2018年4月19日木曜日

「さよならの朝に約束の花をかざろう」

岡田麿里監督・脚本作品。癖のある強烈な物語力を持った作品だった。
エリアルの軍に入る理由、王都防衛戦での戦う理由などセリフで聞かされると本当にそんな理由なのかと思ってしまう。ディタを守るのなら家を離れるというのは理解し難いし、仲間を守るというには仲間との交流描写がない。職業軍人として仕事しますよでも良かったんじゃないか。どうも理が強すぎる。

別れの一族、郷の外で愛してはいけないという長老の言葉は理になっていて言うほど機能はしたと思えない。
本作は母親たろうとしたマキア、母親であるように仕向けられそして子を奪われたレイリアという二人の母親の物語となっている。レイリアが最後に忘れて/忘れると叫んだ時、マキアはそれを自分の思いとして優しく否定した。
メドメルにそんなマキアの声は聞こえてないはずだがそれでも一目母という人に会えた事で何か納得してこれから生きていく決心をした。
マキアとエリアルの人種を超えた親子の愛は確実に描かれていた。別れの一族という設定は最後の「行ってらっしゃい、エリアル」以外は意味を持ってない。でも息子と死に別れる母親の愛情は確実に描かれていた。

物語が突出していてそれをアニメーションがしっかり支えた作品になっている。飲み込みにくい理に落ちたセリフもあるし、王都防衛戦でのレイリアやマキアの行動経過は納得し難いのですがそういう瑕疵をものともしない力強い物語がある。マキアの声の役、難しい面があると思うのですが合っていた。2018年度有数の長編アニメーション映画である事は間違いない。



時系列経過
エリアルとメドメル、二人の子どもの年齢が時間経過を表している。個人的にはこの世界での年を示した方が良かったのではと思う。通常の世界ならあるカレンダーが全く出てこない1800年代前半の文明が想定されているがカレンダーによる年を入れてもおかしくないと思うのですが、ここは隠した意図が分からない。

・エリアル0歳、マキア15歳 
 マキア、エリアルと出会い、ミドとラング兄弟の家に厄介になる。

・エリアル6歳、マキア21歳、レイリアがメドメル妊娠中
 メザーテ王都。レイリア奪還作戦失敗。マキア親子はメザーテを離れた。

・エリアル15歳、マキア30歳、メドメル8歳?
 鉄の街。エリアルは工場勤務からメザーテ軍に入隊。マキアはクリムに拉致された。

・エリアル20歳、マキア35歳、メドメル13歳?
 メザーテ王都陥落。エリアルとディタの間に子供が誕生。

・エリアル50〜60歳、マキア65〜75歳、エリアル娘30〜40歳、エリアル孫娘5〜8歳
 マキア、エリアルに別れを告げる。

年齢推測根拠:
・エリアル6歳=マキアを助けたイオルフと一般人のハーフの人物が言及している。
・エリアル15歳=ラングがエリアルに「マキアがお前の歳ぐらいの時に」と言及
・髪の毛はショートヘアから腰の位置まで60センチとしてそこまで延ばすと5年程度かかる。