2011年12月23日時点で45作見ました。ネタバレもあるのでご注意を。
1:その街のこども 劇場版
NHKの阪神・淡路大震災15周年記念のドラマが映画化されたもの。森山未来さんと佐藤江梨子さんの二人の演技が全てという恐ろしい作り。三宮から灘区方面への往復を実際にロケして撮影されており、神戸っ子にはどこかで見た風景が夜の中に浮かび上がる。神戸の夜景は有名ですが、震災前と記憶がオーバーラップさせやすいのが夜。冒頭、全壊で立て直された阪急三宮駅が出てきますが、そこまで考え尽くして設定されていたとしか思えない。映画とは象徴化の積み重ねだと信じるのでこのような作りの映画は納得だし素晴らしいと思う。
最初は見ず知らずの二人がお互いの過去(というより影)が徐々に明らかになっていく会話劇の構成は圧巻。
本作を1位に挙げるのは筆者が神戸出身だから。思い入れです。
2:アジョシ(2回)
2回見ました。
アクションシーンがどこもリアリティー、説得力があって素晴らしい。2階から脱出するシーンが見事。
主人公が激怒する理由として臓器移植が重大な鍵を握っていますが、このあたりは韓国の倫理観が分からないと理解出来ない所なのだろうかと思ったり。字幕もそこまでケア出来てなかったですしね。。。
3:マネーボール
野球ではなくGMの終わりなき戦いを描いた傑作。
映画化が信じられない。見て驚いたのが原作を良く理解して映像化されている事ですね。
1つ残念なのはドラフトでの候補選手選考基準で「大学出身」重視の話がなかった点。
主人公が大学かプロ野球のどちらを取るのか悩んでいるシーンがあるのにこの点に言及がないのが謎ではありました。
4:大鹿村騒動記(2回)
そんなに出来がいいとは思えないのにまた見たくなる映画。不思議な味わいなんですよね。
脚本はごく普通だと思いますが(それが貴重かもしれないけど)、原田さんの思い入れがなければ成立しないキャスティング、製作陣だったのではないかと。贅沢な映画だと思います。最後の原田さんのシーンに合掌。
5:ザ・タウン
2月19日に見ました。ベン・アフレック監督・主演作。冒頭の強盗シーンのリアルさに痺れました。HDDやケータイの破壊、DNAまで対策した証拠隠滅作の数々。主人公を巡る四面楚歌な状況。刻々と包囲網を狭め人間関係を破壊していくFBI捜査官。最後の攻防戦の異様な緊迫感。ただ主人公があれだけ聡明なのに決定的な打開策をなかなか選ばないのは少し脚本の弱いところだと思います。これほどの作品を撮れる監督だとは……今後要マーク。
6:ソーシャル・ネットワーク
(字幕版)これまでにないリアルなコンピュータ表現はありがちな魔法としての表現を普通のテクニックに変えた。マークがどう思っていたかという謎を主軸にFacebookの胎動と成功を描いた傑作。
(吹替版)字幕だと一部意味を取りかねていた部分(マークのパジャマシーン等)はよく理解出来ました。字幕版も相当頑張っていて、話が複雑(情報量が多い)ところ以外は概ね一致。ただ最後の弁護士の一言はニュアンスが微妙に違っていた気がしますが気のせいでしょうか。
7:マイ・バック・ページ
松山ケンイチの空虚な革命家気取りの詐欺師がある事件を起こして周囲に悪意を発散させる。
それに巻き込まれる週刊誌記者(妻夫木聡)が翻弄される様を描いた作品。
評論家川本三郎氏が実際の体験を同名著書にまとめたものを山下敦弘監督が映画化した作品ですが、一番印象的だったのはタバコシーン。これ、地上波放送局が出資していたら成立しなかっただろうなあと思います。
些末な話はさておき、虚言癖のある人間が為せる悪意を描き切った傑作としてお勧めです。
8:イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ
2部構成でしょうか。冒頭で誰が主人公なのか分からない展開の中、浮かび上がって来たビデオカメラ撮影フェチッシュな人物がある日「芸術」に目覚めたら……。何が真実で何が虚なのか。自宅に帰ってからいろいろググったのですが映画と現実の境界すら曖昧ですね。
Mr.Brainwashが何故映画に出る事を許諾しているのか(あのオチで)などいろいろな見方が出来る。映画が作品ではなく映画を見て観客がどう受け取るかまでが作品として計算されているあたりが面白いところだと思います。
9:ウィンターボーン
アメリカ山岳部で一族の血の結束という内部論理しかない狭い世界を少女が家族を守る為に彷徨する物語。
出てくる女性の強い事。マッチョな女を描いた作品でもあります。これはヒロインの弟が猟でしとめた獲物の解体を嫌がるシーンがある事でよく分かります。
10:電人ザボーガー
一見チープな映像&ストーリーが、何気に原作リスペクト徹底で愛にあふれた作品だったという。
11:HAYABUSA(FOX版)
ストーリーは堤監督ゆえのステレオタイプの連打で打ちのめされるのですが、一方で「完コピ」を目指したというJAXA相模原などの描写は緻密&正確。この後者の出来によってHAYABUSA3作戦争は案外この作品が最上という事になる可能性はありそう。
12:ブラック・スワン
ヒロイン視点の描写が大成功した一作。ある意味この一点推しでの大勝利ですよね。
(見るのが疲れました。。。)
13:ヒアアフター
クリント・イーストウッド監督&スピルバーグがタッグを組んだ作品。テーマはどうみてもスピルバーグが提供していると思います。例によってイーストウッド監督の投影が随所にあります。イタリア料理教室でペアを組んでいる最中に若い女性が遅刻して入ってきますが、そこで「組もうよ」視線を出していた爺さんは明らかに監督、あなたでしょうと思った。(笑)
監督の死生観は仏テレビプロデューサーの「死んだら電気が消えて真っ暗になるだけ」(だったか)が全てじゃないかと見ています。このテーマ、老境に入ったイーストウッド監督なら、と思ったのではないかと思いますが、生きている間は映画と作曲を続けるであろうイーストウッド監督にはおそらく向いていない作品と確信。
スピルバーグが自分で撮っていたら、デイモン扮するサイキッカーは兄の作ったサイキック事務所オープン当日に逃げなかったのではないかと妄想。いや、イーストウッド監督フォロワーとしては見逃しちゃならない作品だと思います。
14:英国王のスピーチ
第二次世界大戦前のエドワード8世の即位と退位、その影で恋に生きる皇太子を兄に持つ弟の苦労とどもりを克服して第2次世界大戦開戦でのライブ中継に望むジョージ6世と支えた言語療法士を描いた作品。アカデミー賞にもエントリーされていますが、英国の話がどの程度受け入れられるかがキーになるかなあと思った。
15:キックアス
ヒットガールのあばれっぷりが爽快。キックアスの恋愛模様はどうみてもおとぎ話ですが。最終決戦は等身大のスーパーヒーローではなくスーパーな何かが出てきたのは残念でした。
16:ダンシング・チャップリン
周防正行監督作品。第2部のバレーを組み立てて行くノンフィクション・ドキュメンタリーシーンが素晴らしい。
第2部に関しては、ローラン・プティ氏とぶつかった野外撮影問題がひっかかるんですよねぇ。
個人的にはプティ氏の主張通りスタジオでも良かったのではないかと思ったりしてます。
17:コクリコ坂より
ストーリー、推進力はしっかりした作品になって良かったですね、という。
ゲト戦記からここまで成長したという事実の方が凄いですね。(というか何故あんな作品を封切れたのかが謎)
18:コンテイジョン
ウィルス・ディザスタームービー。アメリカのこの種の映画としては珍しく世界視点があるのが素晴らしい。
ブロガーが政府を追及して民衆から支持を勝ち取り、保釈料すら簡単にまかなえるという姿は我が国のとある人物をモデルにしているとしか思えませんでした。
19:トゥルー・グリッド (12/24漏れていたので追加)
「勇気ある追跡」リメイク。コーヘン兄弟監督作品。ジェフ・ブリッジス主演。
元気ですよね。次から次へと映画に出ている感じ。(「トロン」続編なんていうキワモノもありますが)
作品自体は地味です。原作にわりと忠実。エンディングも踏襲。
オープニングの街でのやり取りと決戦シーンのアクションが秀逸な映画でした。
ただ夜を疾走するシーンの星空が作り物めいて見えるのは、日本の夜空に慣らされているせいなのか、実際にアメリカの荒野の夜空がああなのかは謎です。個人的にはメルヘンチック過ぎてちょっとひいた所があります。
20:X-MEN First Class(日本タイトル:X-MENファーストジェネレーション)
日本はタイトルカタカナ読みなのに実は違う文字を当てている問題。
CIAなど絡んでいたにも関わらず歴史の表舞台から姿を消した経緯を描いています。
問題は最後の大決戦シーンが今ひとつ説得力がない。
ミサイルが大量に飛び交っていますが、キューバ危機に近い時代だと砲弾の方が主体じゃないのとか。。。
21:モールス(Let me in)
欧州ホラー映画をアメリカを舞台に翻案リメイクされた作品。
22:カンフー・パンダ2
良く出来たCGアニメ。
23:七つまでは神のうち
うー。悪夢を見そうになる見事なツボのつき方がえぐい。という観点で日本ホラーの恐ろしさを思い知られた一作。
24:ミッション:8ミニッツ
ハルヒのエンドレス8のように繰り返される8分間。見えない終了条件。
外部から無限ループを強要されて精神的に疲弊する主人公が何に囚われているのか分からないという悪夢感が最高。
最後、つじつま合ってないのが惜しいですね。
25:スーパー!
現代にキリストが生きていてオタク的な道を歩んでいたら。
エレン・ペイジがかわいそう過ぎだし、作品が描こうとした世界で何故あのような位置付けになるのかは、キリスト教をもっと理解しないと分からない所なんだろうかという。。。
26:一命(3D)
冒頭が辛い。そして2幕目の人としての小さな幸せの為の選択が辛い。
三池監督、是非オリジナルの時代劇を撮って欲しいですね。
27:デュー・デート
とっぴな出来事=謎として提示して話の推進力とした「ハングオーバー」に比べると単なる欧米ドタバタコメディ。
銀行のパートは正直酷い。相手のある事情(というか地雷)を隠しておいて、それを踏まれた事で起きる出来事は演出として愚劣。おそらく狙いがあっての事だと思うけど、その事をあのような形で表現してもつたわらないと思う。
28:猿の惑星/創世記
大脱出シーンまでは傑作。猿のCG表現が素晴らしい。
最後の大決戦シーンが尻つぼみ。エンドロールにいたっては予算足りなかった感が酷過ぎる。
29:ミッションインポッシブル:ゴーストプロトコル
脚本、少々無理な展開有り。力押しで推進するのでその場では何も思わないのですが、振り返ると「?」ですね。
ディーヴァーの小説「007:白紙委任状」でもそうだったのですが、スマフォが重要ツールとして位置付けられていますが、その十徳ナイフ的な描写はあまりに普通過ぎて秘密組織のツールらしからぬ「庶民感」を産み出しているのがなんだかなあと。
タブレット的な何かも出てくる訳ですが「はよ、CG演算させろ!」「うわっ、3G回線と接続しないから無理、無理、無理!」「なんでやねん!」「だってタブレットのCPUでこんな演算無理や、当然クラウドでサーバーにデータ送信して結果だけ戻させてるにきまってるやんか!」でイーサンたちが死地に追い込まれるのであった的な展開をしてくれると「おお、今時のIT技術をわかっている」と感心出来たかも知れません。
なおジェレミー・レナーは「ザ・タウン」で好演していたので期待していましたが、役柄の底がさほど深い役ではないので本領発揮とはいかず残念でした。
追記:核戦争による世界の終末論はほぼ過去の脅威ですよ。リーダーのない非国家組織との「戦争」、原子力発電所の災害に対する脆弱性といったものの脅威の方が遥かに大きいと思うのですが。そういった意味で古臭い時代感覚だなと思った次第。
30:けいおん!
110分で卒業旅行+最後の学校ライブ編は無理がないでしょうか。
作品がもともとゆるさを売りにしていても脚本が緩いのは「ぬるい」としかいいようがないんですが。
31:嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん
ライトノベル原作を映画化。設定やストーリーの一部は映像化に合わせて改変されていますが、原作が過激なので仕方ないところか。(概ね忠実だとは思います)
妙な解釈でSFXが入るシーンがあるのですが、これはマジで止めた方がいいと思う。というか「あんた、バカあ?」と思った。嘘だけど。
殺人関係に対してかなり手厳しい見方をされている有名映画批評の人がいましたが、フィクションで考えられる残虐性はたかが知れていると思う。(現実の方がよほど恐ろしい)
また映画化に際して相当配慮はされていたとは思います。正直かようなツッコミは「バトルロワイヤル」のホラー大賞選評での批判と何ら差はないところで、個人の道徳で映画や原作全てを否定するのは批評としてはどうかと思っています。
32:RED
肩の力の抜けたアクション作品。豪華キャストは確かに見物。脚本がねぇ。。。モーガン・フリーマンの一番いいシーンのあたりがずさん。あとCIAがFBIと仲は良くないだろうし、ましてCIAがFBIを指揮する事は出来ない。そもそもCIAに自国内活動は認められていません。そういうディティールの出来が悪いのが惜しい。このあたりを真面目に凝ればその分もっと面白くなるタイプの作品だと思う。原作(アメコミ)との違いが気になるところです。
33:ハングオーバーII
プログラムピクチャーとしてはいいんだけど。
概ね修復可能な被害を受ける訳ですが、第2作にして修復不能な被害が描かれていてなんだかなあと思った次第。
34:マクロスF恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜
前作よりパワーが落ちた気がする。敵味方の関係がめまぐるしくて、しかも心変わりの理由ははっきり描かれないのですごく受け入れにくい脚本はマイナス。本作を見ていて何故かSTDS9のシスコ司令官を思い出しました。(謎)
35:神様のカルテ
悪くはないと思うのですが、感動の押し売りとか微妙な原作改変(この監督、以前の病院ものでも結構変更勝負に出ていた)があるので、その点が許容出来るかどうかですね。
36:リアル・スティール
ロボットの素性が分からない。また何故ゼウス側がスパーリング機材として買い取ろうとしたのか分からない。
あと父と子の関係性が分からない。何故父が子を認めるようになるのかという描写はありません。
伏線回収しない脚本嫌いなのでこの順位になっちゃいますね。
37:世界侵略:ロサンジェルス決戦
ID4リメイクの間違いじゃないか問題。
軍隊が崩壊したら西部劇ヒーローしか残りませんでしたという展開はアメリカの頭の悪い面を見せつけられた思い。
38:1911
辛亥革命を描いた歴史大作。孫文、黄興が主人公として登場。
ジャッキー・チェン監督・出演な訳ですが、アクションシーンはないなあ、さすがに。
……と思っていたちょうどその時にジャッキー・チェンアクションが見られるあたりが見事な演出だと思います。
39:ある飛空士への追憶
絵は奇麗です。基本原作に忠実です。
原作の科学理解の酷さはこの世界のエネルギーシステムで見て取れます。
水を電気分解して水素を得て発電するのってどうみても無限エネルギーネタだと思うのですが……。
基本、借り物の世界観が多数占めているのでそれを容認出来るかどうかでしょうか。
40:HAYABUSA BACK TO THE EARTH
CGによる探査機はやぶさの物語。感情的な表現が多過ぎるともう。
41:カーズII
いろいろな映画へのリスペクトはありますね。ただそれだけで終わっていると思う。
42:ウォールストリート
マイケル・ダグラス健在。ただそれだけだと思った。二画面表示などは70年〜80年代のTVドラマ(「チャーリーズエンジェル」とか)を思い浮かべたくなるチープな演出。巡り巡って表現が復活する事は確かにありますが、それは新しい何かが入るはずでそういう捻りはなかったと思う。
続編ならではのニヤリは、チャリティーパーティーのシーンでしょうか。
この作品、本来はリーマンショックを背景にした物語として構想されるべき所ですが、リーマンショックは単なるバックグラウンドに過ぎません。リーマンショックが進行する中、ある投資銀行経営者が自殺に追い込まれた元凶は誰なのか、そして復讐出来るのか?という作りになっていますが、こういった部分は非常に軽く描かれています。リーマンショックで言えるのは想像を絶する金額が動く金融という世界は一人の人間が利用しきれるものではないはずなのに、そのような事が出来るように描かれている点。これにより金融というモンスターがある登場人物の悪徳に矮小化されてしまっています。
脚本は根本的なところも問題を抱えており、憎悪などのエモーショナルな表現のきっかけは基本スルーです。おかげで突然怒り出したり、悲しんで見せたりするあたりは非常に恐ろしいです。(笑)
あと復讐手段ですが、どこでどうやって「証拠」を手に入れたのやら問題。……っていうか、手に入れていたのだったらバイクに乗らずにさっさとやっとけYO!って事ですよ。
酷評になりましたが、何か私の見方が間違えているのかなぁ。。。
43:ブリッツ
キャラクター設定はいいのに、脚本がボロボロ。行動原理が見えない映画が如何に気持ち悪いかという。
44:エンジェルウォーズ
監督の趣味全開。最悪なのは人に運命、与えられた役割があるという事が主題になっている点。
そんなものがあるとすれば社会の階層の固定化につながるし、それこそアメリカンドリームの否定じゃないかと思う。
45:モテキ(映画版)
前作で何か得たはずの主人公の経験値がリセットされていたのが残念。
同じ主題でやるなら、ドラマ版自体リセットして原作をそのまま作り直せば良かったのではないでしょうか。
原作者にも監督にも主人公に対する愛がない事が見えてしまった点がダメですね。
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着外:シリアスマン
見終わる前に離脱する羽目に。体調が悪いと見るのがつらい映画でした。。。
着外:ザ・ファイター
ザ・タウンと似たところはありますが、前者はエンターテイメントとして成立しているのに対して、こちらは実話故にハード。血というものを考えさせられましたが、見ておられず離脱。。。