意思決定からOP曲へ。タイトル同名曲のPV状態。
続いてMI6本部がサイバーテロを受けて呆然とするMというシーンを見ていると、コンピューターが実質魔法扱いされている印象を受けます。でもこの印象はその攻撃を指揮している「敵」からは受けないというあたりが不思議。

ターナー「解体の為に曳航される戦列艦テレメール」の画の前で旧世代の象徴であるボンドと新世代に属するQと接触するシーンがあるのですが、世代がテーマになっている事がよく分かるシーンになっていました。この画、英国ではよく知られている作品との事で分かりやすいシンボル提示かなと。ただ本作を最後まで見ると世代対立の話というより旧世代でもまだまだ現役で戦う人もいるのだという話で終わったのはちょっと肩すかしか。

ストーリーは三つのパートに別れているのですが、最初のパートで勝負がついたように見えて……という構造のせいで一度話のテンポが緩んでしまうのが残念。あと、そこで仕掛けられた「魔法」に対してあまりに無防備なQの分析も常識で考えれば、あんな安易にLANケーブルを差し込むのかねとは思わざるを得なかったのが残念。やっぱり「魔法」扱いなので、この部分のリアリティラインが非常に低いです。
その一方で戦闘シーンは何故そうなるのか見せる演出を徹底。例えばオープニングの敵はまるで銃弾が無尽蔵かのように連射しまくる訳ですが、拡張された弾倉を付けてあって苦笑。屋敷での攻防戦も罠をつくるシーンがちゃんと挿入されていて納得させる作りになっています。物理的にありえるものに対する描写の丁寧さはコンピュータの描写と大変な違いになっているのはメンデス監督の認識の現れとすれば興味深い所です。
それにしてもシルヴァさん、どうやって兵員やAW-101(ジェットエンジン3基搭載大型軍用ヘリ。エンジンを3基搭載した事で信頼性は高いがその分調達&運用コストが高い機体)を調達しているのかがさっぱり謎。この点は「ダークナイトライジング」のベインに対して宗教的な信心で付き従う傭兵たちと同じ問題を抱えていると思う。

ということでコンピュータ=魔法という描写は大変残念でしたが、戦闘シーンやロンドン脱出で出て来てニヤリとさせられたある乗り物を出してくる等、旧作へのオマージュを織り交ぜつつ、冷戦崩壊後のエスピオナージュの物語を作り出したサム・メンデス監督の手腕は上手い。英国を初め世界的なヒット作になっているのも当然だと思った次第です。

追記:字幕版翻訳は戸田奈津子氏。テロップのフォントが大きく字数少なめ印象。字幕版で見るなら原語に注意して補足で字幕を見るのが一番かも。と考えると最初から吹替版で見ていた方が分かりやすい可能性はありますね。

追記2:吹替版を見ていると、世間を騒がせた「マム」(マダムの短縮系。目上の女性に対する敬称)問題は跡形もなかったような。あと最後のMのシーンも007を信じて良かった的な解釈になっていて違和感なく終了。ボンド家の秘密脱出トンネルが「清教徒革命時代」(戸田奈津子訳)か「宗教改革時代」(吹替)なのかについてだけは前者の方がいいかなとは思います。(後者も間違いではないですが)
あと最後のMの部屋のシーン。部屋に飾られた絵は帆走木造軍艦の艦隊戦の画でした。Qとの邂逅での「解体の為に曳航されるテレメール」が古い世代の終焉を暗示していたとすれば、こちらはその古い世代が現役だった際の絵画。50周年、「スカイフォール」を経た新生007の新しいスタートを示しているように思えます。