2012年8月26日日曜日

大井浩明<<ピアノ・アンバイアスト>>第3回公演〜1980年代のピアノ作品を巡って

日時:2012年8月25日(土)18時〜20時45分
場所:山村サロン(兵庫県芦屋市)
ピアノ:大井浩明

プログラム
Salvatore Sciarrino: ソナタ第2番 (1983)
高橋悠治: 光州1980年5月 (1980)
尹伊桑(ユン・イサン): 間奏曲A (1982)

Salvatore Sciarrino: ソナタ第3番 (1987)
姜碩煕(カン・ソッキ): ソナタ・バッハ (1986)
Brian Ferneyhough: レンマ-イコン-エピグラム(1981)

休憩(10分)

陳銀淑(チン・ウンスク): ピアノのためのエチュード集 (1994-2003) (初版+改訂版)
 I. インC(初版+改訂版)
 II. 連鎖(初版+改訂版)
 III. 自由なスケルツォ(初版+改訂版)
 IV. 音階(初版+改訂版)
 V. トッカータ〜大井浩明のために
 VI. 粒子〜P.ブーレーズのために

横島浩: ピアノ独奏のための<<華麗対位法II Florid Counterpoint II>> (2012) (委嘱新作初演)
 第1曲「Palestrina」
 第2曲「Josquin des Prés」

アンコール
 Beatles "Get back" 姜碩煕編曲・ピアノ独奏

感想
前半の音楽は、電子的なコミュニケーションが思い浮かんだ。様々な光(信号)が縦横無尽に飛び交うそういう空間を音楽に置き換えたらあのような演奏になるのではないかと。1980年代はまだコンピュータの影響をあまり受けていない時代だと思うのですが、現代音楽という視点ではそのコンピュータの影響を先取りしていたように思えたプログラムだった。
前半で一番調性を持った音楽に聞こえたのが高橋悠治氏の楽曲だったというのは、今回のプログラムの尖り具合が分かるかなと。

短い休憩時間の後、陳銀淑: ピアノ練習曲集より第1曲から第6曲。曲想はそれぞれ全く異なる。そしてタイトルと音楽の内容は一致しているという意味では分かりやすい。
個人的には陳銀淑さんのピアノ練習曲集と出会えたのが今回最大の収穫だと感じています。

プログラム最後は委嘱新作初演の横島浩「ピアノ独奏の為の<<華麗対位法II Florid Counterpoint II>>」で締めくくり。
最後が重ためな印象で終えたのですが、アンコールとして姜碩煕編曲のBeatles "Get back"。良く知られたメロディライン姿を見せたり消えたり。一人で演奏されているはずなのに多くの音が奏でられた事でバンドがいるのではないか。そのような幻を見たように感じられた。
映画でエンドロール前に観客の気持ちを落ち着ける為に明るいエピローグを挿入する事がありますが、今回のアンコールにはそのような効果がありました。

前回も感じたのですが、大井浩明氏の演奏は強く鍵を弾いた時の音の美しさが素晴らしい。今回もいくつかの楽曲の演奏でその音を聞く事が出来た。自宅に戻ってから復習としてYou Tubeにあった他の方の演奏を聞きましたが、音の情報量はライブが一番という事を今更ながら思い知らされました。(録音での再現は限界があるという意味で)

7月の第2回公演と今回の第3回公演。なかなか聞く機会がない曲ばかりであり、大変貴重な場だったと思います。(委嘱新作の初演が2回ともあったというのも含めて)
大井浩明氏の演奏、ジョン・ケージ氏や陳銀淑氏の音楽は今後も注目したいなと思った次第です。