2018年12月6日木曜日

「リズと青い鳥」

「リズと青い鳥」は「響け!ユーフォニアム」シリーズのスピンオフ作品。「響け!」シリーズの高坂・黄前組が高校2年生の時、一つ上の高校3年生のオーボエの鎧塚みぞれ、フルートの傘木希美が選抜されてソロの掛け合い演奏をする事になった「リズと青い鳥」という本をモチーフにして作曲されたコンクール自由曲を背景にみぞれと希美の関係を描く濃密な90分間。一度も気の抜けないスリリングな心理劇が生まれた。

音楽関係については『「リズと青い鳥」吹奏楽曲の使われ方考察』へ移動しましたのでこちらをご覧下さい。



I. Impression
概要
ストーリーラインはシンプル。劇中の絵本「リズと青い鳥」の物語を挟みつつ、無口なみぞれと後輩や友達に囲まれた希美の思いと言葉が交錯していく。
生物教室に並んだ実験器具の番号、左右に並んだ水槽、クローズアップされる手や指の仕草(手や指の演技は「聲の形」の成果の一つでもある)、語られる台詞と裏腹な想いが丁寧かつ緻密な描写で描き込まれている。

シリーズ・スピンオフというより完全独立した作品
「聲の形」監督・脚本・作監&キャラデザ・音楽を再結集。同作の評価の高さは言うまでもない所でしょう。先鋭的なようでやさしく世界を包む音楽とレンズ効果を使う事で主人公が素直に見られなくなっている世界を丁寧に表現していた。

本作タイトルから敢えて「響け!」を外しているのは「リズと青い鳥」エピソードを切り出してクローズアップして一本の作品に仕立てた為だろう。そのために登場人物を最小限に絞り込みシリーズキャラクターデザインを元に新たにこの作品世界に合わせたキャラクターデザインまで導入している。本編シリーズの映画版であったフォトセッションやコンクール演奏描写が一度も入らない完全に独立した作品として見られる作りとなっている。

2019年4月23日追記:「劇場版響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」パンフレットによると「リズと青い鳥」と「誓いのフィナーレ」企画着手時点では原作「波乱の第2楽章」はプロット段階(刊行は「リズと青い鳥」公開半年前の2017年秋)だったという。このため原作と「リズと青い鳥」は並行して作られていた事になる。「誓いのフィナーレ」は当初2018年公開予定だったが石立監督の手が開かず半年延期の2019年4月公開となった。「リズと青い鳥」が原作通りの時系列ではなく、「誓いのフィナーレ」が概ね原作通りなのは製作時期の違いで差が出たものらしい。

「聲の形」との違い
「聲の形」は膨大な設定を持っていて映画化に際して「引き算」の形でプロットが編まれたのではないかと想像している。全てを映画の尺に持ち込めない。その中で原作の本質を表現している。

「リズと青い鳥」は「響け!ユーフォニアム第2章」前後編の2冊の中で点描された希美とみぞれのエピソードを抽出して1本の映画に仕立てている。こちらは「足し算」の形でプロットが編まれているように思える。
原作では主人公の黄前久美子の1年上の先輩2人が前作から続いてきた関係の物語となっていて久美子が関係する事で何が起きているか読者が知る構図となっていた。原作本編映像化では少しはみ出るほどのボリュームがあるエピソードですが、逆に加えて描くべき余白も多くなっていて徹頭徹尾、希美とみぞれの二人が中心でその他は同じ三年生部長の優子とユーフォニアム奏者で副部長の夏紀、みぞれの後輩オーボエ奏者の梨々花が絡む頻度が多い程度になっていて、これが「聲の形」との作りの大きな差をもたらしている。

本編シリーズとの接点
従来の「響け!」シリーズファン向けには高坂麗奈の音楽に対する真摯な姿勢は黙って見ていられなかった感じがあって良かった。この点では明確に「響け!」シリーズ世界なんですよね。キャラデザが西屋氏になっても確かに彼らの世界が息づいているところが京アニの制作体制の強さなんだと思う(そしてそれでいて単独作品として必要な描写は入れている。もう上手いとしか言いようがない)。

繰り返して変化していく世界
本作脚本は音楽的な構造を取っている。2〜3回同じ場所、または同じ登場人物の組み合わせで変化していくという構図で変奏曲的な手法となっている。図書室でのやり取り、梨々花とみぞれ、希美の関わり、希美らフルートパートの会話劇などいくつも組み合わせがあることが見て取れる。部活の日常劇のようなルックながら挑戦的な表現の仕掛けが施されている。

「ハッピーエンドの予感」
希美とみぞれ。二人はお互いに過剰に見ている事があって「リズと青い鳥」の物語と合奏練習を通じてその事に気付いて行く。実の所お互いに全く違う問題意識があり、そこから同じ結論に達することになる。
その過程で相手の事に気付かず、すれ違い、傷付ける。そしてお互いを改めて相手の才能や長所、強さと弱さを知る。そして持って生まれた才能と努力する才能を持っている人に対して「ずるい」で済ませるのか、それとも認めた上で努力するのかという命題が浮かび上がる。

ハッピーエンドかもしれない可能性は提示されるけどそうなるかはわからない現在進行形の提示。「聲の形」は将也が周囲からがんじがらめにしてきていた籠から出て飛び立とうとした(硝子もまた一歩踏み出した)その瞬間で終えた。
本作は作品の意図からいえば生物教室で終わっていてもおかしくはない。その場合、原作に近い二人の関係に遷移していっただろう。
でもそうせずにハッピーエンドの予感を残したエピローグ(図書室以降)を足している。観客のためなのか、劇中の二人のためなのか。ただ原作だと物語構造上描くことが難しかった事なのであの二人のために付け加えられた予感だったと思いたい。
本作は最後の展開でちょっと仕掛けがあって映画としてはハッピーエンドの予感をさせる終わり方を選択している。筆者の解釈が正しいなら原作に近い道が別れて離れていく事の描写の方が強いだろうと思う。でも二人は相手の事をこの6年間の中でもっとも理解した瞬間、二人の軌道が交錯した瞬間がこの映画には凝縮がされている。映画はそれを強めたかったのだろうし、この点では原作以上に成功しているし映像化作品だから出来る技でもあった。

普遍性のある世界観による優れた物語
普通の対人関係でこんな事は時に起きる。そこに物語がある。その物語を切り出して人に見せるに値する物を作るのは表現力がないと出来ない。山田尚子監督のチームはそれを実践している。

次の作品も楽しみだし期待してます。

追記
リズと青い鳥の世界。彼女達の物語を希美とみぞれは覗き込むように解釈していてそのイメージを我々も覗き込んでいる。
そして希美とみぞれの世界をまた彼女らが童話の世界を覗き込んでいたように我々も覗き込んでいるのだ。それを壁や机の視点と呼んでいるのだろう。

(以下、ネタバレあり)













II. Analysis
1. Story and ... Part I:日曜日
(1)絵本の世界
冒頭、「リズと青い鳥」絵本世界の開幕から始まる。ここではリズが動物たちにパンをあげている所、青い鳥に気付く。その鮮明な青い色の小鳥に心を動かされるが、小鳥はいずこかへと飛び去る。

アライグマが思わせぶりに出てくるがリズのパンはもうなかった。そして青い鳥へとリズの視線を導いて終わる。ちなみに絵本パート後の方でもまた「彼」は出てくるがそこでもパンはもらえておらず、そして青い鳥を見つける事だけ寄与して終わるのだった。不遇な子。

(2)アヴァン・タイトル(プロローグ)
音楽室へ向かう二人、我々が見せられるものは劇中「現実」そのものではない
5月頃の日曜日、霧なのか靄なのか掛かった早朝、部活練習がある日。みぞれは門近くの階段で希美が来るのを待っていた。希美がやって来て二人の関係が見え始める。
なにせ、みぞれは足音で希美が来た事を察知するし、みぞれから見た希美は顔のアップ、小鳥が鳴き世界が寿いでいる。
対する希美から見たみぞれは普通に見えているだけだった。

希美は青い羽根を拾ってその青を空高く掲げて愛でた時、快晴の青空で日もかなり高い位置まで昇っていた。みぞれの見ていた世界の様子は一気に塗り替えられた。

二人は下駄箱で上履きに履き替える。この時、希美は上履きをポンと投げ落とし、みぞれはそっと床に置いた。
階段を一つ飛ばしで上がっていく希美。一段ずつ丁寧に上がっていくみぞれ。

希美が踊り場や門を曲がる時、えいっと片足を大きく回すターンをやっているが、本編では見られなくなる。階段で途中止まって下にいるみぞれを見下ろして微笑むシーンもあるがこういう行動はアヴァンタイトルでのみ見られる。

みぞれはスクールバッグを階段まで左肩、希美と合流してからは右肩に掛けている。希美は左肩と正反対。
音楽室の鍵はみぞれが持っていて、音楽室の鍵を開ける時二人はこの世界の扉を開いた。そしてそこで提示される単語は「disjoint」。

みぞれは希美に対して強烈な憧れの気持ちを抱いている。それは希美のポニーテイルの後ろ姿を眺めるといったフェティッシュな愛まで含まれる。そのような思いが学校の門近くの階段から音楽室までの希美を見つめるみぞれの視界にフィルターを掛けているが、中学時代の回想自体は希美から見たみぞれの希美への愛を表しているように見える(終盤、中学時代にみぞれを吹奏楽部に誘った際の回想は希美のもの。ここではその見え方と同じになっている)。

二人きりの音楽室
希美は音楽室で定位置に座った。みぞれは希美とまだ二人だけだったので希美の席の隣1つ空けて座った(これは定位置ではない)。近付きたいけど近づけないのがみぞれ。
そんなみぞれの気持ちを知らない希美は絵本を見せるためにさっとみぞれに近づく。みぞれが嬉しく思ったらすぐ離れてしまう。
このような希美とみぞれの波長の合わない関係は繰り返し出てくる。

希美は「本番が楽しみ」という。そしてみぞれはそれに対して強く異論を持っている。そしてそういう事をみぞれは希美に対して口にしていない。
希美は音楽室でみぞれと二人だけの時に「リズと青い鳥」が良いと言ったが理由は言わなかった。その時希美は「Solo」と指定された楽譜を見ていた。

第3楽章冒頭部の二人の演奏
希美はみぞれに第3楽章冒頭のソロ掛け合いを吹いてみようと言い出す。オーボエはオーケストラでチューニングの基準になる楽器である。これは音の正確性とチューニングしにくい事が理由と言われている。フルートは組立時にチューニング可能な楽器だが確認せず一番奥まで差し込んでいて、チューニングも何もないという指摘をされている方も見かけた。

演奏シーンでも音程がずれた気持ち悪い演奏となった。希美は分かっているからさらりと「これからかなあ」と言っていておそらく二人がこの曲で合せて演奏したのはこれが最初だろうと分かる(後で滝先生が翌日「リズ」の練習をすると言っている事から裏付けられる)。

二人の冒頭部演奏中の後ろ姿に「リズと青い鳥」のタイトルが出てくる。左側にみぞれ、右側に希美が「リズ」と「青い鳥」の位置に重なる。

絵本「リズと青い鳥」と自分たちを重ねる二人
希美はみぞれに「リズと青い鳥」の絵本を見せてあらすじを教える。みぞれはそれを中学校で「吹部」へ誘ってくれた希美との出会いと思い出していて上の空。
中学校制服の二人の手は一度ここで離れている(希美は後に高校1年生の時に退部、2年生になって戻ってきたらしい事、そして希美はその際にみぞれに伝える事もなく行っている。こういう裏切りは高校に入って初めてだった訳ではない事がこのシーンでは示されている)。

希美は深くは考えていない。自分とみぞれの関係が似ていると思ったからそれを口にしたに過ぎない。
みぞれはずっと希美への憧れ、羨望、裏切りへの悲しみ等の気持ちを抱いていて、すぐ「リズと青い鳥」におけるリズは自分だと信じ込んだ事で 第3楽章のソロパート演奏に影響を与えて行く事になる。

みぞれの回想、想像力は幅広い。希美の事を思い出す時、線のない水彩画のようで何回か出てくる。対する希美は淡い着色された線画(劇中内の「現実」に近い描かれ方)となっている(なのでアバンタイトルでの中学時代に二人が歩いているシーンは希美の回想という読み筋が出来る)。

希美はこの童話の結末が悲しいという。そして「物語はハッピーエンドがいい」という(1回目)。

みぞれは台本だと希美の「リズ」あらすじ説明に対して嫌なストーリーだと受け取った記述されている。希美がいう「似てるね」というのが当たっているゆえの嫌な感じなのだと思う。


(3)優子・夏紀、麗奈・久美子、フルートパート1年生トリオ
……が順次音楽室にやってくる。麗奈は本作では概ね何か怒りを抱えていて、劇中唯一だった希美との会話も打ち解けない応対をしていた。
そしてフルートパート1年生トリオがやってくると、みぞれから希美を奪って行った。

希美がパート連で音楽室を離れると、みぞれも自分が使っている教室(北3階西側渡り廊下側教室=オーボエパート練習で使用している教室)に入り絵本を読み始めた。

(4)絵本パート1(リズの日常)
リズは路面蒸気トラム(!)で市街地にあるアールトのパン屋に出勤して夕方まで働いている。一人暮らしのせいか(理由は不明)、家族に対する憧憬は強い。
リズの家は人里離れた湖畔にあるようでランプと井戸、薪か石炭のストーブを使っている。

夜、2階の寝室へ上がったリズはベッドに入ると上履きを丁寧に揃えた。この時、月明かりがベッド側(東側)から差し込んでいた。

謎の木の実の小枝
早朝、リズの家の2階の窓の桟には赤い木の実の小枝(3個+5個)が出て来た。そしてこの時、窓から部屋の中を青い鳥が覗き込んでいた。

青い髪の少女
夕方、大嵐の中、雨合羽を着て帰ってきたリズ。心配で1階でそのまま過ごしてしまう。翌朝、晴れ渡った外の様子を見ていると湖畔に青い髪の少女が倒れていた。リズが介抱するとその少女は「リズ!」と叫んだのだった。

青い鳥の少女はどこでリズの名前を知ったのかは最後まで描かれない。

教室のみぞれ
教室で絵本を読んでいたみぞれは何故か絵本を天井方向へ掲げて見上げた。まるでそうすれば本の中から何か飛び出してくると思っていたかのようだった。

(5)音楽室
この日の合奏練習はコンクール課題曲だった。滝先生は翌日(月曜日)の練習で「リズと青い鳥」をやると告げている。

優子はコンクールメンバーは近々実施されるオーディションで決まる事を告げた。

解散後、フルートパートは賑やか。それを見つめるみぞれはやはり希美を盗られたという思いがあるように見える。そこへもう一人のオーボエ奏者1年生の剣崎梨々花がダブル・リードの会へみぞれを誘いにやって来てが、みぞれはつれなく瞬殺した(1回目)

みぞれは希美に声を掛けたがフルートパートの子達とファミレスに行くと言ってみぞれを袖にした。みぞれは絵本を希美に返した。「また、明日」リズがアールトに帰る際に言ったような言葉をみぞれは言った。

(6)教室のみぞれ
みぞれは夕暮れの日射しの北3階のオーボエ・パート練教室で楽器を分解・清掃したようでバッグに片付けていた。そして希美からもらった青い羽根を両手で強く握りしめた。絶対に逃したくない。そういう気持ちが表れている。

(7)梨々花(2回目)
北3階オーボエパート練教室を出たみぞれ、廊下で梨々花とファゴット2人組に再びアタックを受けるが(2回目)、希美の事を考えていたのかやはり瞬殺して立ち去っている。
これが日曜日の出来事なのか別の日なのか分からない。

本作は大きく分けて3つに分割できる。(1)日曜日、(2)コンクール練習まで(梨々花のみぞれ攻略パートとみぞれの進路希望にまつわるエピソード)、(3)コンクール練習とその後。
(2)のパートを通じて、みぞれの進路希望を希美が知る事になり、他の人の事なんて言わなかったみぞれが後輩の名前を希美に言うようになり、そして希美が自分が友達を下に見ていたか思い知る予感をする事になる。

2. Story and ... Part II:コンクール練習までの日々
(1)希美と梨々花最初で最後の遭遇
ダブルリードの会への参加を2度も拒まれた梨々花。別の日(月曜日?)に北3階オーボエパート練教室(推定)を出て帰ろうとした時、南側の廊下を歩いている希美を見かけてすかさず呼び止めてみぞれ先輩との事を相談している。

本作は2、3回繰り返される描写が多い。希美と梨々花の遭遇と会話はこの1回だけだったが、「神」(山田監督、脚本の吉田玲子氏?)はルールは守る殊にしているようで希美に「どうした?」を2回言わせるような展開を施している。

希美はみぞれの事をオーボエが上手でちょっと変わった不思議な子だと思っている事が見えてくる。希美は中学校でも高校でもクラスや部活の中心にいる子。そしてみぞれはその外縁部を巡っていてあまり目立たない子。そういう認識だったのだろうと思わせるものがあるやり取りだった。

梨々花は半端な回答に何を思ったか分からないが、借りは作らない主義のようで速攻で「コンビニユ茹で卵、美味しいです」でリセットを掛けてこの会話を終わらせた(以後、梨々花と希美の会話はない)。

(2)図書室のみぞれ、絵本パート2(青い鳥の少女)
みぞれは左肩のスクールバッグ一つだけで図書室にいた(楽器は持っていなかった)。
文庫版の「リズと青い鳥」を見つけ、青い鳥の少女がリズと一緒に暮らすようになった様子を追っていた。

リズと少女は赤い木の実を集める。その時、リズは少女の青い髪の毛に3個の木の実を髪飾りとして付けてあげた(3=素数。希美を象徴する数字)。そして木の実でジャムか何かを作った時、リズは指に作っているジャムを付けて青い少女になめさせて今にも空に飛びかねない勢いで「美味しい!」と喜ぶ姿を見ている。

このシーン、どちらかというとリズ=希美、少女=みぞれの関係性に近い。中学校で吹奏楽部にみぞれを誘い、オーボエという楽器をみぞれが選び取るきっかけを与えたのは希美なのだから。

そして下校のチャイムと共にみぞれは2年生の図書係に図書室を追い出されたのだった。

(3)フルート・パート
フルートパートは8名いる。

3年生2名(希美、井上調<パートリーダー>)
2年生3名(フレンチトーストの蕾実、ピンクのヘアピン(ピッコロ)、緑黒髪)
1年生3名(メガネ、サマーセーター、グミのショートヘア)

希美が音楽面をリード、もう一人の3年生井上調が規律面を担っているように見える。2年生にとっては入部から指導してくれていたのは井上調である。だから彼女らは1年生に比べ距離がある。1年生は音楽面で希美に心酔している。
なおファッション面では2年生の蕾実がリードしている。

フルートパートのさえずりは「朝食」の話題で2年の蕾実がフレンチトーストで話題をかっさらい、それを「パクった」1年生メガネの子に生物研究会の同級生の彼氏が出来て、水族館デートに喜び、そしてフグの前に連れて行かれてフグをかわいいと思わないメガネの子は彼氏に自分がどう思われてるのかと泣き出すというオチが付いた。

コンクールメンバー:6名?(3年2名、2年3名、1年1名(サマーセーター))または8名全員

(4)みぞれを変えた梨々花
OST所収曲「doublelead,girls,i〜vi」シリーズにみる剣崎梨々花、みぞれへの想いと攻略記録(ローマ数字はOST「doublelead,girls」の番号)。

本来はdouble reed(葦の事。リードの材料)が正しい。梨々花たちをかわいい犬に見立てて lead としたのではないか。梨々花が「ダブルー・リード」とハイブロウなジョークを入れているが、いわずとしれたロックミュージシャンの Lou Reed に引っかけたものになっている。

i.ダブルリードの会(剣崎梨々花とファゴット1年生2人の計3名のお茶会)へのお誘い
ii.廊下でファゴット1年生2人と3人でみぞれにダブルリードの会へ誘うが瞬殺
・廊下で希美にみぞれのことを相談する梨々花。お礼にゆで卵を希美にプレゼント(原作では久美子が相談を聞いていた)。
iii.フルートのパート練習合間の雑談での「みぞ先輩」「つぼ先輩」という呼びかけを聞いて「みぞ先輩」でみぞれへアプローチを決めた梨々花(その中、みぞれのオーボエ基礎練習の音が聞こえている)。
iv.「みぞ先輩」を認めてもらえた梨々花。みぞれの青い羽根を見てうらやましがる。ダブルリードの会へのお誘いはみぞれ自身が嫌われているとの思い込みから断られる
v.リード作りを教えて欲しいという梨々花。そしてオーディション結果の報告
vi.梨々花、プールに誘ってもらえたお礼とその時の写真を送る
・梨々花、みぞれとオーボエ二重奏練習
・梨々花、みぞれと1年生ファゴット奏者二人を交えてダブルリード四人で練習
(この時希美は夏紀と教室で話をしていてみぞれの変化への戸惑いを話している)

※iiiのみ、みぞれへのアタック以外でこのシリーズの旋律が使われている。

ダブルリードの会、梨々花とファゴット1年生たち
梨々花が3年生のみぞれと1年生3人しかいないダブルリードをまとめようと高い演奏技術を持つ3年生のみぞれにアタックした。

ヤマハのオーボエに関する解説ページを読むとリードの寿命が短く手間が掛かる(だからよくみぞれはリードを削っているが、オーボエ奏者であれば普通だという)。
原作ではみぞれが3年生になった時点でファゴット奏者は不在となっていて「経験者募集」というパートメンバー分け案内がされていた。なので梨々花を含めて未経験者ではなかったようだし、それ故にみぞれがどうやらあまり面倒を見てない事が推測できるつれない態度から作中の関係描写は始まっている。それを梨々花は少し変えることに成功した。

みぞれウォッチャー梨々花
みぞれがリード削りや基礎練習で使っている教室はフルートパート練習の教室に合わせて変わっているように見える(3カ所ぐらいある?)。そんな中、梨々花はオーボエの音や多分直感でどこにいるか探り当てて押しかけていたらしい。
新山先生が生物室へ押しかけての音大受験提案も梨々花が教えなかったらなかった展開だった。

諦めない梨々花
梨々花の活躍がなかったら、みぞれが積極的になる可能性は下がっただろうし、希美がみぞれの変化に気付く事もなかったのではないか(プールに行こうと誘って探りを入れたらみぞれが梨々花を誘いたいと言い出して一瞬驚愕の表情を出している)。

梨々花自身がみぞれのファンである事は明らか。1カ所だけではないみぞれの練習場所も知っていて「みぞ先輩」との関係を作っている。

(6) みぞれ、希美、登校
朝、下駄箱は生徒で溢れている。希美とみぞれは階段で4階へ上がった。

(7) みぞれ、希美、低音パート、大好きハグ
そこでみぞれはその日の朝か別の日の光景を思い出している。低音パートが4階パート練の教室(3年教室を使用)で盛り上がっているのを希美と一緒に目撃。久美子や夏紀、チューバの3年生カップルや緑輝たちがいる中、1年生二人が抱き合って相手の好きな所を告白していた。

音楽室近くで希美はそれが二人の母校でもある南中で流行った「大好きのハグだね」という。みぞれはそれを知っていたが「した事がないから」と言うと希美は腕を広げて「大好きのハグ」をしようと言う。みぞれはこんな機会があって良いのかというほど喜びつつ少し躊躇した。二人の生きているテンポは異なる。希美はやる気がないんだと勘違いしてみぞれの頭をなでて廊下を歩き去った(「大好きのハグ」は後半で二人の関係を表す重要な役割を果たす)。

ここでみぞれは我にかえっていて3年1組の前に立っている。

(8)みぞれと夏紀、進路希望調査、数学、体育
みぞれは朝慌ただしい空気の3年1組の前の廊下で希美(図書館貸出カードでは3年3組。設定資料集では4組)と別れた。何か名残惜しいのは思い出した「大好きハグ」のためなのか。手を振った右手が挙がったままだった。後からやって来た夏紀はそういうみぞれに慣れているのか教室へと導こうとした(この時のみぞれ、希美のスクールバッグは二人とも左肩。優子、夏紀は右肩にあった)。

そこへ担任がやって来て「鎧塚!」とみぞれを呼び止めた。みぞれは進路希望調査を白紙で出していて担任は用紙をみぞれに返すと再提出求めた。その二人のやり取りを夏紀は見ていた。

数学の授業。担任の先生がお互いに共通の元を持たない「互いに素」について説明をしている。様子のおかしいみぞれ。そういう様子に気付いている夏紀。

体育館での授業。夏紀はバスケットボールでゴールを狙い失敗して時間切れになった。選手交代になり、みぞれのそばにやって来た夏紀はみぞれの様子がおかしい事を見て取ってみぞれの代わりに再びバスケットコートに戻った。

夏紀はここでみぞれが進路を決めかねている事を知る。多分それがみぞれの不調の理由ぐらいに思った可能性はある。ただ希美との関係の危うさも薄々は気付いていたようにも見える。いずれにせよほっとけないと思ったから体育の授業でみぞれの代わりに二試合連続出場したのだろう。誰が日常のみぞれをケアしているのか分かる描写でもあった。

(9)音楽室の希美、生物室のみぞれ、反射、届かないガンバロウ!
廊下を歩くみぞれ。生物室に入ったみぞれは進路希望調査の用紙を置いて3匹のフグが泳ぐ水槽を堪能していた。みぞれが目をつぶっていると希美の駆けて行く後姿を思い浮かべている。みぞれは希美のポニテが揺れているのを見るのが好きな事が分かる。そしてフグは希美の後頭部、ポニテ姿に似ているから好きみたいなのだ。

そんな希美のポニテへの飽くなき追求は向かいの北側校舎にある音楽室からの光の反射で途切れる。希美のフルートに太陽が当たってみぞれの顔に当たっていた。

希美も気がついてみぞれに手を振る。みぞれはこのシーンで初めて笑顔を見せる。
そして希美から少し目を離した隙に、希美は音楽室にいるフルートパートの子に呼ばれてみぞれの視野から消えた。波長の違う二人。一瞬一致しても大抵はみぞれが取り残される。やはりみぞれの願うような波長に希美はなってくれない。

このシーン、山田監督屈指の「変態」シーンとして演出陣の間で大変評価が高いとの事。

音楽室で希美は1年生の二人が第3楽章フルート・ソロは希美しかいないと言ってくれているのが聞えて喜び、そしてみぞれに「ガンバロウ!」というポーズを送った。
でも、みぞれには希美の「ガンバロウ!」は伝わらない。
みぞれのライバルは梨々花だけだった。そしてみぞれの実力を考えればオーボエ・ソロは確実にみぞれがやる事になるのは明らかだったのだから当然か。

みぞれがオーボエのリードを口にした時、絵本の世界が再び始まった。

(10)絵本パート3(青い鳥の少女への疑念)
青い髪の少女は西の窓から三日月がある夜空を見上げて「お月様が生まれた」と言った。そして二人で仲良く同じベッドで寝た。1〜2時間ほど経ち月が地平線の方へ近付いた時、青い髪の少女は窓を開け放ち飛び去った。
空が白み始めた頃にリズは目覚めて青い髪の少女がいない事に気付いた。明け方、青い髪の少女が戻ってきてベッドに潜り込んできた。気付かないふりをして寝ているリズ。青い髪の少女が安心して寝た時、リズはこの子が何者であるか薄々気付き始めた。

青い髪の少女は食事の時、リズに「冬になったらどこに行くの?」と尋ねた。リズは「どこにも行かない」と答えた。

夜、青い髪の少女は青い鳥に戻って夜空を飛んでいった。リズはその事を確認して床に落ちている青い羽根を見つけて手にした。

朝、いつものように動物たちにパンを配っていたリズと青い髪の少女。空に小鳥が舞い、どこかへ飛び去った時、青い髪の少女は不安げに空を見上げ、リズはその事を見逃さなかった。

2階の机の上に置かれた鳥かごには青い羽根が閉じ込められていた。

ここではリズの青い髪の少女が実は青い鳥ではないかという疑念を深めていく。鳥かごはみぞれの中にある青い鳥=希美を逃したくないという思い入れ故に現れているものか。

この部分は約3分間で描かれている。この時、劇伴音楽としてフルバージョン第3楽章抜粋(冒頭から2分50秒。オーボエ・ソロに入るところでカット)を演奏されている。なおこのパートより前の劇伴音楽の演奏は劇中演奏とは異なる編成になっていたのですが(吹奏楽版にはないピアノが入っている曲もある)、この部分はOSTフルバージョン第3楽章からの冒頭部約2分50秒の抜粋のように聞こえる。

(11)新山先生、みぞれの対話1
新山先生が学校にやって来てみぞれを探していた。梨々花が新山先生にいそうな場所(生物室)を教えたために、みぞれのパーソナルスペースで新山先生の不意打ちを受ける事になった。

新山先生はリクルーターとしてみぞれに進路が決まってないなら音大受験しないかと勧めた。
この会話の途中で新山先生はみぞれが「リズと青い鳥」の第3楽章ソロ掛け合いについてどう演奏すればいいのか悩んでいる事を知った。

新山先生は滝先生の音楽大学の後輩で原作だとフルート奏者だとされている。昨年から宇治北高校吹奏楽部の指導に来るようになっていて、そこでみぞれの才能に注目していたらしい。

(12)希美が見せなかった内心の衝撃
希美はフルートパート2年のピッコロ持ち替えの子(ピンクヘアクリップ)と練習をしていた所、みぞれが生物室でどうも誰かに会っていてお辞儀しているのが見えた。
希美は渡り廊下でスクールバッグ片手に渡ってきたみぞれと会った。みぞれは何故か音楽大学のパンフレットを持っていたので誰から貰ったのか問いただすと新山先生の名前が出てきた。
希美は思わず自分もこの音大を受けようかなと言ってしまう。その言葉を真に受けたみぞれは希美と一緒ならと「じゃあ、私も受ける」と言い出し、その意外な反応に希美が驚く。でも希美はこの場で「音大進学」を引っ込める事なく流されて行った事で後々困った事になっていく。

希美はみぞれと音楽の才能は同等だと思っていた。そういう認識の中で他者の評価はみぞれに軍配を上げた。後に希美はこういっていれば才能があるように見えるからという告白をしているが、実際そういう心境で咄嗟に「同じ音楽大学を受けようかな」(みぞれがもう受けるつもりであると思い込んでいた)と言ったのに、何故かみぞれの決断を後押しする結果となった。
このために後に優子に厳しく批判されたが、この点において希美は無罪。もともとみぞれに対する虚勢として「私、受けようかな」と言った事に対してみぞれが「じゃあ、私も」と言い出した事で起きた事だったのだから。

(13)音楽室グランドピアノでの出来事
3年生4人、優子、夏紀、希美、みぞれが音楽教室のグランドピアノの周りで部活の事など話している。夏紀が優子に同じ志願校である事を茶化している。そしてみぞれが何気なくピアノの練習曲をさらりと弾く(原作では自宅にグランドピアノがある)。

希美は二人の会話とみぞれのピアノが引き金となって、みぞれの音大受験をバラした。
対するみぞれは「希美が受けるから」というとんでもない事を言い出した事で希美は引っ込みがつかなくなった。優子はこの時、希美がみぞれを誘ったと勘違いしている。

縣祭(あがたまつり。原作では6月初め)の事が夏紀たちから出た所で、希美は三人を誘った上でみぞれに「誰か一緒に行きたい友達がいる?」という探りのPINGを打ち込み、みぞれは希美の予想通り「いない」という答えを得て安堵している。みぞれは変わっていないんだという安心を得ようとしたのだろう。

優子はみぞれが希美と一緒ならいいという依存関係にすら見える感情を見せた事に驚き凝視した。多分この時の会話が後にリード作りをしているみぞれの所に話しに行き、麗奈が直言する所に立ち会ってしまう流れのきっかけとなっている。
夏紀はみぞれの音大受験はありえると思っていたが、希美については話半分程度にしか聞いてなかったように見える。これは後半の夏紀と希美との話の中でもう少し明らかになっていく。

(14)雨の日のパート練習、みぞ先輩
「のぞ先輩」「つぼ先輩」という声が飛び交うフルートパート練。その背後では近くで練習しているらしいみぞれのオーボエのパート練習の音が響いている。

フルートパートの「先輩」の呼び方でひらめいた梨々花はすぐみぞれの教室へ押しかけて「みぞせんぱーい」と呼ぶ許可を貰う事に成功して一歩親しい関係へと進んだ。

(15)図書室
図書室で本の返却が1ヶ月も遅れたために2年図書係はみぞれに対して怒るが、例によってみぞれのテンポが違うために会話が成り立たない。そこに希美がやって来て誠意のない軽い謝罪表明を行って有耶無耶にしてみぞれを図書室から連れ出した。
廊下を歩きながら希美は「あの本なら私が借りた奴を貸してあげたのに」と言うと、みぞれはすぐ「又貸しはダメだから」と諫め、冗談半分の希美は聞き流し法で受けた。みぞれが希美に対して何か止めた初の例でもある。

(16)連休のプール、一瞬の動揺
音楽教室の床に布を置いて合奏練習の準備をしている際に低音パートの緑と葉月がハモって緑がすかさずある事を言う光景をみぞれはなんとなく見て記憶している。ハグ同様実は羨ましかったらしい。

希美は積極的にみぞれに話しかけるようになった。ここでは椅子を運んできて置くと「水浴びしたいよね」と言い出してみぞれをプールに誘った。

みぞれはこの時、誘いたい子がいると言い出して希美に衝撃を与えた。この結果、梨々花とファゴット1年2名が希美企画の先輩だらけのプール大会へと招待される事につながった。

ここまでの展開は梨々花のみぞれ攻略を軸にした1回目の展開部だったように思える。連休=海の日か?そして吹奏楽コンクール選抜オケでの合奏練習はおそらく少し時を戻して6月下旬あたりから見せているのではないか。

3. Story and ... Part III:合奏練習
(1) 音楽への本気を見たい
高坂麗奈はやはり高坂麗奈だった。音楽に対して彼女は常に本気。背後のトランペットの席から鋭い目で状況を見つめていた。

埋まっていたみぞれの爆弾
部長の優子に怒られながらも麗奈がみぞれに対して直言した事で思わぬものを引き出す結果になった。みぞれは希美と演奏が合わないのではない、自分が悪いのだと言った。
麗奈が立ち去った後、みぞれは優子に青い鳥=希美を逃したくないからと言った。

みぞれは「コンクール本番なんて一生来なくて良い」と思っているし「リズと青い鳥」吹奏楽曲も作曲家も興味がなく「知らない」と希美に言っている。そんなみぞれは希美に童話の関係が私達に似ていると言った事から童話に対してだけは強く関心を抱いて読み始めた。
みぞれは自身がリズとして青い鳥を逃すべきではないという思いからか、希美の演奏に反応する事がない情感のこもらない演奏に終始した。希美とは関係なく演奏を抑えていた。それ故に麗奈への回答「希美のせいじゃない」はみぞれの思いとして正しい。

二人を揺さぶろうとした麗奈による久美子とのソロパート演奏
麗奈は親友でユーフォニアム奏者の黄前さんと一緒に二人に問題を気付いて欲しくてなのか直接行動にも出る。
二人は楽器室で話している優子、夏紀、希美の3人から見える水道洗い場でマウスピースを洗い(スカーフと楽器で識別可能)、1階に降りて外へ出て校舎裏で第3楽章オーボエ・フルートソロパートをトランペットとユーフォニアムで演奏した。
みぞれは二人が演奏を始めた時、音楽教室のある校舎の廊下(音楽教室の下の3階?)にいて窓を開けて聞いて何か確認するとすぐ閉めた。

夏紀に言わせれば「強気なリズ」。熱い。
みぞれは麗奈たちのアピールに全く動じなかった。第3楽章でのみぞれの演奏は音楽面に起因した悩みではない。解釈の問題であり、自身と希美の関係性に原因がある。だから楽しげな演奏に対して動じるようなことはなかった。
希美は楽しげな麗奈と久美子を見て音大受験をうっかり口にしてしまった事で起きた一連の騒動についてようやく無理をしている事を悟る。

(2) 希美とみぞれの交互進行(1)
二人の交互進行に見えるシーンは二回訪れる。1回目は「リズと青い鳥」の解釈について新山先生とみぞれの対話、そして部長、副部長と希美の対話でぞれぞれがお互いが何なのか今まで思っていた事と逆だったんだと確信する。

第三楽章のフルートとオーボエのソロの掛け合いはリズと青い鳥を表したものという話は何回か出てくるがどちらがリズ、青い鳥なのかという事は新山先生からも言われてはいない。みぞれと希美がどう思っているかという所に尽きる。そして二人の抱えている悩みは全く異質の物だった。

希美とみぞれの二人がそれぞれリズと青い鳥について誰が誰なのか語り出した時(OST曲 "stereo,bright,curve")ドアのラッチ音にも聞こえる音が入っている。これは牛尾憲輔氏インタビューによるとオープンリールデッキが回り始めた音だという。なお同じような音(おそらくはオープンリールデッキを停止させた音)が生物室を出た希美が廊下を立ち去っていくカットが終わる瞬間に入っていて(OST曲 "kadenz")、その間独特なホワイトノイズ(モーターの回転音など?)が曲にも載せられてきている区間がある。

(3) みぞれの変化を知り恐れを抱く希美
希美は音楽大学について本気だった事はないと思う。そういう心情ではないかと想像できる事は夏紀と二人で話していた時に匂わせていて、優子と夏紀と三人で楽器室で話をした時にその本音がやっと明らかにされた。

希美にすれば音大受験を勧められたのがみぞれだけというのが悔しく、つい音大受けると言ってみたらみぞれが食いついてきて引っ込みがつかなくなった。新山先生が何故自分には勧めようとせず、みぞれにだけ勧めたのか。理屈では理解してないが感覚的には何かあると思っていた事やみぞれが後輩と練習したりと変わり始めている事への恐れがあった。

みぞれと差があるとの認識はこの時点では新山先生がみぞれにだけ音大を勧めた事実しかない(合奏練習時にみぞれが新山先生から個人指導を受けているのはあくまで部活の指導だと思うので、それを以てみぞれとの差を感じたとは思えない)。
麗奈は「希美先輩が合わせてくれると思ってない」から、みぞれがブレーキを掛けて合わせに行っていたと見ていた。彼女は希美がみぞれを立てる演奏をするとは思っていなかった。この事から麗奈が二人をどう評価していたか分かる(希美との唯一の会話も冷淡だった事も思い出すべき)。

希美は学校裏手の高台で一人夕陽の中佇む。自分が青い鳥ではなかった事に気付く。大空を飛んでいく多くの青い鳥。リズは「神様、何故かごの開け方を私に教えたのですか」と言う。希美にとってはもっと具体的なみぞれとの音楽の才能の差、目指すものの違いを認識させられる事への恐れの予感だった。

(4) みぞれに芽生え始めた他者との関係
みぞれは徐々に希美だけではない描写は出てきていた。プールに行こうと希美がみぞれを誘った時、みぞれがオーボエ奏者1年生の剣崎さんを呼んだ事で希美が少し驚いた。そういうほんの少しながらも雪解けがあった上で新山先生との「リズと青い鳥」の中の二人がどう思い合っているのかという話がぶつけられ、みぞれは自分がリズではないのに鳥籠に閉じこもっていた事に気付いた。

みぞれを解き放ったのはみぞれの「リズ」解釈を反転させた新山先生、後輩達とのつながりを作った梨々花と部活へ復帰して高校最初で最後のコンクールメンバーとなることでみぞれとソロの掛け合い演奏を受けて立つ事になった希美の三人だった。希美がコンクールメンバーになった事、そしてみぞれとソロ掛け合い演奏をやる事がみぞれの鳥籠と鍵そのものでもあった。
みぞれは絵本を知る前からリズと青い鳥的な関係性を希美に見出していた。そこに絵本を知る事になり、希美とのこれまでの関係を重ねて、リズに自分を押し込もうとしていた。多分ここで「リズと青い鳥」はみぞれと希美との間の関係とは別なのだと悟ったのだと思う。その上で思い存分に情感を込めてソロ演奏をする事を決意したのではないか。

(5) 第3楽章通し
本作のクライマックスの一つはみぞれが第三楽章を通したいと我を見せ、それを滝先生が何も問わずに受け入れたところから始まる(OSTの場合「コンクール用編曲Ver.」3分11秒付近〜6分17秒付近が相当か。少なくともフルートは演技込みの演奏のものに変えていると思うので映画本編で使われた音源はOST所収のものとは異なる)。

みぞれが自らのしばりを解き放った演奏は後半希美に追従することが求めるもの、追従できないなら置いていくというような性格のものだった、希美はみぞれの実力を見誤っていった故に衝撃を受け演奏を維持できず崩れた。それでも演奏は止まらず最後まで演奏され、みぞれの演奏が橋本先生、新山先生や他の部員達の多くに深い感動を与えた。新山先生だけは期待していてようやく達成された喜びの方が大きそうではあった。

Spoon 2018年6月号山田尚子監督インタビューでは第3楽章のオーボエ、フルートのソロパートについてどちらがリズ、青い鳥なのか定めないようにと指定して作曲依頼されたとの事が言及されていた。実際台詞の上でもどちらがリズ、青い鳥と思っているかという話をするのは、みぞれと希美しかいない。

「リズと青い鳥」第三楽章フルバージョンは6分を超えるものでオーボエとフルートのソロ奏者にはそれぞれ見せ場が設けられているが、ここで演奏されたコンクール短縮版(約3分)はオーボエが高々に歌い、フルートが支える構図になっていた。
あの世界では本当は第3楽章フルVer.が演奏されている設定なのかもしれない。もしそうだったら希美の演奏崩壊はもっと厳しかった様子が描かれた可能性はある。

希美はみぞれの力を見誤っていた。それは二人のソロ演奏の練習が始まってから息は合わないものの(みぞれが規則正しい演奏に終始していて情感を込めて演奏する事をしなかった事で麗奈には本気の演奏に聞えなかった)力の差を感じる事はなかったから当然の事ではあった。
希美の場合、高校1年生の時の集団退部騒動があって高校2年生の時は復帰が遅かったので高校3年生でようやくコンクールメンバーとしてフルートのソロ奏者に選ばれた事はうれしかったはず。
みぞれにとって希美とのソロ演奏は「ずっと本番なんて来なくて良い」=「希美とずっと練習をしていたい」というものだったと思う。その中でリズの立場に囚われていると青い鳥を逃がせない、その思いが情感を込めて演奏する事を拒絶する原因になっていた。そういう枷を取り去り、青い鳥を後押しするかのように全力で「歌った」のが第3楽章通しだった。

(6) 生物教室での二人、希美の最後の抵抗
希美にとっては「最後の抵抗」として、みぞれなら気付くであろう生物教室へ逃げた。みぞれに追いかけて欲しい、そこで自分の望む言葉を聞きたいという思いがあったのだろう。
「私は普通の人だから」という。山田監督インタビュー記事でこの部分の台本の写真が載っていて少し読める。希美はこの台詞を口にしながら否定して欲しいと思っているのだと指定されている(本作は言葉と裏腹な表情や声の演技が必要になる事が多く、そのための説明書きは細かく台本に書かれている)。

みぞれは希美が音楽面で特別とは最後まで言わなかった。代わりにみぞれにとっての特別であると言い、さらに大好きのハグをしながら希美の事が全て好きと告白した。みぞれは嘘は言わない。口数は少ないが言うことは本音ではある。

中学校で「みぞれを吹奏楽部へ誘った事なんて忘れたよ」という希美。でもそれは本心を明かしたくないから言った事に過ぎなかった(ここでの希美の回想では「吹奏楽部」と言っている。みぞれの回想では希美が「一緒に吹部に」と言っていて、実は記憶違いみたいなものが織り込まれている)。

希美は「物語はハッピーエンドがいい」と二度言う。この作品は決して不幸な終わりではないとは思う。でも自分の限界を知るのは二面性のある事でもある。それでも好きでいるか、離れるか問われる事でもある。

みぞれが希美の好きな所をたくさん言い募る。希美の何もかも好きだと言っているに等しい。でも希美が好きなのであって、みぞれの思う希美の音楽への実力評価とはなっていない。友達、愛する相手をそういう目では見ていないから評価も存在しない。「希美と一緒にいたかった」だけというみぞれの吐露が全てなのだ。

対する希美にとってはみぞれはこの物語が始まる時には自分の遠くを回っている衛星みたいなものであり、この作品の中での出来事を通じて否応なく意識の窓がこじ開けられた。だからこの時点では彼女はみぞれに「みぞれは努力家」「みぞれのオーボエが好き」としか言えなかった。抵抗もあったかも知れない。この時点では彼女の才能を全て認める事は自尊心ゆえに出来ていない。

山田監督インタビューによると希美の「みぞれのオーボエが好き」はみぞれの望んだ回答ではないだろうとの事。二人とも相手の望むもの(希美にとってはみぞれと対等だという音楽の才能評価、みぞれにとっては希美からの愛情)を与えてはいない。

希美は最後に大笑いした。みぞれに対して音楽の才能面では負けた事を認めた瞬間だった。そして「ありがとう、ありがとう、みぞれ……ありがとう」と3回もみぞれに告げた。この作品は同じような状況が2回繰り返される事が多い。その中で希美はしばしばみぞれとの対話が途中で終わっていた。

希美はみぞれの音楽の才能に負けた。みぞれは希美から聞きたかった言葉を聞く事が出来ておらず希美に負けていた。
パンフレットに載っている山田尚子監督コメントによれば、希美は自分に言って聞かせている部分との事。Spoon 2018年6月号インタビュー記事では決して決着している訳ではないとも触れられていた。
筆者から見るとそれだけでなくお互いに思いのズレが多い相手であるみぞれに対して確実に届かせたようにも思えた。

二人とも望む言葉を開いてから引き出す事は出来ず実態としては相討ちに等しい。
廊下を歩き去る希美のシーンが終わる瞬間にオープンリールデッキの音(停止させる操作音?)が挿入されて、二羽の白い小鳥が舞うシーンにつなげられた。
二人とも青い鳥でもありそうでもない。そういう事を示していると思う。

4. 二人以外のみんなが得たもの
(1) 新山先生
音楽家としての可能性があると思った子がその道へ一歩足を踏み入れた瞬間を目撃している。みぞれの才能とは当初努力する才能、基礎練習を惜しまない才能(劇中でも一度だけみぞれの基礎練習の音が聞こえている)だけ見出していた面はあったと思う。それが見事に羽ばたいた。音大の道へ誘った甲斐はあったはず。

(2) 剣崎梨々花
梨々花はみぞれとファゴットの二人を交えて合奏練習までできる関係になった。みぞれと梨々花が練習曲を吹いた時の幸せそうな梨々花はとても良い師弟関係を見せていた。

(3) 吉川優子、高坂麗奈、黄前久美子、川島緑輝
高坂麗奈、黄前久美子、川島緑輝と吉川優子部長は第3楽章通し演奏での全力を尽くしたみぞれの演奏に感激して終わって感想を言いにみぞれの周りに集まっている。高坂麗奈にすれば望んでいたみぞれの音楽の本気を見られた事はとても大事な事だったはず。

(4) 中川夏紀
その場には副部長、3年生ユーフォニアム奏者の中川夏紀はいなかった。夏紀はコンクールメンバーに入っていて1カットだけ背景にあの茶髪ポニーテールが写り込んでいる(ユーフォニアム3rd。久美子が1stで彼女が写り込む時の隣の2ndは原作通り1年生が入っている)。あの輪の中に行かなかったのは夏紀らしい。

希美の率直なエゴとも取れる本音に対して優子が怒った時、止めたのは夏紀だった。一歩引いたところで優子やみぞれ、希美の関係を衝突させずフォローしていた。そういう潤滑油、調停者としての役割が強く音楽性の話に行くと引いてしまうのかなと思いながら見ていた。

生物教室へ行った希美、その後を追ったみぞれの動きを見ているとすれば夏紀しかいないだろう(この点は考えすぎかもしれない)。

5. Epilogue and more...
(1) 希美とみぞれの交互進行(2)
2回目の交互進行はエピローグ間際、怒れる2年生図書係シーンの後にやってくる。みぞれは廊下を進んで音楽教室に入ってオーボエの練習を始め、希美は図書室の奥の閲覧席に座り問題集を開いて普通大学受験の勉強をする(ここでまるで左右に別れたかのように見せる交互描写が施されている)。みぞれは音大受験なのでオーボエ練習は当然ながら受験対策そのもの。窓の外を東の方へ飛び去る小鳥が同じ時である事を示している。こうして二人は自らの進路を選び取り道が分かれて行く事が示された。

みぞれの楽譜右側ページには水色の蛍光ペンで羽ばたく小鳥が描かれ「はばたけ!!」と書かれていた。みぞれが書いたものではないはず。それは彼女がとても大事だと思っている友達からの言葉、彼女の音楽の才能を認めた証の一つなのだと思う。


(2) 図書室・音楽室と二人の下校の時間軸の関係
図書室のやりとりは劇中計3回出てくる。エピローグ冒頭3回目の図書室は何故ここでという不可解さがあったのですが、これは希美がみぞれに一般大を受ける事を問題集で示している事(それまでに告げているかは不明)が目的と考えられる。

みぞれはまた「リズと青い鳥」文庫版を借りようとして図書係から事前の小言を受けているようですが(これはフォロワーの方から教えて頂きました)、冷静に考えたら前回返却時に希美が無理矢理話を打ち切って有耶無耶にした事でみぞれがブラックリスト入りしているのだなと分かる(それでもあの図書係の子に希美は何故か無敵な訳ですが)。

筆者はこのシーンが部活引退後の二人を描いていると考えている。二人がそれぞれ音楽教室と図書室に別れて受験対策をやるのはそうでないと理解しにくい。なお希美はフルートバッグを持っているかどうかは見せないようにされているが、閲覧席ではスクールバッグしか写っていない。この見立てが正しければ映画内時間軸で最も先を描いた部分(近畿大会終了後、8月下旬〜9月初め)となる。
この説の問題点は音楽室に毛布が敷かれていて吹部合奏練習配置になっている事。音楽授業が翌日にある場合、あの状態では放置できないはずなので遅くても始業式前後想定なのだろう。

なおみぞれが音楽室に入って奥へ歩いて行くシーンでAVANの希美と一緒だった時のカットが意図的に混入されている(台本のS68C12。床に毛布がなく台本でもそれと分かる記述になっている)。

2018年12月6日追記:Blu-ray初回限定台本同梱版に添付された台本によると図書室のシーンは「数日後」と記載があるのでコンクール終了後ではない。
なのであのシーンの意図は希美の進学進路変更を問題集の形でみぞれに見せた事にある。とすればみぞれの楽譜の希美の「はばたけ!」は別れて行く二人を暗示している事になりそう(と考えると校門から出る二人の最初の別時間軸での会話とその後、下校中の二人がかわす会話が一体何時あった出来事なのかという話に問題が回帰するのです)。
ただ本作の時間経過が原作や本編進行とどう対応するのか分からなくなったというのが個人的な感想です。


(3) 下校する二人
夕方の下校時刻。第3楽章通し、生物教室の対話直後か数日内であろうと推測(なので音楽室、図書室で二人がそれぞれ回想した事かもしれない)。

みぞれは希美の誘いで甘いものを帰りに食べに行く約束している。そして校門に先に来て待っていたのはみぞれではなく希美だった。
希美とみぞれは一緒に校門を出ていく。このシークエンス冒頭の「ありがとう?」「なんで疑問形」まではどこで話された会話か分からない形で進んでいく。

階段を降りた所で希美は「みぞれのオーボエ・ソロを支えてみせるから今はちょっと待って」とみぞれに決意を伝える。生物室では最後の抵抗としての言葉だったが、この時は自分の到達できる力では彼女を支える役割を担う事しか出来ない(希美が出来ないなら他のメンバーにも無理。みぞれが実力をセーブするしかなくなる)と自覚して伝えている。

みぞれは「私もオーボエを続けるから」というズレたように聞こえる答えを返した。みぞれは中学1年生の時に希美に吹部へ誘われたからオーボエを始めた。希美がオーボエを与えてくれた事は希美との友情、愛情の証明だった。それ故に「オーボエを続ける」は希美がみぞれに対して友人としての好きを返してくれなくても続ける、その事で希美との記憶を残すという意思表示だったのではないか。

何を食べに行くか言い合った後にみぞれがあんなに憎んでいた本番の演奏について、希美もみぞれも「本番、頑張ろう」とハモって言った。みぞれの一番変わったことの一つがこれだろう。みぞれは「本番なんて一生来なくていい」と内心で思っていたし、希美は希美で「本番、楽しみ」と言っていたけど努力しないと合奏が壊れる事を知った事で変化している。
そして、みぞれはすかさず勇気を持ってある言葉を言う。「あれ、みぞれが希美に言うんだよね?」と思いつつドキドキしながら見ていたので本当に言ってくれて良かった。

最後に希美が振り向いてみぞれが大変驚いているカットがありますが、あれは希美のポニーテールを(多分うっとり)眺めていたみぞれに対して希美がいきなり振り向いて驚ろかせるような表情をしたのではないか。希美はこの直前鼻で笑っているので如何にもやりそうな事だなあと思った次第。それに希美はたまにいたずらっ子な笑みする子でもあるのですよね。

パンフレットの山田尚子監督コメントによれば足音は基本的にリズムが異なるようにしているが、ここだけ一致してあのみぞれの一言へつながったとの事。アフレコ用音源にもう足音は入っていたそうでそれに合わせて種崎さん、東山さんが演技をしている。

(4) 2つのエピローグの意味
・冒頭の日曜日朝、希美は左肩、みぞれは右肩にスクールバッグを掛けていた。

・希美とみぞれが大好きハグを目撃した時、スクールバッグは二人とも左肩にあった。

・エピローグ、図書室の希美・音楽室のみぞれ。二人は足音のテンポが同じで交互に出てくる。この時二人は右肩にスクールバッグを掛けている。

・下校時、希美とみぞれは左肩にスクールバッグを掛けている。

・最後のエピローグの2つのシーンの違いは、図書室の希美・音楽室のみぞれは希美視点でのエピローグであり、下校時の二人はみぞれ視点のエピローグではないだろうか。スクールバッグを掛ける肩の違いはどちらが相手に寄り添ったのか象徴しているのだと思う。

(5) エトセトラ
山田監督は「恋」を描いているとインタビューで語られている。友情の中には恋みたいなもの、愛みたいなものがあるんじゃないだろうか(とはいえ日曜日早朝の音楽教室でのみぞれは恋している人そのものの時はあった)。

飛行機雲は類似カットが「聲の形」でもある(あちらは黒い雲の筋が空に描かれていた)。

オープニングである単語が提示される。そして最後にもう一度提示され一部が消される。「聲の形」ではピンホールカメラを通して見た映像で同じような対になる表現を入れていた。これは物語が終わった時に二人が一歩踏み出してほんの少し状況が変わった事を見せている。


5.疑問点
・登校シーンで出てくる中学校時代の道を歩く希美とみぞれ。みぞれがどう希美を見つめているか始まりを示しているように見える訳ですが、みぞれの想像は色彩豊かな線ではなく色で見せる絵となっている。希美の場合、後でみぞれを吹奏楽部に誘った際の回想で水際線画になっていた。従ってこの中学校時代の道を歩く希美とみぞれは、みぞれがどう希美を見つめていたかという視点で希美の脳裏に浮かんだシーンだったと見た方が良いのではないか。
・OPのdisjoint/エピローグのjoint、青とピンクの色が混じり合うイメージが登場する。disjoint-jointは途中で出てくる回想シーンを考えると希美の視点に見える。そして青とピンクの色が混じり合うイメージはみぞれが発想しそうなものだった。
・童話世界は吹奏楽曲で包まれている。が、しかし、希美とみぞれが第3楽章ソロパートを巡って域の合わなさに悩んだ時、リズが青い鳥の少女との別れを愛ゆえの決断をした時、希美とみぞれの世界を包んでいた楽曲が童話世界も覆うようになった。この時、希美とみぞれの見ているリズと青い鳥の光景は少し異なる。




III Theme,View,Sounds.
1. Characters
(1)みぞれ
・みぞれは無口。嫌な事は迂遠な言い方をするが(冒頭「練習好き?」の実際は「本番嫌い」の表明だった)、概ね本音を語っている。
・希美に対する憧れが強く、依存関係になりかねない危うさを秘めている。
・希美から見たみぞれの印象は当初何気に薄い。「不思議」ちゃん枠に入れていた。

・フグが好き。フグを見つめる偏愛ぶりのカットの前後でどうも希美のポニーテールが無意識に現れたものらしい(多分みぞれ本人はそれが理由で好きだと気付いてない)。なのでフグと希美のポニーテールを後ろから歩きながら見ているのが好きと書くのが正しいかもしれない。

・みぞれにとってオーボエは始めるきっかけを与えてくれた希美とのつながりを保つための手段としてあった。それでいて練習熱心でその事を厭わない。ここでは希美が高校一年生の秋から冬にかけてみぞれに黙って退部して二年生の時復帰したがコンクールメンバーには間に合わなかった事を知っていれば充分である(そういう情報は劇中提示されている)。

・みぞれがリード作りする際に使っている教室は少なくとも2部屋ある。1部屋は旗掲揚ポールや塔構造物が見える(フルートのパート連がある教室に近いはず。みぞれの基礎練習の音が聞えている時もあった)。もう1部屋は見えない(優子、麗奈が来た時、その後梨々花とファゴットの子もやって来ている時に使っていた教室。この時希美は夏紀と進学の話をしていてフルートのパート練習はなかった)。

(2)希美
・希美は雄弁だが本音を語らずに済ませようとするところがある。
・時にみぞれと話をする事なく自身の事を決めていた事もあるし、みぞれとは希美がちゃんと話を聞いてくれないと思うような会話の唐突な断絶をよく起こしている。
・いたずらっ子のような明るさがあるがその下には彼女が気付きたくなかっただろうに気付いてしまった事への悩みや妬みが隠れている。希美にとって高校生活は自身が中心にいて主導権を持っているものだと思っているはず。

・希美の「リズと青い鳥」第3楽章の楽譜には自分がフルート・ソロをやるんだという思いの言葉が水色の蛍光ペンで書かれていた。みぞれのオーボエと対抗できるのは自分しかない。そういう自負心の現れでもある。
・希美は副部長の夏紀いわくフルートのエース。当然ソロをやれる自信はあった。自パートの同期・後輩達もそう思っていた。そしてその時は自分こそがもう一人の主役だと思っていた(だから滝先生に感情的すぎると指導が入った)。

・希美は梨々花からみぞれとの関係について相談される。その際にお礼として梨々花からコンビニのゆで卵が進呈される。おそらくは希美がみぞれに青い羽根をプレゼントした事に呼応しているが、この卵が孵化して飛び去るのかそれとも割ってみたら思ってもみないみぞれの本質を見つけたとかそういう隠喩なのか確信が持てない。不思議な描写ではある。

・新山先生が希美に「今年はコンクールメンバーなのね」というのは1年生の時に退部して2年生で戻った時には既にコンクールメンバーが決まっていて入らなかった事を示している(新山先生は滝先生の知り合いで希美たちが2年生のコンクール練習の時から指導に加わったはず)
・みぞれと一緒に高校の吹奏楽コンクール演奏をやるのはこれが最後の機会になった(1年生の時、みぞれはコンクールメンバーだったはずですが、希美は不明)。
・希美は新山先生を試した。でもみぞれとは同じような答えはもらえなかった。そもそも新山先生はまだ部のコンクール曲指導が始まる前にわざわざみぞれのために来ていて熱量の差は明らかだった(原作をみると新山先生はフルート奏者となっているので、これもダメージを増す要因になっているはず)。

(3)希美・みぞれの共通項
・希美は上履きをエイっと落とす。みぞれはそっと置く。(重要)
・みぞれの希美への意識は語られないが表情や多くの視線カットがあり観客はそれを知る事になる。希美は多くを語るがいろんなズレはある。そして振り返ってみると彼女もまたみぞれの事を遠くからよく見るようになる。
・希美とみぞれは名前の一部「みぞ」が鏡像関係にある。原作において二人がセットで構想されたと推測。

(4)服装識別点
・二人は3年生と同学年なのでスカーフ、上履きとも水色。
・ソックスは色が違う。みぞれは常にホワイト、希美はブラックを履いている(高坂麗奈はブラック、剣崎梨々花はブラックで1本水色ストライプ、緑輝はホワイトで飾りがついている)。ソックスは足下をクローズアップする事があり、その時に上履きの色と合わせて個人識別できるようにとの配慮だろう。
・また希美は女子の中で一人だけ腕時計をしている(メガネ、靴下、腕時計、スカーフ、上履きの色はクローズアップ描写時の個人識別にもなっている)。
・スカーフ・上履き 1年生:緑色、2年生:朱色、3年生:水色

2. 視点
・語られ方という観点の視点において、大半は第三者目線だが、みぞれ、希美と高坂麗奈の三人に限り主観視点や第三者視点ながら彼女らに極めて近い視点、時に聴覚の再現(第三楽章通し練習での希美。みぞれの本気の演奏で衝撃を受けている様子は彼女にどう聞こえたかという形で示された)まで含んでいる。みぞれと希美は相手をどう見ているか、見えているのか本作では重要。
・揺れている視線=登場人物視点だというのが通例ですが、よく誰の視線か分からないけど揺れていたりするので謎はあります。ドキュメンタリー撮影班が入って見せているという撮り方を入れているけど登場人物の心象が影響したりと細かいが特異な演出はされている。

・新山先生、高坂麗奈はみぞれに対する音楽の客観的視点、評価を与えている。事実、みぞれ自らの縛り、不自由な籠の鳥である事を先に見抜けたのは二人しかいなかった。
・滝先生は、二人への注意の内容が的確な上で、みぞれの第3楽章通しのリクエストを受け入れていたりしており自主性を踏まえた上で合奏のパフォーマンスを取るのだとすれば事態はある程度分かっていたと思う。

3. Variations
・本作は人や場所が2回、3回出てくる。廊下で梨々花が希美を捕まえてみぞれと関係を築けない事を相談しているが、この時しかこの組み合わせはなかった。ただこの二人の会話中に何の相談か2回希美が問い掛けるという繰り返し展開が仕込まれていた。
・生物教室での新山先生とみぞれの面接は2回。希美とみぞれのやり取りは第3楽章通し直後の1回だけに見えますが、音楽教室の希美とフルートの反射光を巡るやりとりがあって実は2回あった。
・図書室は3回出て来た。最初は図書係2年とみぞれのみであと2回は希美が加わっている。
・音楽教室のグランドピアノも2回登場した。1回目は優子・夏紀・みぞれ・希美の4人、もう1回は優子・夏紀の部長・副部長コンビのみでみぞれと梨々花のオーボエ二重奏練習曲を聴き入っていた。

4.曖昧にされた日時
・壁掛け時計や腕時計はあるが文字盤や針が読み取れる事はなく時刻は曖昧にされている。カレンダーや日付もなく時折曜日が台詞に混じる程度。季節感は夏制服やプール、お祭り、図書室貸出本を1ヶ月以上返さなかったみぞれへの言及程度。「響け!」本編で出てくる吹奏楽部出演の野外演奏会サンフェス楽譜返却指示の掲示をするシーンなどで表していて正確な日時は敢えて触れないようにして二人の体感時間を重視させる演出が為されている。
・その中で同時性を示すために窓の外を飛んでいく鳥を複数の視点から目撃する構図、ある場所での演奏が他の場所でも聞こえているという仕掛けが何回か出てきている。

・おそらく作中の時間経過は5月GW休み明けから7月下旬まで梨々花編で話を進めた上で6月中旬あたりに戻ってコンクール合奏練習編を描いているのではないかと想像。
そしてエピローグとして7月下旬(二人の下校)、8月下旬〜9月初め(音楽室と図書室の二人)が置かれている。
・グランドピアノでの3年生4人のシーンが5月末、みぞれの図書係2年生の延滞指導1回目が6月上旬、「プール」の連休が7月海の日、府大会が8月上旬なのであろう。
・時間表記を避けた事でエピローグでの意図的な操作をさらりと通している。

*劇中で時期について触れた所や出来事については本稿末尾にまとめている。

5. “お互いに素”
・数学の授業で先生が言う「互いに素」=1以外の共通の約数を持たない複数の数字
・冒頭に提示された英単語。
・生物教室に並ぶ実験器具に振られた番号(11/3/2/7/19/5)2以外は素数
・みぞれが愛してやまないフグは3匹。これもまた素数。

・リズの家の2階の窓の桟、生物室の窓の桟にあった小枝の木の実は3個+5個。
・リズが青い鳥の髪の毛に付けてやった木の実は3個。青い鳥がリズから別れを告げられた時は5個になっていた(3個=希美、5個=みぞれを意味する?)
・3と5は双子素数(2つの素数の差が2になるもの)となっている。3と5以外の双子素数は6n−1、6n+1(両方とも素数の場合)になるとされている。

・最後に1カット入ってくる青と赤とその2色が重なり混じり合った水彩絵の具をにじませたような絵と最後に提示された単語の修正はみぞれと希美の関係の変化を表している。

6. 疑問点・謎
・みぞれは何故パート練習をいつも一人でやって来たのか?同じオーボエ奏者の梨々花の指導をしていないのは冷静に考えたら不思議。一人パートだったからというのはありそうではあるのですが、原作でそういう事書いていたのか確認しなければ。
・楽器室で希美が「進路希望、白紙だったのはみぞれだけじゃないんだよ」といった事を話す。みぞれが白紙で出していたことを知っているのは夏紀だけ。そして夏紀が本人の許可なしにそういう事をしゃべるような口の軽い子には見えない。
・絵本)青い鳥が何故リズの名前を知っていたのか?
・絵本)リズはアールトに青い鳥をなんと紹介したのか?(「あなた」と呼ぶだけで彼女の名前で呼ぶシーンが1回もない)
・絵本)食卓の椅子の2脚目はどこから来たのか。

7. 原作シリーズとの関係
・原作「響け!ユーフォニアム 第二章」後編から主なエピソードが抽出され再構成されている。原作は従来通り黄前さんが主人公であり彼女の視点で語られる事が多い。みぞれと希美の物語はその中で出てくる重要エピソードながら二人の視点で書かれてはいない。本作脚本はそれを抽出して再構成して主に二人の視点で語られる物語とした。

・希美が部活に戻ってきてみぞれが許した経緯は原作「響け!ユーフォニアム2」、テレビアニメ版で触れられている。本作で入ったみぞれの回想の通り辞める際にみぞれに希美が何も言わなかった事が一番重要な事であり必要十分な前提でもある。
そうなった経緯自体知りたい人はテレビアニメ版か原作へレッツゴー(映画版2作は黄前さんが高校一年生の時の高坂さん、田中あすか先輩との関係性にフォーカスしているのでみぞれ・希美エピソードは出てきません)。

・原作で黄前久美子が担っていた会話がみぞれに移されている。久美子が原作本来の主人公であり、中で起きている事件に関わるようにするため万相談所的なキャラクターとなっていてもっと関わりがあったが、映画ではみぞれが直接対話することで二人の関係がより近くなる終わり方となった。この二人の物語を独立させた事でそういう決着をさせる事が出来るようになった。原作と映画の大きな違いと言えばこれぐらいかもしれない。

8. 「リズと青い鳥」絵本・文庫版
・「リズと青い鳥」文庫版は岩波文庫に見えるんですが調べた限り非実在。もし本当にあるならエンドクレジットに岩波書店の名前が出たでしょうし。絵本といい作り込みは徹底。

・『絵本』世界の中でのリズの家。煙突がある方向がおそらく北側。1階はドアがある方が東、煙突・コンロがある方が北となる(ドア正面から見て右側)。
2階ベッド側が東、机が西だと思われる(西側の窓から三日月が低い高度で見えているが三日月だと月の出は見えず月の入り時刻は早い)。
・「お風呂」らしきものが軒下にあるが、おそらく南西側。
・食卓の椅子はリズだけの時は1脚しかない。青い鳥がやってきて2客に増えるが、リズが青い鳥に別れを告げた時には1脚に戻っていた(2階にも椅子はあったが動かされた気配はない)。

・『絵本』でのリズと青い鳥は一人二役で声が演じられている。本作中、境界線があいまいな世界であり、だからあえて声優ではない人にこの役を依頼したのではないか。
・この絵本パートは希美が手にしていた絵本の絵が動いている訳ではなく別物になっている。
・冒頭、学校で待つみぞれのシーンまでに出てくる世界の読み手はいない。
・譜面台の置かれてみぞれがあらすじを紹介した後、この世界を見ているのはみぞれである。これは絵本にも文庫版にも描写がないであろうベットに入ってからそっとスリッパの向きを直す所から推測できる。希美ならそのままのはず。青い羽根を鳥籠に閉じ込めた描写もみぞれの想像だろう。
・みぞれがオーボエのリードを口にした瞬間から始まる絵本パート(リズが青い鳥の少女の正体を薄々気付く)は明確な読み手は示されていない。
・リズが青い鳥の少女に別れを告げたパート。ここは二人ともそれぞれが想像の中で読んでいる。青い鳥が水辺近くで飛び立った時の読み手はみぞれだった。
リズが「カゴの開け方を何故私に教えたのですか」と神に問い掛けていた所を読んだのは希美だった。この時リズがみぞれから希美に入れ替わっていた。

9. 大好きハグと……
・最後にみぞれが希美に言うあの言葉のエピソードはなんとオリジナル(ハグは原作にもある)。この部分がまさか映画オリジナルとは驚いたし言う前のかすかに聞こえてくる息遣いの演技も凄いと思った。ブラボー!

10. 劇中経過
作品は大きく分けて3つに別れており、概ね5月から7月に収まっていると推測(エピローグの一部のみ近畿大会後の8月下旬学校再開前。京都府立高は8月最終週から授業再開している)。なおPart2終了時点で上映時間が45分程度経過している。思ったよりコンクール練習パートの時間が長い。

Part1:日曜日の練習での登校からみぞれの片付け、帰宅まで
Part2:コンクール練習に入るまでを梨々花を交えながら希美とみぞれの関係が徐々に動き出す所まで
Part3:コンクール練習(「リズと青い鳥」第3楽章抜粋を中心に)とその後

参考)原作での時間経過
映画では合宿などないので時系列が変更されていると思われる。

・あがた祭:6月初め
・オーディション:府大会の1ヶ月前
・みぞれへの新山先生のアプローチ:オーディション後、進路調査票前後
・府大会:7月下旬〜8月上旬(2018年度は8月上旬)
・3連休(お盆休み)
・合宿
・関西大会:8月下旬?

<Part 1>
(絵本の世界1)OST吹奏楽曲第3楽章編曲版。動物たちに餌をやるリズ。飛び去る青い鳥。

<5月?>
(1)日曜日の音楽室、希美による「リズと青い鳥」絵本あらすじ説明
・希美のフルートパート練(普通教室)
・みぞれの絵本読書(普通教室)
(絵本の世界2:みぞれ)OST吹奏楽曲第1楽章途中+第2楽章編曲版。リズ、繰り返しの日々。嵐の翌朝、青い少女が倒れていた
・廊下でみぞれに挨拶するダブルリード1年生3人

<Part 2>
(2)希美を廊下で呼び止めた梨々花。みぞれとの仲を相談する
・みぞれ、図書室で「リズと青い鳥」文庫本を見つける
(絵本の世界3:みぞれ)OST吹奏楽曲第1楽章編曲版。青い鳥の少女とリズの幸せな日々
・みぞれ、図書係2年生に「下校の時間です」と言われ追い出される

(3)平日朝。みぞれは低音パートの「大好きのハグ」目撃(夏紀、久美子、緑輝、さつき)とその後の希美とのやり取りを思い出した。
・白紙の進路調査票を担任から戻されたみぞれ。それを目撃した夏紀
・体育館でのバスケットボール授業(夏紀、みぞれ)

・廊下を右へ向かうみぞれらしき足が映り込む。
・音楽室でフルートパートがおやつタイムをしている
・みぞれは生物教室へ。白紙の進路調査票
・音楽教室からのフルートの反射で希美とみぞれとじゃれ合い、そして一方的に去られた(希美を呼んだ手はフルートパートリーダー3年の井上調と指定されている)

(5)音楽教室。フルート1年二人「ソロはのぞ先輩」。みぞれに「がんばろう」と合図。希美が何を言っているのか理解しかねたままオーボエのリードを口にするみぞれ
(絵本の世界4:読み手?)吹奏楽曲第3楽章フルバージョンの冒頭〜約2分50秒の演奏の中で青い鳥の少女の正体に気づき始めるリズ

(6)生物教室。新山先生が来校。みぞれに音大受験を勧める。希美もその事実を知る
(7)音楽教室グランドピアノ(優子、夏紀、希美、みぞれ)
・優子が書いていたスケジュール表は2018年5月中旬の中間試験〜6月10日までのもの。夏紀が突っ込んだのは全ての練習に私も参加する!!!的な無茶を優子が書いていたため。もっとも田中あすか低音パートの女王が他のパートの練習の日までいたと思えないので、ここは夏紀のあすか先輩びいきが出たように見える
・ピアノの練習曲を暇つぶしに弾き出すみぞれ。それに嫉妬する希美
・希美、「あがた祭」(原作では6月はじめ)にみぞれを誘う。他に誘いたい子はいないか探りを入れた

<6月〜7月?>
(8)雨の日。ふぐちゃんデート約束を披露。梨々花、みぞれに「みぞ先輩」と呼ぶ許可を得た
(9)向日葵が満開
・みぞれが図書室の本返却が1ヶ月遅れ。希美が図書係2年の怒りから助け出した
(10)教室でリードを作るみぞれ
・梨々花はオーディション落選。「一緒にコンクールに出たかったです」
(11)音楽教室。みぞれ、希美の接近を探知出来ず。希美、みぞれに対して安心をしようと「プール」に誘う(連休の時に行こうよと台詞あり)
(12)みぞれの教室。梨々花、プールのお礼。二人でオーボエ二重奏練習曲を演奏
・音楽教室グランドピアノで優子と夏紀が部長業務。オーボエに聞き入っている
・希美たちフルートパートは教室で歓談。しばらく上を見上げる

<Part 3> おそらく6月に戻ってPart 2と重なる形で話が進行
(13)コンクール合奏練習。第3楽章合奏練習1
・滝先生は希美に相手の音を聞けと指導、みぞれにはもっと歌う演奏を求めた
・高坂麗奈は強い視線でみぞれを見ていた
(14)みぞれの教室。高坂麗奈がやってきてみぞれに本気の演奏を求める
・夏紀と希美、教室で問題集を広げている夏紀を見ている希美
・みぞれの教室。梨々花らダブルリード4人での練習会
(15)雨の日  (8)フルート1年の水族館デートの話から1〜3週間以内?
・フルート1年女子デート結果
・第3楽章合奏練習2。橋本先生、新山先生が練習指導に参加
・廊下で新山先生に話をする希美。足が雄弁に物語る
(16)雨の日。第3楽章合奏練習(練習シーンなし)
・多数の傘=希美の心情?
・橋本先生「オーボエとフルートの掛け合い大丈夫?」
・希美に手を振るみぞれ。希美は無視してそっぽ向いた
・練習後、廊下へ出た希美を追うみぞれ。みぞれは大好きのハグを求めたが拒否された
・傘の数は減った。希美はみぞれをはねつけた事で少し溜飲を下げた?
(17)楽器室、サンフェス楽譜返却の掲示を貼る優子。夏紀、希美。
・トランペット高坂&ユーフォ黄前による「リズ」第3楽章ソロ掛け合い。冒頭部からオーボエソロが歌い出す所まで含むもの。後半は劇中ここまであまり演奏されていない。みぞれは少しだけ聞いて窓を閉ざした。麗奈達の演奏に関心がないのか?という所からみぞれの複雑な感情が見える
・生物教室。みぞれと新山先生の2回目の面談。絵本の世界と新山先生の話が交錯
(絵本の世界5:みぞれ)青い鳥の少女としてリズとの別れを読み解く
・希美とみぞれがシンクロしてリズと青い鳥とは誰なのか同時に気付く。というよりみぞれにとって分かるのは青い鳥の心情だけだったという事が明確になった
(絵本の世界6:希美)リズとして青い鳥との別れを読み解く

(18)第3楽章合奏練習3。表現力の枷を解き放ったみぞれのオーボエは高々と歌った
・生物教室。希美の最後の抵抗。みぞれが希美を好きだと言い続ける姿勢に負けた
・負けを認めて笑うしかなかった希美。みぞれから離れると「帰らなきゃ。荷物を取ってくるね」と言って生物教室を出て行った
・希美はみぞれを中学校で誘った日の事を思い出した。「吹奏楽部に入らない?」(みぞれは「一緒に吹部」と回想していてここだけ一致してない)全ては希美がみぞれに声をかけた事から始まった。そしてそれが遂に羽ばたいたんだという事に気付いた

<第3楽章通し>事件から数日後(台本に記述あり)
(19a)図書室
・図書室で文庫版「リズと青い鳥」を借りるみぞれ。
「今度は延滞しないで下さい」と図書係2年生の怒りを希美がいなした。
希美が借りた問題集に対しては図書係「貸出期間は1週間」。希美の前に借りていた新山加奈は6月に借りていたので少なくとも6月以降である事は分かる。

(19c) 図書室と音楽室・二人はそれぞれ受験勉強に向かう。
・みぞれは音楽教室でオーボエ練習。希美が描いたイラストと言葉を見つける
・希美は図書室閲覧席で問題集を開いて数学をやり始めた(フルートバッグは見えない)
・朱と青の交わり。みぞれの思う二人の関係

(19b)仲良く下校する二人
・希美がみぞれに甘いものを食べに行こうよと誘う(この部分はどこでそういう話をしているのか不明にされている)。
・正門で先に待っていた希美。階段を降りた所で初めて口を開き「ソロ掛け合い、みぞれの演奏を支えるから、今はちょっと待ってて」と言う。対するみぞれは「私もオーボエを続ける」。希美はこの夏、みぞれの才能に捧げる約束をし、みぞれはこの時点では生涯にわたるかもしれない約束をしている。希美はみぞれとこの夏までしか一緒に演奏できない事を自覚している。みぞれは希美に対する愛ゆえにオーボエの研鑽を続ける決意を示した
・二人は道を歩きながらハモって言う。『本番、頑張ろう』。一瞬の躊躇、勇気を持ってみぞれはある言葉と言う
・笑顔のみぞれ。先を行く希美が振り返って何か言って、みぞれが何か驚いたカットで終える。
・disを消してjoint。希美の思う言葉で考える二人の関係(必然的にアバンでのdisjointは希美の考えたものだろう)