2010年4月18日日曜日

第9地区

4月10日(土)公開初日の最終レイトショーで見てきました。
タイトル、昔のSF映画ノリを狙っているんでしょうか。今時なら普通「ディストリクト9」と付けたと思いますが……まぁ、直訳だからいいのか?
以下、ネタバレもあるので、


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エイリアン棄民という設定、過去に『エイリアン・ネーション』があります。似ていると思うのですがストーリーは全くの想定外。お決まりパターンの面はあるんですが、よく言う「斜め左上を行く」展開でうまく想像を裏切ってくれています。

まぁ、脚本は乱暴なところは乱暴です。謎の「液体」の化学的整合性がさっぱり?なところがありますし、「なんであれで飛べるの?」とか、そもそもあれが長らく放置プレイって、悪魔的国際企業とか謎の世界連合UIO(だったと記憶)ってそんなに抜けているのかとか……このあたり、ちょっと説得力に疑問を感じたところはあります。
この他に警察や国際企業に追われてしまった登場人物のケータイに家族がTELしてくるシーンがあります。「登場人物がケータイの電源入れっぱなしっていくらでも捕捉可能じゃん、なんで通話をまって逆探なんてしているの?」と頭の中は「?」が乱舞。ケータイはひったくって手に入れた代物なので番号が……ってそれも家族のケータイの着信履歴を確認すれば分かるよな……今時ケータイに電源が入っていればどの基地局経由かぐらいは探知されるのは常識だと思っていましたが、この脚本家はそうは思っていないようで残念。ストーリー展開に重大な影響を与える描写なのに、都合が良すぎます。
と突っ込みどころは満載です。

ただ、この映画のすごいところは、怒濤のストーリー展開で話を転がして行くスピード感とパワー。ともかく話はどんどん進み、余計なシーンはありません。
音楽も南ア的なコーラスと重厚なオケ(エンドロールを見ていたらプラハのオケでした)の融合で迫力ばっちり。

最初、誰が主人公だろうと思いながら見ていたんですよね。ストーリー軸も最初は過去のニュースやインタビュー映像の積み重ねで徐々に浮かび上がらせる手法なので、なかなか主人公が見えてこない仕掛け。あるところで非常に分かりやすい伏線シーンがあり、そこで視点が主人公にかわって話が進み始めます。このあたりの展開は、最近多くなってきたフェイク・ドキュメンタリー形式ながら上手いですね。
国際企業の南ア代表者の描写ですが、残虐性の伏線が1回だけなのが残念。身内に優しいようで実はそうではない事はもう少し暗示するシーンが冒頭にあっても良い気がします。主人公視点に移ってからそのような描写が入るので少々唐突感は否めません。

主人公、ともかく身勝手。冒頭の取材カメラ視点では威張り散らすいやな文官指揮官。都合が悪いシーンはすぐ「撮影するな」と怒鳴る。故に主人公となかなか気付かずストーリーは展開。この身勝手さは後半でも思いっきり威力を発揮。このあたりはやっぱり脚本が乱暴な気がします。
南アのアパルトヘイトを下敷きに、<エビ>型異星人が差別される世界を構築していますが、本作中だけだと活かされているのはその点だけのように見えます。(タマフルのシネマハスラーではニュース映像から主人公視点にシフトする際に差別する側から差別される側になるという描写があるとの論評。確かにその通りでした。。。)
さて、この伏線って回収されるんでしょうか。
最後は怒濤のバトルシーンが展開。いや、アンチマテリアルライフルとか異星人のパワードスーツとかなかなか燃える展開で納得でありました。

最後のシーンを考えると続編の可能性が残されています。もし続編が作られた場合、この脚本の水準で面白く伏線回収出来るのかが非常に興味があります。