2010年4月11日日曜日

ソラニン

4月4日(日)、小牧空港のシネコン21時20分の回を見てきました。
客は1/3程度の入り。この時間帯でこれだけ入っているのは多い方だと思います。終演後だと車がなきゃ帰れないですからねぇ。ここ。


青い空を用いた演出を多用。フィルターワークなのか分かりませんが東京であのような空気感の絵ってなかなか撮れない気がします。
室内シーンでは窓からの太陽光を反射させて当てる事で、人物を撮影するあたりは自然な感じで良かった。脚本も自然なストーリー展開。原作の良さを活かしていて良かったと思います。
音楽面だとヒロインの宮﨑あおいさんがギターを覚えてライブで歌うシーンが見物。途中で主人公との語りが入るのがよけいと言いたくなります。演奏は実質トリの『ソラニン』だけ。もっとライブシーンを聞かせて欲しかった。。。
宮﨑さんの歌、最近だとブルーハーツの楽曲をコマーシャルで歌っています。上手という訳ではないけど何か聞かせるものがあります。今回の映画版の歌をきちんと録音しなおしたものが出て欲しいなと思ったり。

原作は1巻あたりまでは雑誌掲載時に追っていた覚えあり。という事で改めて単行本全2巻を購入。
原作を読むと決して丸ごと映画化した訳ではなく大意を変えない範疇で変更(漫画的な表現の削除、ストーリーの整理程度)が為された事が分かります。ただ整理しすぎて、レコード会社の人物がライブに来てROTTIのメンバーと会話するシーンがない故に主人公との対話が引き金でアイドルバンドから降りて、新人を捜して地方のライブハウス回りをするA&Rに変わった事が分からないのは、何か代替シーンが欲しいところだと思います。
逆にこのカットは明らかに原作の再現だなと分かる物もあります。原作のカットを映画で再現するのかというのは意外。普通映画サイドで自分の表現を自己主張したくなるところじゃないかと思いましたので。
このような原作を活かした映画化はかなり特異な印象を受けます。

三木監督のフィルモブラフィーを見るとこれが長編第一作。もともとミュージックビデオの監督をされていたとの事で音楽に理解が深い方だと思います。ただミュージックビデオと長編映画は根本的に思想が違うのは押井監督「勝つために戦え!監督編」や文科系トークラジオLife外伝の三木監督本人インタビューで触れられているところです。短く良いシーンをつないでいくミュージックビデオの手法を捨てて宮﨑あおいさんの感情表現を追ったという三木監督の発想は成功していると思うのですが、であれば何故『ソラニン』の演奏シーンで回想シーンを重ねたのかが不思議です。多分演奏中に種田くんの事を思い出してというきれいな展開を想定したのだと思いますが、初ライブの芽衣子にそんな余裕が合ったのかと言えばそれはないでしょう。まぁ、結局私は『ソラニン』だけでもライブシーンを流しきって欲しかったという願望があるからこんな事を考えてしまうのかも知れませんが……。

最後に楽曲について。『ソラニン』の原曲はASIAN KUNG-FU GENERATIONが提供されていますが、映画にぴたりとはまった良い楽曲だと思います。映画のライブシーンがあまりにはまりすぎて、ASIAN KUNG-FU GENERATION演奏版だと何か足りない感じがするぐらいです。
この点は監督の意図がぴたりと決まったのだと思います。

三木監督、これが第1作との事ですが要注目の監督が登場されたように思います。たまたま本作があたっただけなのか、それとも押井監督が言う勝ち続ける事が出来る(=映画製作を続けられる)監督なのか、第2作も注目したいと思います。