日に2回上映。それは上映時間が219分にもおよぶ為。私の見た回は14時15分終了。
その後入れ替えて14時30分から2回目という上映プログラムでした。
シネマート心斎橋はBIGSTEPの4Fにあります。隣はライブハウスのBIGCAT。10年以上前には好きなデュオの演奏を聞きにきたのをふと思い出したり。いや、懐かしい。
ディア・ハンターでアカデミー賞受賞のマイケル・チミノ監督が膨大な予算で撮影して、大こけした事でUnited Artistが倒産したという曰く付きの作品。名前は知っていましたが、実態は知らず。
残念ながら上映は東京、関西が中心。Webで予告編を見たら食指が動き、三連休の中日を使って心斎橋遠征。
デジタル修復完全版とは
当初公開版は長過ぎてカットされたというもの。今回のバージョンはYCM分色して3本のフィルムで保管されていたマスターを2Kスキャンして復元したもの。
画質は粒状ノイズで飽和した映像。これは高感度フィルムを使用していたため。
公開当時見られた方にTwitterで教えて頂きましたが、画質は公開当時のままに見えるとの事。暗部はディティールが比較的豊富なのですが、これはデジタルマスタリングした段階で補正が入って改善された可能性があるかなと。
色調は違和感なし。本バージョンはチミノ監督も関わっており、その点の不安はない仕上がり。
ジョンソン郡戦争
本作はワイオミング州ジョンソン郡で起きた牧場主が人をやとって牛泥棒している元凶と目された小規模牧場主たちを排除しようとして起きた「戦争」について脚色して描いたもの。本作では後者は東欧からの移民たちに置き換えられています。
史実についてはフォロワーの方から教えて頂いたこちらのページが詳しい。(ジョンソン郡戦争については第1回、第2回参照)
登場人物たちの幸せな時間の描き方
本作は1870年ハーバード大学卒業式シーンからスタート。クリス・クリストファーソン、ジョン・ハートなど主要キャストの何人かはここで顔出し。とは言え、卒業式入場から卒業生代表答辞、その後のダンスパーティーと結構な時間を使って学生時代という幸福な時代の終わりを徹底描写。ジョン・ハートの「これで終わりだ」というのがその後の人生行路を予見させる形になっている。
本作はこういった一見本編に関係ないシーンがふんだんにあります。そしてその時間が登場人物たちにとっての幸せと直結している。町に戻ったジム・エイヴリル保安官がプレゼントを持って娼館の恋人エラ・ワトスンの元を訪れるシーン。ローラースケート場での町の人々総出の大騒ぎ等。
219分という上映時間、何に割り当てたかといえば一つ一つのシーンの描写を長くとり、加えて一見本編と関係ないシーンを増やしたように見えますが、名前もはっきりしない登場人物にも光が当たっており、その事でディティールが高くなるという効果を得た。これは長尺映画のメリットでしょう。
早過ぎた映画
牧場主と牛を盗む移民との抗争という図式は現代の格差社会として見る事が出来ます。
本作が最初に米国で公開された際は、上映時間短縮してなおジョンソン郡戦争というアメリカ史の暗部に光を当てた事もあってか、大変不評でWikipediaによると1週間で上映打ち切りになったと言われています。そのため、制作費4400万$に対して興行収入は348万$に止まり制作費の回収も出来ず、制作会社のUnited Artistの破綻を招きました。
1980年頃の米国でこのような内容の映画が受け入れられると思いませんし、実際そのようになりました。が、現代だとどうでしょうか?大変しっくりくるテーマではないでしょうか……と考えると時代の先を行き過ぎた印象は残りますね。