2013年8月24日土曜日

[映画] ホワイトハウス・ダウン

2013年8月18日にレイトショーで見てきました。
「もう一人のシェークスピア」が驚きの傑作(文学もののようでちゃんとエンターテイメントとリアリティラインを維持した作品でした)だったエメリッヒ監督の最新作。再びビッグバジェット&リアリティラインがあってなきがごとし作品になるかと思いきや、さにあらずという。

チャニング・テイタム立て続けになったり。
ネタバレあります。










リアリティラインが突破されたポイント
まず数少ない悪い点を挙げときます。このあたりはリアリティラインが乱れてます。

・副大統領を乗せたE-4(でいいのかな)が近くのミサイルサイロから発射された弾道弾で撃墜されるというシーンがありますが、ICBMなんて弾道飛行して敵地に落ちて核爆発する為の兵器なので、航空機に直撃する為のレーダー等搭載はありません。どうやって誘導するのか、とか理由付け考えてみましたがなさそう。
・E-4を護衛するのはF-18。対地攻撃に駆り出されたのがF-22。後者はステルス戦闘機なのであの局面だと使う必要はないかなと。A-10、F-16、F-15Fあたりが適役か。
・ハッカーはダイ・ハードオマージュ。BGMはベートーヴェン。大型眼鏡等。ただそのコンピューターのセキュリティ突破手法はどうやら総当たり方式らしくパーセンテージ表示。まともに説明する気はそもそもないと見るのが正しい『魔法』としての描写に終始。
・大統領の装甲リムジンに何故か携帯ロケット弾が標準搭載。どんな状況で使うんだろう?

ID4からするとたったこれだけですし、物語を極端に邪魔する要素はE-4撃墜方法ぐらいでしょうか。さほどエメリッヒ監督作品は見ていませんが、「もう一人のシェークスピア」で見られた地道な物語展開を積み上げる描写は共通に思えます。

キャスティング
主人公と大統領は監督の趣味説に一票。評価が低い人もいらっしゃいますが、二人とも演技した結果ですし、地が出ていなかったと思うので辛いなあと思った次第。

アメリカの象徴としてのVH-3
最初にホワイトハウスに戻ってきた大統領がヘリコプターをリンカーン像に近くを通過するようにオーダーするシーンからスタート。使われたヘリコプターはVH-3シーキング。
大統領の移動を担当する海兵隊ヘリコプターで濃いグリーンの塗装が美しい機体です。
ホワイトハウスでの銃撃を考えると最初に撃墜されそうなものですが、基地から飛去っていて無事。映画最後でホワイトハウスに大統領を迎えに来たのがこのVH-3でした。
ホワイトハウス奇襲奪還作戦のUH-60ブラックホークは3機とも撃破(しかも1機はホワイトハウスの旗竿をテイルで凪ぎ飛ばした)された事を考えるとVH-3の扱いの破格さが分かります。

地道な物語の積み重ね
ダイハードオマージュはミスリード狙いかなと。元軍人で議会警察の警護官である主人公は銃器の扱いは知っているが、普通のパパでしかない事は冒頭徹底的に描かれます。
その上で、襲撃犯との対峙は彼が身につけてきた職業上の経験、知識で地道に反撃を繰り返す。そこに特別なヒーローはいません。
大統領もその点で変わりなく。助けられた若き大統領は従軍経験はないので積極的には戦う術を知らない。ただ自らの責務と相棒となった議会警察官と共に脱出を計ろうとする。

敵の造形がステレオタイプだったのはテーマが普通の父親が大統領と共に戦う姿を描く事がメインだからでしょう。ここで兵器製造企業が戦争で儲かるのか(戦争は特需なのでいつかは終わる)という問題はあるのですが、誰にでも分かる悪役という事が大事だったのだと思います。
その一方で黒幕は誰かという設定はなかなか手が混んでいて楽しめました。ちゃんともっともらしい伏線が仕込まれているのが良かった。

本作が「もう一人のシェークスピア」の次の作品である事は演出部分を見て行くとよく分かります。むしろ「インデペンデンス・デイ」とか誰が撮ったの?というぐらい演出、脚本が違ってます。
前作から引き続き作風が変わった事についての評価は、監督のフィルモグラフィーを振り返る際のポイントになるかなと。次回作も楽しみです。