6月30日に見ました。批判的視座に立っているので、見て納得したり萌えたりした人は読まない事を強く推奨。
米海軍特殊部隊SEALSの現役隊員達が多数出演が売りのエンターテイメント映画。従って作中の事件等は全てフィクションです。
まず目を引くのはFPSゲームリプレイ型映像の多用。演出意図としてその人物の視点に拘りたいという発想があったのだと想像。ただCG黎明期にあり得ない視点を再現してみせた結果、リアリティが乏しくなり映画としての演出に失敗していた事に類似の現象が発生していて失敗していると思います。これだと「何故、俺の手元にゲームコントローラーがない!!!」と思ってしまう。
冒頭パートの空挺降下・強襲による人質救出作戦、襲撃対象の持つ車両で逃走って……と思いつつもこの映画一番の見せ場でした。狙撃兵が始末しつつ川側から目標建物に突入して掃討。最後に一番美味しいシーンを持って行った高速艇部隊は騎兵隊モチーフ。ベトナム戦のBrown Water Navyの伝統ここにありという感じでまとまっていました。
ここから先は蛇足に見えるんですが、最後の強襲シーンはイラク都市戦を再現する為に無理矢理作り出したストーリー展開。その中で仲間を守る為の自己犠牲の物語が描かれる訳ですが、その前の伏線がいわゆる死亡フラグそのもので驚きがない。
テロリスト描写は明らかに適当。例えばテロリスト側の一方の首領はSEALS部隊の強襲を受けて逮捕(ああ、どうやって国際法規または領海国の了承を得たのか謎)される訳ですが、そこでの尋問は見事な犯罪示唆で声高々響き渡る「正義」の割にやっている事は相手と同じレベル。2001年9月11日に誇り高く正しくあり続ける事は亡くなったのだなと思わされる演出。
また別のテロリストの首魁は自爆テロ要員を合衆国内に潜入させようとしたところ、SEALS部隊に強襲され、追いつめられて自爆テロ要員に「ここで死んで天国で待つ夫の元に行け」とやる訳ですが、ボタンを押す犠牲者は震えながらボタンを押しており信心ではなく脅迫されて何かを守る為に自爆しているようにしか見えない。総じて脚本が弱いです。
この作品、基本SEALS部隊のヒーロー描写に焦点を当てており、作品構成自体はよくある「警視庁密着24時間」と同じです。登場人物たちの装備や動きを愛でて楽しむもので、ストーリーを含めてはならないものなのでしょう。
なおC-130からの空挺降下やミサイル原潜改造の特殊部隊輸送型原潜(「シャーウッドの森」や特殊装備輸送タンクが出てくる)の浮上・ダイブや特殊潜航艇発進シーン、CH-47チヌークの高速艇輸送・着水、クルーザーを強襲するブラックホーク(MHかHHあたり?)など見せ場も結構あるんですが、そういう「快感」のツボを押し続けるような作品構成じゃないのがつくづく惜しいですね。これは私が陸の歩兵戦闘シーンにさほど興味がない為かも知れません。
という事で私の本作お勧め度はミリオタでも陸戦に興味がある人にお勧めで、ついで数が多くないヘリや潜水艦シーンに萌えられる人もいいんじゃないでしょうかといったところです。はい。