この作品の受賞がよくも悪くもニュース沙汰になっているのは作品の力ではあると思います。ただ報道は間違いもやってますが。。。
ということでちょっと思った事をまとめてみました。映画自体の感想はこちらへどうぞ。
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イランの反応とホワイトハウス
イランメディアが一斉に反発は彼らのイラン・イスラム革命の中で起きた駐イラン・アメリカ大使館占拠事件をアメリカ側から扱った映画というだけで許せないというもので、予想された反応と言って良いでしょう。
映画自体、冒頭でシャーによる王政が何故イラン・イスラム革命によって倒されたのか極めて中立的に説明を行っています。大使館は国際法上設置されている国側に安全を保証する義務があるところで、学生たちが押し入って占拠する行為は明らかにイラン政府の怠慢です。
ただイラン側にすると革命の中でシャーによる王政を打ち立てた際に影で支援したアメリカという図式が存在しており、その中で米大使館占拠事件は正しい戦いとして意識されているとすれば、今回の反応は理解は出来ます。(共感はしませんが)
それにしてもアメリカを許せなかったホメイニ師が本来友好関係を築きやすかったと思われる人権外交を標榜するカーター政権を敵視し、占拠事件での人質解放がカーター大統領の退任後になったという事実は溝の深さを象徴しています。そして相手の事情を見ないホメイニ師の姿勢も明らかかなと。
今回授賞式にビデオという形でミシェル・オバマ夫人が出演した事が物議を醸していますが、こちらの論点は「何故ミシェル夫人が?」と「何故礼装の軍人たちがミシェル夫人の回りを固めているのか」という2点に尽きます。当たり前と言えば当たり前ですが、「アルゴ」に対する批判ではなく、何故アカデミー賞授賞式にミシェル夫人が何故出たのか(アルゴの制作関係者の娘の発案と朝日新聞は報道)、またその際に礼装の軍人=飾り扱いしていて軍の政治的利用になるのではないかといったホワイトハウスと映画関係者に対する批判になっています。
朝日新聞は何故かこの2つを一緒の記事にしてしまったのですが、結果的に「アメリカ万歳映画」であり異国(イラン)の宗教・文化を否定する怪しからん映画という安直な評価を受ける結果を引き起こしています。
米国内で取り上げられている問題とイランの問題は全く別の話です。これによって合成されたベクトルは全く別の方向を指してしまっているのは大変残念です。
史実に基づくフィクションとは - "Let's make a movie."
もう30年以上前の出来事であり、歴史の範疇に入りつつある話題ですが、逆に情報は豊富で調べる手段もインターネットによってハードルは低くなっています。
史実に基づくフィクションは、その史実をどのような視点で描くのか、またその中でどおように物語を組み立てて行くのかというところが見所ではないでしょうか。
「アルゴ」はその行為に極めて自覚的で主人公であるメンデス(ベン・アフレック)がロケハン移動用のバンの中で小さくつぶやく「Let's make a movie.」から先、大きく史実から離れてフィクション、つまり映画へと変貌して行きます。
オーバーアクションな演出に見えるところがありますが、70'sのアクション映画モチーフの演出に加えて史実とは違う映画としての見せ方をしているんだよという合図でもあるように見えます。
747の離陸シーン。パトカーやトラックが離陸を阻止しようと殺到する。その中を滑走路の端まで使ってようやく離陸する747。こういう離陸シーンは70'sアクション映画ではあった演出ですが今日ではあまり見かけません。
オマージュであり、映画なんだよという事を語らず画として見せたアフレック監督には「Bravo!!!」よりもやはり「Argo f**k yourself !!!」という言葉が似合いますね。