2012年12月29日時点で50本56回見ました。(うち4本は途中退場)
自身で書いた感想を読み返すと脚本の論理的整合性重視な人だな>俺、という事がよく分かる。その事を踏まえてお読み下さいませ。
過去ランキング:2009年|2010年|2011年
1:ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ(日本公開時タイトル「裏切りのサーカス」4月21日、28日、5月12日)
2:アルゴ(10月19日英語版、27日、11月3日字幕版)
3:ドラゴンタトゥーの女(2月10日字幕版、18日吹替版)
4:ドライヴ(6月23日)
逃がし屋の主人公とその隣人の人妻と家族の物語。逃し屋の物語は世界設定の一部に過ぎず、一瞬訪れた幸福、その後起きた出来事によって引き起こされる連鎖反応の中でそれぞれが何かを守ろうとする事を描いた作品。
組織犯罪のボスがわりと気軽に人を殺してしまう訳ですが、この点のリアリティーは薄め。むしろ直接手を下すシーンを入れる事で、何かを守ろうとしている人でもある事を示したように思えます。
暴力描写に使い分けがある作品で、集団襲撃はリアルに、個人対個人は象徴的な描写になっています。最終的に個人に帰結させようという意図があってこのような組み立てになったのだと思いますが、本作は成功していると思います。
アメリカ映画としては意表をついた作品。アクション映画ではなくラブストーリーであり、それでいてアクション映画であるという不思議な味わいを体験出来ました。
5:桐島、部活やめるってよ(8月19日)
6:007 スカイフォール(12月1日字幕版、8日吹替版)
7:Looper(10月19日)
8:もうひとりのシェークスピア(12月29日)
9:黄金を抱いて翔べ(11月3日)
10:レ・ミゼラブル(12月22日)
11:SRサイタマノラッパー3 ロードサイドの逃亡者(9月8日)
12:哀しき獣(2月18日)
犬、熊、狸三つ巴の死闘。引き金を引いているのは男女関係がだったりと万国共通。問題は最初に誰が導火線に火をつけたのか、という謎が通奏低音としてのテーマで三つ巴で相手ののど笛に喰らい付いて行き破滅して行く様が描かれる。"Last man standing"な話の訳ですが最後に立っていたのは……というお話。シンプルなストーリーだと思っていましたが、ちょっと最後は複雑ですね。
これだけのアクションを説得力を持って描く(しかも銃撃戦ではなく、基本殴るか切るか刺すの三択)のは、韓国映画界の十八番ですね。素晴らしい映画だと思います。
13:サウダーヂ(9月22日)
14:ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q(11月17日)
15:悪の教典(11月10日)
16:J・エドガー(1月28日)
FBI初代長官として48年間君臨したJ・エドガー・フーバーの内面から描いたアメリカ史。ギャングや共産党との抗争、連邦政府と州の関係性、リンドバーク誘拐事件、KKK&キング牧師、ケネディ兄弟そしてニクソン大統領までをフーバーの「自伝」として描写。TBSラジオ「宇多丸のウィークエンドシャッフル」シネマハスラーコーナーでは毀誉褒貶が激しくある事象に対して複数の言動が見られたフーバーを評して「グレー」と表現していましたが、FBI長官の立場から描くと共産党関係者の強制的な国外追放など現代の倫理では微妙な方法について、何故そうなるのか説明を加える必要がありますが、フーバーの内面から描くと何故当然の事なのかを示す事が出来るメリットがあります。また同性愛的な側面について触れる事でフーバーの奇々怪々な言動の背景を示す事が出来ている点は秀逸。但し見る側に一定の知識を要求するのは確かで、アメリカの偶像を破壊する作品である事も相まってアカデミー賞候補から外れたように思えます。
シネマハスラーで「多くの感想は世間の評価は悪いと思うけど私は評価します」といったコメントが多かったそうですが、私も全く同意見です。
17:幸せのキセキ(6月9日)
英国のダートムーア動物園(http://www.dartmoorzoo.org/)の実話を元に舞台を米国に翻案して映画化。ということでそのまま映画かされた訳じゃないですね。
原題は"We Bought A ZOO" なので「幸せのキセキ」という日本語ダブルミーニングな意図のかけらもなし。。。という邦題問題は置いておいて、この作品、一見ハートウォーミング映画に見える訳ですが、先に亡くなった母親が作中冒頭に出てこない、そして亡くなるシーンは子供たちと父親の間で語られるだけとなかなか脚本が凄い。
小さな妹がせっせとパンにブルーベリージャム(だったと思う)を塗るシーンが出てきますが、その後で主人公であるマット・デーモンが妻が好きだった物を遠ざけている事について告げて「でもみんなブルーベリージャムが好きなんだよ」というシーンが効いてきます。
長男は主人公の投影、妹は亡くなった妻、母親の投影。
そこへ差し込まれる妻の思い出のフラッシュバックが効いてくる訳です。(このシーンは全て主人公目線という点も注意が必要。)
妻が登場しない演出上の必然性は最後に見事証明されていてやられたと思いました。
ヒアアフターも逆算の演出でしたが、ちょっと似ている点があると思います。主人公役が同じ点以外でも。。。この作品をハリウッドモデルの良く出来た映画と評している人を見ましたが、ちょっと単純過ぎやしないかと思った次第です。
ただ動物園を経営するという映画としては、請求書の山、現金なくなった、さあ、どうする?という展開は大雑把だなあと思います。「武士の家計簿」もそういうところがあってエンターテイメント映画ではなかなか乗り越えられない壁なんでしょうか。実際、うまい手は思いつかないですし。。。
18:最強のふたり(9月1日)
19:ファミリー・ツリー(5月19日)
原題は"THE DESCENDANTS"。子孫、末裔といった意なので直訳するなら「子孫たち」といったタイトルが的確なんですが、例によって配給会社が変更しています。
映画見た後だと「末裔たち」にして欲しいと思っちゃいますね。"THE DESCENDANTS"は凄く意味があるタイトルです。
カメラワークは微妙。特にクルーニーが走るシーンは無様に撮っている(多分演出上意図的)のですが、引いた絵が多くインパクトがない。コミカルなダンスを見せられたかのようでちょっと納得出来ない演出です。
ズームは上手く使われています。また絵が先に消えて音と音楽が続けるという演出が2回ほど挟まれており、次の場面への切り替えインパクトを強めているあたりは上手いです。
家族の危機、一族の進路、因果応報と作用・反作用といった事が淡々と積み重ねられている。そして最後に主人公の家族に訪れる平穏。
クルーニーのダメ親父っぷりを堪能出来る映画です。前作の「THE Ides of March」での冷徹な政治家よりもはまり役だと思います。
追記:主人公が「No Idea...」と何回言ったかあたりにダメ親父っぷりの論証が出来そうな印象。後半、意思を固めていくうちにこの言葉を言わなくなった事で決意を固めた主人公を表していたように思えます。
20:おおかみこどもの雨と雪(8月11日)
21:ザ・レイド(11月17日)
22:The Ides of March(邦題「スーパーチューズデー〜正義を売った日」4月21日)
戯曲「Farragut North」(ワシントンDC地下鉄の駅名から取られている)をグルーニーが監督・脚本、制作にはディプカリオが入っているというなかなか豪華な布陣。
民主党から大統領を目指す州知事を支える次席の選挙参謀(Campaign Manager)が主人公。理想に燃える主人公がオハイオの大統領予備選討論会のマイクテストをするシーンからスタート。敵対候補の選挙参謀から声を掛けられ美人学生インターンに手を出し絶好調かと思いきや、ある事から瓦解。復讐とも思える駆け引きを経て掴んだものは何か、という物語。「スーパーチューズデー」だと対立陣営同士の駆け引き主体になりそうですが、実際はある陣営内部の人間模様が主体。政治主張もほとんど含まれません。
見所は最後の主人公のクローズアップでしょうか。私はダース・ベイダー卿の誕生を思い浮かべました。
追記:「政治主張」唯一目立ったのは「徴兵、ボランティアの志願制→大学無償化」(主人公によって「義務」に変更される)でしょうか。「選挙民は反対しません。関係ないですから」「18歳以下は若過ぎる」(から選挙権はなく反対も出来ない)という主人公の台詞はえげつないですね。アメリカの冒険小説などでこの手の意見をよく見かけるようになってきましたが、日本だと「自衛隊で苦労すれば良い」(何故か徴兵をされた事がない人がこう言う)のと根は同じだと思いますが、なんだかなあと。。。
23:崖っぷちの男(7月21日)
24:リンカーン弁護士(8月10日)
25:砂漠でサーモンフィッシング(12月8日)
26:エクスペンダブルズ2(10月27日)
27:アウトレイジ ビヨンド(10月6日長野県松本シネマライツ)
28:ゲットバック(11月24日)
29:アベンジャーズ(8月18日)
30:トータル・リコール(8月10日)
31:デンジャラス・ラン "Safe house" (9月8日)
32:ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(3月17日)
タイトル失敗。未だ覚えられません。あと予告編と実態の乖離も大きいですね。
父親がある日突然いなくなっても二人の中で生きつづけていた。その事に二人で気付いて認めるまでの物語(と思った。)
エンドロールのキャスティング、「Black」だらけでした。作中の展開上当然ではありますが改めてこんなにブラックさんが出て来ていたのだと思った次第。
ストーリーの展開、一度降り出しに戻る的な演出は一瞬それかよと思わされました。が、その後にちゃんと着地させる展開があったのはさすが。ただそれが完全なネタばらし的な形で描かれたのが残念でした。
33:ダークナイト・ライジング(7月28日)
34:キツツキと雨(2月11日)
前半は常識的な一般人である主人公を自分たちの都合で振り回す助監督を通じて映画ロケが普通の事ではない事を示し、後半は映画撮影の手伝いにのめり込む主人公と村の人たちという組み合わせでストーリーを展開。非日常的な中での日常描写重視は、沖田監督の「通奏低音」にあります。
こんなストーリーなので最後何に向かって描いていくのだろうかと思っていたら、クランクアップの日にカタルシスをきちんと描いてしまうあたりは上手です。
前半の主人公を映画に巻き込む展開がもう少し当たり前にお願いして引き受けてもらう中、大変な目にあうという展開なら良かったのですが。このあたり、助監督を通じての横暴性が剥き出しになり過ぎていてついていけないところでした。
35:のぼうの城(11月3日)
36:おかえり、はやぶさ(3月17日/3D)
音楽=冨田勲というだけでポイント高いです。脚本のバランスも良く出来ていてある意味一番安心してみられます。
3Dで見ましたが、その価値があるのかは疑問。日本の3D映像は奥行き感はあっても被写体自体の立体感が乏しいように感じます。本作もその傾向は共通。
冒頭お子様向け演出が入りますが、それ以外は極端な感情的な表現に走らず(渡辺謙版は吉岡秀隆の演技が一人相撲だった)落ち着いてみられるエンターテイメントに仕上がっていました。
リアリティー完コピ路線の堤監督FOX版、吉岡秀隆絶叫計画&プロジェクトX的な何かの渡辺謙版、作品バランス&音楽の松竹版といったところ。映画としては本作が一番だと思いました。
(「南極料理人」に似た演出を感じましたが気のせいかしらん)
37:ヒミズ(2月11日)
絶叫する台詞を多用。このあたりは園監督の「指紋」ですね。。。演劇的な手法に見えます。
主人公の少年がかろうじて守っていた世界を、外部からの来襲者が押しつぶして行く展開は良かったと思うのですが、ヒロインの家庭の事情が途中で描かれなくなったり(これはヒロインが主人公に対して最後の方で言う台詞とつじつまが合わなくなる要因になっているので、完全に余計な要素になっている)、2011年3月11日以後の世界である事をニュース映像や宮台氏のインタビュー映像をTVで流す事で示す事に成功しているのに、あまり演出上意味ない形で津波で被災した映像を何回も入れたりと、ストーリーの整理が充分なされず勢いだけで最後まで持って行ったのは残念でした。
なお教師のある台詞の臭さや主人公たちの演技は見物ですしキャスティングも素晴らしいと思います。これだけでも本作に価値はあります。
38:戦火の馬(3月20日)
サラブレット種の馬と育てた青年が第1次世界大戦に出兵する物語。馬は英国陸軍騎兵部隊に組み込まれて全滅の憂き目に合い、ドイツ軍の徴用など流転の運命を辿る。そして青年は英国陸軍歩兵(二等兵)として塹壕戦に加わっていた。
話自体はシンプルです。軍馬(War Horseならこちらの方が本来妥当な訳でしょう)が英国軍騎兵最後の栄光的なシーンに立ち会い、ドイツ軍に徴用され最後はNo mans landを疾走する。騎兵としての軍馬の最期は英国Mark I戦車の登場で暗示されています。(実際は第二次世界大戦でも輜重兵部隊や砲兵部隊での運搬用途で軍馬利用は続いた)
39:タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密(1月8日シネマライツ8松本)
3D日本語吹き替え版。タンタンがまるで実在の俳優が演じたかのようなリアリティーの高い映像で映画化。
逆を言えば、何故CGでなければならないのかという問題が残ります。特撮シーンを考えると実写よりCGが有利なのかも知れませんが、あのタンタンの絵が好みな人にとってはどうかなという問題はありそうです。
脚本、タンタンが特ダネを掴むのが得意な記者という設定にも関わらず、非常におかしな行動を取り続けるあたりが今ひとつ納得出来ません。また実際の所主人公というより狂言回しの役割にしか見えません。そう、真の主人公はどうみても船長なんですよね。特に最後のどつきあいの一騎打ちシーンはなかなかのものでした。
結構説明不足(執事は何者なのか。伏線はあるけどきちんと説明出来る形の回収はされず)なところが多く、ご都合主義多数なあたりは残念でしたが、キーストンコップ的なシーン等結構クスっと笑えるシーンも多く、CGと思えないサッカリンなど登場人物の描写等見所は多い映画でした。
40:ホビット 思いがけない冒険(12月15日)
41:ネイビーシールズ(6月30日)
42:はやぶさ/遥かなる帰還(2月11日)
「イオンエンジンはイオンエンジンらしく」「金だけじゃねえんだよ」「メーカーの立場として反対です」(正確な台詞じゃないので注意)といった「道」と「夢」を吉岡秀隆が怒り、絶叫し山崎努が語る映画。
イオンエンジンを巡る登場人物達の「葛藤」を無理矢理作り出して感動的なストーリーを作り出している訳ですが、有名なイオンエンジンのクロス運用の為のダイオード追加を行った際のストーリー抜きに「メーカーとしてクロス運用は反対。そんな運用をしたイオンエンジンを世界は買わない!」と吉岡秀隆扮するNEC営業に叫ばせるシーンで啞然呆然。
システムの冗長性とか、それを言うならダイオード追加時点で反対した事を示すエピソード、例えば「イオンエンジンの常道に反するから反対だと記録して下さい」とか言わせておかないとストーリーのつじつまが合わないですが、そういう逸話があったと思しき発言は一切なし。
堤監督作品の特徴である安易なサブキャラクターによる傍証的ストーリー展開がないのは良いのですが、結局、ありえない設定で技術を道徳というフィルターを通して感動にすり替えるストーリーはもう少しなんとかなったのではなかろうかと思ってしまいますね。ある意味このシーンの存在でこの作品は終わったと思っています。
43:人生の特等席(11月24日)
44:プロメテウス(8月4日先行公開)
45:図書館戦争 革命のつばさ(9月1日)
46:プンサンケ(8月31日)
47:源氏物語−千年の謎− (1月8日シネマライツ8松本(途中退場))
だってつまんないんだもん。というと身も蓋もないのですが、ぱっと想像出来る平安王朝ものそのものの映像で想像の域内であった事、平安時代であれば暗闇の描写が重要なはずなのに画面の隅々まで行き渡った光線への気配り(明る過ぎる)は昨今の時代劇映画でもやらない古い映像表現でしょう。
怨霊的な何かが出てくるまで頑張ろうと思いましたが、ともかく色彩豊かな平安王朝風俗にリアリティーが感じられず、ストーリーの展開も遅いので途中で放棄して離脱致しました。正月早々先の思いやられる展開です。
<評価対象外>
48:ヘルプ(体調が悪く途中退場)
49:夢売るふたり(環境が悪く途中退場)
50:荒野の用心棒(12月1日/旧作のため)