恐ろしくテンポの良いリーガルサスペンス。マイケル・コナリーの小説の映画化。
ブラッド・ファーマン監督の劇場用長編映画の2作目にあたる。
かなり細いカットを積み重ねる手法はPVそのもの。無駄のないストーリーテリングは途中悲惨な展開になりつつも次がどうなるのかという興味が尽きず楽しく見られる映画に仕上がっています。
おそらくは原作が持つアメリカの刑事弁護士の職務上の義務、倫理と対峙するという重いテーマも含まれている。突き付けられた問題に対してどのように法曹として回答を出すのか。この点については残念ながら裏切られた思いはあります。
キャラクター造形は主人公のリンカーン弁護士と元妻、子供、親友でもある調査員などが配されており魅力的。そして彼が弁護しつつ敵対する羽目になる敵役との緊張感あふれるやり取りなど本作の良い点は大変多くあります。
ただ、法曹の世界を描くにあたり、法律と倫理というテーマを扱うのであれば、その範疇で相手を倒す事は必須要件じゃないかなというのが本作最大の弱点です。
原作が読みたくなった、そういう観点で良い作品でした。
追記:で、原作を読んでみました。ネタバレもあるので、
中盤までわりと原作に忠実でした。小説ではある説明がばっさり抜け落ちていますが、その点は問題ないかなと。
問題は中盤からで原作要素を拾いつつも改変が入っており、結末は大きく異なります。上記で書いていた映画版が持つ弱点、原作だと全くないんですよ。法律と倫理の問題と主人公は対峙し結果として代償と自らの痛みを受け入れる。ちょっとバタバタした感じはありますが、刑事弁護士を描いた小説として愚直に忠実な終わり方。
今回の映画版は主人公と犯人の対峙に重点を置いて直接対決させる事でエモーショナルな結末を作り出した訳ですが、その為に法律と倫理に依らない結果になったのは納得し難いものがあります。絵作り優先で脚本がそれを支えられなかった点は大変残念です。