堤監督がメガホンを取ったという事で、戦々恐々で見に行ってきました。
監督の演出力はやっぱり、というのとノンフィクションの力のすごさを見せつけられた作品となりましたが、上映時間の長さ(2時間越え)と初日15時の回にも関わらずガラガラな入りを見ると、興味のある人は早めに行った方が時間も選べていいのではないでしょうか。
まず主人公がめちゃくちゃなんですよね。はっきり言えば変人。理系人間に対する演出関係者の理解の無さはこの主人公に全て集約されています。竹内結子さんが誤った方向ですごく演技努力していますが、すごくエキセントリックで感情移入困難。研究に関してはほとんど描かれず(論文を書くシーンより、「はやぶさくん」を書いているシーンの方が圧倒的に多い)、広報や実験の手伝いが描かれるのみ。はやぶさくんの絵本イラストを書いている人という設定によってはやぶさの独り台詞に違和感がなくせたのはいいアイデアだと思いますが。。。
主人公はまわりの人たちから何の為に研究しているのか問われますが、そもそも研究しているシーンがないので全く説得力がありません。ウーメラのカプセル回収隊光学班に志願する動機=研究に対する情熱的な描かれ方になっていますが、そのような意図がある描写があるだけで実は全くつながりはありません。
堤監督は理系の人やオタクの人はもっと観察された方が良いですね。理解がないのにカリカチュアしても奇妙な演出になるだけです。(出来ないならそのような要素は入れなきゃいいのに。。。)
登場人物達が何をしている人なのか、宇宙研はどのような組織なのかという点の描写はさほど多くはありません。私は宇宙研の話は好きでいろいろ本を読んで知っているので気になりませんでしたが、何故NECや富士通の人たちがいるのか分からないと思います。
例によって関係ない第三者、はやぶさを見守る国民代表が数組出て来ます。何組かははやぶさの動向が人生に投影されています。邦画でありがちな表現方法。言い方を変えれば安易。時間経過表現として入れたいのは分かりますが、その数組を同時系列で何をしていたか描写するようなやり方は必要ないですね。その人たちを交互に出せば時間の流れとしては充分。こういった点が本作を2時間越えにしてしまった問題点だと思います。
とまあ、このあたりはいつもの堤監督作品の(悪い意味での)鉄板演出ですね。
演出面で評価出来る点は、冒頭と最後の講演が実はあるテーマでつながっているところ(そのテーマは作中でも数回は出て来る)じゃないでしょうか。
この作品の最大の評価点はノンフィクションの部分に忠実だった点にあります。はやぶさの場合、イトカワの自画影像はエポックメーキングな写真として語り継がれるものと考えているのですが、本作でもそういったシーンが入っています。打ち上げから帰還までイベントの取捨選択は納得出来るもので素晴らしい出来だと思います。
ミネルバのシーンが割愛されていたのは残念ですが、でなくても2時間越えという昨今の映画ではかなりリスクがある上映時間になっていた訳で仕方ない所だとは思います。
通して感じるのはノンフィクションであるはやぶさの物語が下手な小説よりはるかに一大スペクタクルであった事と、その事がフィクションパートの出来に関係なく映画全体を牽引しうるものであったという事ですね。
はやぶさに興味がある人にお勧めできる一本です。
#11月13日追記:渡辺謙版の予告を見ました。今の所、堤監督版が優勢。完コピ方針が高い評価につながりそうな予感がしてきました。。。