2013年8月12日月曜日

[映画] ワールド・ウォーZ

「ワールドウォーZ」見ましたが。うーん。。。
※ネタバレあります。








物語構造はブラッド・ピット扮する元国連調査員という主人公をブラッド・ピットが操作している様を見て楽しむFPSゲームリプレイというのがしっくりきます。
その様をゲームプレイ風に語ってみます。ネタバレの嵐なので、映画を見てからどうぞ!























第1ステージ「街から家族を脱出させろ」
ここが一番燃えます。いい所です。主人公がある事を検証する為にやってみせた事など知恵と工夫が詰まっています。問題はここが一番良かったと振り返ると思えてしまうあたりか。
脱出後、主人公を脱出させた国連事務次長は非情にも「君が行けば家族はここに残れる」と告げた事で、調査チームの護衛リーダーとして0号患者探しに行くのを嫌だ、嫌だと言っていた主人公は、否応なく引き受けざるを得なくなる。
調査チームは航空母艦からC-130を発艦させて最初の給油地の韓国へ。何故か研究者が1名だけで護衛は主人公を除いたら特殊部隊(SEALS?)2名だけ。そして特殊部隊員の装備は何故か警察SWATにしか見えないというのはきっと大混乱が招いた事態なんでしょう。

第2ステージ「韓国の基地に降りて給油せよ」
本作最大のコント勃発。
「管制塔は灯りがない。でも給油するので降ります」というパイロット。なのに滑走路はきちんと着陸誘導灯が点灯している。
降り立つとゾンビのお出迎え。そこである喜劇が発生。監督と脚本家、基本コントをやりたかったんだと思いますよとは今からなら思えます。ええ。(要するに「そんなのありか!脚本家出てこい!」という事。)
混乱の中、基地内でに撤退した主人公たちはこの基地から発信されたメモについて事情聴取。給油が目的だと言っていたと思うのですが。
とある容疑で拘禁されている元CIAの人に会うと重要なヒントを教えてもらえたりとなかなか親切な展開。そうこうしているうちに給油タンクローリーを横付けして給油する事になり、パイロットと主人公は自転車でC-130へ。基地の守備隊も護衛として出撃。(何故か彼らは暗視スコープ装備。何故調査チームの特殊部隊が持っていないのか謎が。。。)
「音を鳴らすな」と言われているのに、鉄条網にひっかかる主人公。これは萌えポイントです。そこへ奥さんがイリジウム携帯を鳴らしたら?!
映画見るときは電源切りましょうって教わりませんか的な展開。怒り狂ったゾンビたちが大集合。きっと博士も出迎えてくれる筈と思ったらそこはスルーだったのが惜しい!

第3ステージ「イスラエルの壁」
元CIAに重要なヒントを教えられた主人公はAn-12、じゃなくてロシア製C-130を一路イスラエルに向けます。
対ゾンビ防壁を見学する主人公。そこで何故か避難民たちが歌い出して。。。
コマーシャルでも使われているゾンビピラミッド方式の攻撃はなかなか見応えがあるのは事実です。ただ、あの攻撃が引き起こされるトリガーがあまりに単純で今まで起きてなかったとは信じられないという作中世界のリアリティラインも同時に突破されたのであった。南無。。。

第4ステージ「飛行機の中はそりゃ大騒ぎさ」
飛行機をヒッチハイクした主人公。(C-130のパイロットは主人公を見限って逃亡)
第3ステージでついてきたイスラエル女兵士の戦傷の看病をしながら、国連と連絡を取って英国へ。
勿論本作はゲームリプレイなのでここでもイベント発生でゾンビが実は乗ってましたという展開に。機首近い座席にいた主人公はエコノミークラスのゾンビ祭りを防ぐ為に鞄類を積み上げてバリケードと思ったら荷物が崩れて、さあご一緒に!という馬鹿展開。
これを始末した主人公の手段が酷過ぎてこの旅客機に搭乗した乗員と乗客の運の悪さを嘆かれずにおられませんでした。

ファイナルステージ「ウェールズのWHO研究所」
「風呂敷は 大きく広げて小さくまとめ そんなのは実につまらん 字余り」と一句詠みたくなる展開。
主人公の破壊的な解決策は新たな危機を生み、旅客機は目的地に辿り着けず墜落。
奇跡的に助かった主人公。何故か体に一本金属が突き刺さり。それを抜こうとするんですが、シートベルトを外して地上に落ちてから体を突き抜けている状態が判明。
イスラエル女兵士も無事で一緒にWHO研究所を目指します。

途中、整然と車が止まる町並み。家から女性が彼らを見ても目を背ける。その先に放置されたトラックがいて、やはりいるのねという事がようやく分かるという不親切設定。
何故この地はこんなにあれが少ないのか説明がなさ過ぎる。。。
辿り着いたWHO研究所で昏倒した主人公は3日後に目覚める。
ここで国連事務次長と連絡が取れたものの自分が死んだと思われていて、任務につくなら安全な船においてやるとまで言われていたのに、亡くなったからもうチャラとばかりにカナダのセーフゾーンに送られたという展開を知らされる。命がけの任務に脅して従事させておいて信義を踏みにじる行為を平然と入れるあたりが、なんともいやはや。

主人公はここに来た理由を説明して実験しようとしたら、実は問題の物資が隣の棟にそれがあるもののゾンビが蔓延していて隔離していると告げられる。
では、行きましょうかと研究所の人とイスラエル女性兵士と共に行く訳ですが、ここでまた韓国のコントを再演。研究所の人、コント要員としてどれだけ主人公の足を引っ張るのか。あまりにずさんな危機の勃発。
ここで主人公は一人で別方向に向かう際にある事をやる訳ですが、これがよくないんですよね。何故、後で応用しないのか。知恵と勇気は努力という積み重ねが必要ですがそういう事はあまりやらない。杜撰。

主人公が目的を達するためある倉庫に押し入ろうとしたら壁の内線電話機が鳴る。
電話に出ると隣の棟にいる女性研究員からパスワードを言われて、ドアを壊さずに倉庫内へ。……というか室内にあるブツの性格を考えるとドア壊そうとするなよとは言いたい。

そして部屋を出ようとした時、外にゾンビが!
女性研究員よ、フォースを使って助けるんだ!一度やってるではないか!と何回も念じたのですが、無論やる訳がなく。
ここから主人公が想像外の行動に出るんですが、その前にどれを射つか監視カメラと外の電話機を使ってやりとりするとか誰か思いつけよ。主人公も遺言を書いてカメラに写すんじゃない!主人公の考えの到らなさにイライラが募ります。
後はまあ順等なんですが、何故いままでやらなかったんだよ?という疑問のクエスチョンマークが頭を乱舞。
そしてハッピーエンドで終了。


原作とゾンビへの愛を感じない
さて主人公が思いついた解決策。ウィルスあたりだと突然変異してしまうのでそうそう上手く行くのか疑問。それよりも音を利用して引きつけたりする方が効果的。あれだけ単純に音に反応するのなら大きな音を出して釣り出しておいて攻撃すればいいかなと。あとゴキブリホイホイならぬゾンビホイホイ的なものも作れそうな予感。
原作はゆっくりしたゾンビですが水中も移動してくるので海上でも安心といった事はないんですよね。あと単純に音に反応するという設定もなかったと思うので、どうも悪い方に話が傾いたように見えます。

原作はゾンビで満ちあふれた世界が如何に正常化されていったか。その為の一歩一歩を示す連作短編集の一種です。私の勘違いでなければ、著者も参考にしたらしいハケット将軍の「第3次世界大戦」の物語構造を引用しているのだと思います。
非常に癖がある作風なんですが、その分、どのように世界が崩壊してそして取り戻したのかという人類の物語を描くのには効果的でした。
本作は原因を探って韓国、イスラエル、英国と舞台を変えつつ原因と弱点を探るという構図になっています。原作が主人公を持たない群像劇だった点を単一視点に変えて語る為には必要な変更だったと思いますが、それにしてもご都合主義で主人公が愚かにしか見えない展開が多いのが致命的。
別段、奥さんが携帯電話を鳴らしたら主人公の危機を引き金だったなんてコントはいらないじゃないですか。脚本家のセンスが全く分からない怪作になってしまってます。
興行収入と作品の質の因果関係ってないんだなと思わされた次第です。