2013年10月20日(日)やっているシネコンがわりと近くにあるのを見つけてみてきました。二週目だったと思いますが、早朝8:20枠オンリー。厳しい。
あらすじ
昭和21年。敗戦から5ヶ月経過した佐渡島の砂浜に一機の英軍輸送機ダコタが緊急着陸した。敵国同士だった英軍に対する懐疑の中、村長の「昔からいろいろな人がこの島に流されてきた。遭難者は助けるべき」という判断により、いくつかのトラブルもありながら相互信頼関係が築かれ、ダコタを再び飛ばすべく、村民と英空軍搭乗員たちは動き出した。
DC-3実機を使用
本作は2012年冬、2013年冬の2回に分けてオール佐渡島ロケで撮影されています。
ダコタ輸送機(民間型DC-3、軍用C-47。ダコタは軍用の外国軍供与名称)はタイにあったC-47を輸入。不時着後のシーンから高所への引き上げ作業、離陸前の登場シーン等はこの機体が使用されるという徹底ぶり。
本機の輸入、組み立てに当たられた方のサイトによると大変苦労されたようですが、映画の主人公でもあるSister Ann号について実機が当てられた事は本作のリアリティーを補強する重要なポイントになっている。
本機は浜松の企業が買収。10月に佐渡島を離れて浜松にて展示される予定とのニュースが出てます。
敗戦直後の日本を描写
敗戦直後、駐留部隊もいないような村に突如降り立った英軍輸送機を巡るエピソードが積み上げられて行く訳ですが、その中では海軍兵学校で訓練中の負傷で障がいを負って除隊した元兵学校生や陸軍から戻ってきて佐渡島に見切りをつけて新潟でヤミに手を出そうとする復員兵士、ビルマ戦線で名誉の戦死を遂げて仲間に遺骨と遺品を届けられた一人息子といった戦争に直接巻き込まれた人々と、その彼らに報国忠信を教えてきた学校長、戦時中に家族を失った人々などが出てきます。
英軍に協力すべきと校長が言うと「戦時中は」と言われる。また英軍との交流が進むと「私たちは軍に騙されていたんだ」という中年婦人たち。この婦人に対して村長は「あなたたちや私も含めてみんなが戦争を招いた」と説く村長。反発する婦人たち。
最後に村長は「そんなことだと次の戦争を止められない」と一人つぶやく。
障がいを負った元兵学校生は詫びる恩師に対して「時代が後押しした」といった台詞を語ります。本作の戦争観は普通の庶民からみた視線を大事にしています。その上で国の舵というのは誰かの責任ではなく国民の責任である事が示されていて納得出来るものでした。
飛び立つダコタ
欲を言えば、飛び立ったダコタがさよならの低空パス(機体を左右に傾けて主翼で手を振る)もせずに飛び去るというのはちょっと信じ難い印象は受けました。コクピットのシーンを避けた印象はあるのですが、それぐらいはなんとかなったのでは?飛行機の操縦には喜びと哀しみを示すものはある訳で、やっていれば最後はより締まったものになったと思います。この点は大変残念。
エンドロールの写真
エンドロールではSister Ann号を前にした記念写真が映し出されます。最初は映画の登場人物たちなのですが、他の写真は当時実際に撮影された記念写真が使用されていて、この佐渡島への不時着事件が本当に起きた事である事が示されます。最近ありがちな演出ではありますが、本作にも合っていて良い終わり方だなと思った次第。
油谷監督、映画は本作が初監督作品ですが、ステレオタイプに陥りそうで陥らず、あまり語りすぎず映画的な表現をしようとされているのは納得。100点という作品ではありません。ヒロインが冒頭動き過ぎていて浮いている等の欠点も目につきますが、邦画にありがちなテレビドラマ映画化ではなく、オリジナル作品で勝負してきた意気込みは素晴らしく、その事が作品にプラスに出ています。実機を輸入して使おうという発想も中々得難いものがあり次回作は期待のハードルがだいぶ上げて楽しみに待ちたいと思います。
【参考】本作の機体調達と再組み立てを担当された方のサイト:
裏話など豊富で飛行機側から見られた方には最高のサイトかなと。
https://ssl.alpha-prm.jp/dc3pub.com/filename3.html