2011年11月13日日曜日

184110

「司法記者」の推理小説としての瑕疵かどうか問題に関する論考。
読まれていない方で、読もうと思われている方は回避推奨。


ネタバレ警報












この小説、携帯から184110番した事が止めの一撃となって犯人逮捕につながるという筋になっています。
読んだ時思ったのが、110番通報すれば警察の司令センター側は番号から所在地を割り出す仕組みを導入していたよなという事でした。
とすれば、推理小説としては致命的ではないかと思った訳ですが、ちょっと一筋縄ではいかない背景がありました。

発信者番号通知機能と「184」番号付加の関係
携帯電話は通常発信者番号を通知しています。ナンバーディスプレイ等の登場と前後して「184」付加による発信者番号の通知停止機能が追加されています。
これを110番と組み合わせても、当然ながら110番通知されると思っていた訳ですが、実際は半分あたり、半分はずれというのが実態。
警察庁が出している見解では「184110」の場合、発信者番号を取得しないとの事。但し「人の生命、身体、自由又は財産の保護を目的とし、危険が切迫して いると認められ、通報内容から直ちに位置情報を知ることができないとき」は強制的に取得する事があるとの記述になっています。
「携帯電話、IP電 話等からの110番通報に おける位置情報通知システムの運用について」
http://www.npa.go.jp/safetylife/chiiki/hasshinchihyouji.pdf

プライバシーとの折り合い故の結果でしょうけど、「人の生命、身体、自由又は財産の保護を目的とし、危険が切迫して いると認められ、通報内容から直ちに位置情報を知ることができないとき」と誰が決定するのか。そもそも110番が切迫性があって掛けられるものと考えられているところで、基本そのように判断されてしまうのでは?(というかわざわざ184を付加する事が疑わしいと受け取る可能性が高い)

もう1点が警察が110番通報の発信者番号を取得したいと考えた時、いつまで取得出来るのかは公開されていない情報だなと言う事です。キャリア側は課金情報として通話記録をデータとして持っている訳で単に着信した時刻と接続先となった警察司令センターを特定すれば、抽出は時間を要する可能性はあっても出来ない事ではなくなっているところです。発信者番号を接続された時点で特定するか判断しないと後で特定が出来ないという事は技術上はないという結論になります。

「司法記者」はそもそも特捜検察の姿を架空の刑事事案を元に推理小説の体裁で描かれているだけだと思っていますので、推理小説として云々するのはヤボかも知れません。ただ「推理小説」という体裁で出版社を介して送り出された訳で、単に公衆電話から発信された事にすればいい事を個人所有の携帯にしてしまう点が意図的なのかミスだったのかは個人的には興味がありますね。(公衆電話にすると犯人立証がちょっと面倒になる点と今時公衆電話が少ないから!という話があってこうなった可能性はありますね)

追記:自分の携帯を使うなら110番連絡後に指紋を拭い取って水没させて捨てます。その上で犯行時刻より早く「落とした」と届出すれば早々「おまえがやっただろう?」とはならないでしょう。
自分の携帯で身元を辿られたくない通報をやって平気というのが犯罪者心理としてありえるのかなあという点が最大の問題点のように思えて来ました。はい。