2010年3月28日日曜日

半分の月がのぼる空

3月28日(日)伊勢・進富座の10:45の回で見てきました。


原作の1巻~8巻を元にエピソードをなぞるのではなく再構築してみせる方法論を取っています。
過去の実写化、アニメ化、ドラマCD化ではエピソードに基本的に忠実で話数の問題もあってヒロインが退院する5巻までが限界(ドラマCDだけ特典CDで5巻と6巻の間に入る短編"one day"を収録)でしたが、本作はあっさり5巻の壁を突破。
冒頭、裕一が何故病院でグローブとボールを持っているのかとか、走り回る里香っていいのかよとか不可解なシーンは結構多いのですが、大枠はよく出来ているし単なる実写化ではなく、一つの映画を作ろうという意思が感じられるものでした。
少々頂けないのはカメラワーク。印象的な撮り方も多いのですが、その一方で手持ち撮影だったのかフェイク・ドキュメンタリー風にカメラが揺れるのが正直気持ち悪い。。。あれは参りました。
キャスティング、良かったと思います。

原作だとSWATばりのアクロバティックなシーン(母親に入室拒否された裕一が屋上からロープで里香の病室を訪問)があって、作中の時間の進み方に問題(ロープ降下で危機発生→外部から応援が駆けつける……のって5分や10分じゃ無理)があるなと思っていました。
このシーン、実写ではカットした方が良いだろうと思っていましたが、今回の映画化では大幅変更。このやり方のおかげでヒロインの強さは原作の何割か勝っている印象を受けます。(逆に主人公が弱くなっています)
ヒロインの母親が主人公とヒロインの関係に対する理解があるように変更されている点は納得。ただヒロインの病室前で二人して叫び合うのはどうかと思う。。。
原作ファンとしてはまさかの学園祭シーンが採用されている点は高く評価出来ます。いやヒロインが主人公を叩くシーンもあるしこの点は言う事はなしです。

それにしても、終止登場するある大泉洋さんが演ずる医師の設定は想像していませんでした。これならヒロインの白無垢姿が先行マスコミ公開されても問題ない事は納得。
ただ、この後の展開、もう少し時間を掛けて描いても良かった気がします。
あと服装や医師に食ってかかる高校生彼氏のヘアスタイルなどは、結構考証して調整していると思います。これは結構大事なポイントでしょう。

ただ、この手法をとったせいで後半の流れが一度ぶつ切りになったのは間違いないところ。
というかトリッキー過ぎますね。
やらなければ単なる涙強奪映画と受け取られかねないところだったので工夫されたところなのだと思いますが、この点で監督の自我表現が突出してしまった気がします。
もう少しマイルドなつなぎをして欲しかったところです。これじゃミステリーですよ。

といろいろ書いてみましたが、昨今の邦画としては良い方の出来じゃないでしょうか。
これこそ初の実写化として記憶されるべきだと思います。
映画としても相当頑張っています。これなら小説版ファンも納得じゃないでしょうか。