2017年6月1日木曜日

映画 Arrival 用語集(邦題「メッセージ」)

ネタバレ全開ですので映画をご覧になった方のみどうぞ。




ルイーズ・バンクス博士:言語学者。マンダリン、ポルトガル語など多言語に通じていて、またその背景まで分析して理解する能力を持つ。2年前には軍の仕事(ペルシャ語翻訳。中東?の反乱絡みらしい)も引き受けており、国防総省の統合人事クリアランスシステム JPAS で TS/SSBI(=TOP SECRET/Single Scope Background Investigations。詳細はこちらの197ページ参照)の資格を有していた事からウェバー大佐がヘプタポッド研究チームにリクルートしに訪問する事になった。(脚本を見ると大佐は当初リモートでしか参加させる気がなかったらしい)

彼女の手グセは少し悪いかもしれない。最初に持ち込んだホワイトボードの出元はちゃんと描かれてます。(あそこの字幕はない方がよかったのでは?)

イアン・ドネリー博士:理論物理学者。当初は言語より科学の優位性を説いていたが、すぐバンクス博士の能力に心酔して彼女をサポートするようになる。ある数字を割り出すなど独自の洞察力も見せている。

G.T.ウェバー大佐:戦時従軍部隊章として第101空挺師団、部隊章として第2歩兵師団、大佐の階級章と複数(3個?)の特技バッジと「RANGER」記章を着用している。経験豊富な戦闘部隊指揮官らしく国防長官から直接指示を受けている様子も描かれていて政治案件への耐性、能力も高いと思われる。現代の米軍は将官級の戦域指揮官だと外交センスやホワイトハウス、国防長官に代表される国防総省、統合参謀本部との調整能力が問われる。作中、国防長官からウェバーに電話が入っており、このような上層部との圧力、軋轢の存在を感じさせる描写になっている。

彼がフレームに入ってくる時、大半は正面か右側からしか撮られてないため彼の第2歩兵師団記章を見るのは大変な幸運と言われている。(後段の部分はジョークです)

彼はルイーズとイアンに対して厳しく接している。ただ、それはおそらく私見を挟む事が出来ない立場からくるものじゃないかというのが筆者の感想。信じてないように見えて二人に全幅の信頼を置いている。でないとルイーズたちがCBRスーツを脱ぐなんて事を"Take a risk."という認識の元に認める事は出来なかったはず。あのシーンで動揺したマークス大尉との大きな差にもなっていて後々響いてくる。

マークス大尉:戦時従軍部隊章として第101空挺師団、部隊章として第2歩兵師団、大尉の階級章を着用していて特技バッチは付けていない。環境チームの指揮官・カメラ担当。
セッション当初から不安を隠しきれてない。そして兵士の動揺が伝搬したのか勝手にC-4爆薬を持ち出しヘプタポッドの船に仕掛けてウェバー大佐が差し向けたセキュリティチーム(SUVが5輌も急行した)と交戦する事になった。彼らは威嚇射撃を考えていたが撃たれたセキュリティチームがそういう茶番を受け入れるかは別問題。彼らがどうなったかは劇中では描かれていない。

シャン将軍:日本語字幕では「上将」(大将相当)と訳されていた。肩章を見ると星2つなので中将のはず。ただ劇中のニュース番組ではChairman of  PLAとなっていたが、それだと党の軍隊なので晋主席その人になってしまう。
陸軍司令員(司令官/Army Commander)や総参謀長(Chiefs of General Staff)は上将ポストなのでそちらに合わせたのかもしれない。あとは何らかの理由で中将が就任しているような状況を考えざるを得ない。

アメリカは彼のコールサイン(コードネーム)として Big Domino を割り当てている。これはロシアなど数カ国が彼の打つ手に注目して、彼らが中国の後に続くと予想をしている。その中国での中心人物として見ている事は作中でも語られている。

人民解放軍は本質的に党の軍隊であり政治委員も設置されている。その観点で言えば、シャンの一存で何か決めることは不可能で本来は党主席級の人物を当てる必要があるのではないか。映画としてバランスを取るためにウェバー大佐と同等のヘプタポッド・サイトの司令官としての位置付けに意図的にズラしたのではないかというのが筆者の推測である。

何故ルイーズがシャン将軍の通話盗聴の翻訳で呼ばれたのか:ルイーズが北京語(マンダリン)の通訳で呼ばれた時、大型ディスプレイにはシャン将軍の通話盗聴データが写っていた。そして左側では偵察衛星写真の時系列変化チェックが行われており、戦闘機のフライトラインが形成されているのが確認されていた。(あの段階で戦力増強が起きていた)

ベースキャンプには世界各地のサイトやそれ以外の各国と情報交換を行うためのセンターが開設されており討議など行われていたので、北京語が翻訳できなかった訳ではなく、シャン将軍が何を言っているのか不可解な内容だったのでウェバー大佐は洞察力の塊のようなルイーズに頼ったというのがあの流れだったのだろう。


歩兵第2師団モンタナ・サイトに派遣されていた部隊。部隊章には星にアメリカ大陸先住民をシンボル化したものを使用。現実には大半の部隊が韓国に駐留している。シアトル近郊に駐留していた部隊は第7師団に配属変えされていて、そちらを想定しているのかなとは筆者の想像。

ACU:Army Combat Uniformの略称。陸軍戦闘服。右上腕部に国旗(体正面方向に星が並んだワッペンを使うことが決められている)、戦時従軍部隊章(国防長官が認定した戦争・災害派遣時に所属した部隊章を付けられる)、左上腕部に所属部隊章の他にタブにRANGER、SPECIAL FORCEなどの記章を付けられる。(ウェバー大佐が「RANGER」記章を付けている)
ボタン中央位置には階級章、左胸には「U.S.ARMY」と特技バッジを付ける。右胸にはネームタグを付けると定められている。(実際の記章・バッジ取り付け位置の説明はWikipediaに図が載っているので参照されたい
モンタナ・サイトの陸軍キャンプの他の将兵の右上腕部を見ると部隊章がある人とない人に分かれている。これにより実戦従軍経験者か識別が可能。

コンタクトチーム:科学者2名、環境担当3名(カメラ、機器モニタリング、昇降機操作・空気環境監視(左腕に小型タブレット装着))からなる。最初はウェバー大佐も加わっていて6名だったが、後方の指揮所からの指揮を執るようになり5名体制になった。
コールサインは「コンドル」=指揮所?、「アルファ」=コンタクトチームまたは環境担当の事を指していると推定される。

小型タブレットはMEMS(微細機械)センサーによる重力検知による自動画面回転をサポートしているものを使っている。サイリウム以外でもあの現象を表現する工夫がなされている。

フルHAZMATスーツ:オレンジ色のCBR(化学・生物・放射線)防護服。ヘプタポッド船内での各種汚染物質との接触を避けるためコンタクトチームに与えられていた防護服。ルイーズはフェイスカバーで表情が見えにくい事に気づき、カナリアが無事なら大丈夫と脱ぎ捨て、イアンもこれも続いた。(マークス大尉らは一貫して着続けている)

地上支援要員はグリーン色の防護服を着ているが、オレンジの防護服に比べて簡易型だと思われる。

セッション:ヘプタポッドとの交渉の事。18時間間隔で37回行われたらしい。ルイーズらの1回目のセッションは朝、2回目が夕暮れ直後に行われている。(DAY4〜5らしい)
3回目が山岳夏時刻16時だったので、
1回目:4時/2回目:22時/3回目:16時/4回目:10時(以下、このサイクル)になっていると思われるが、モンタナ州の夏場の日の出/日の入りは日の出5時30分頃、日没21時過ぎなので1回目はまだ夜になりかねず何かずれか間違いがあると思われる。

ルイーズの前任者(ウォーカー博士)が1〜3回程度セッションを実施しているように見受けられるが詳細は不明。ただルイーズらのセッション到着時には置かれていた。
イアンは二人だけで向かった37回目のセッションを36パート2と呼んでいた。(ルイーズ単独のヘプタボット環境内での交渉を含めると38回)
「船」の出入り口が開き2時間ほどで無重力エリアまで排出される事はオーストラリア(インド洋・サイト)が最初に把握していた。
ルイーズが最初にヘプタボットB文字を引き出し、発音言語とヘプタボットBが全く関係していない事を突き止めて語彙を教えあう対話が始まった。
パキスタン・サイトは文字に時制がない事を発見している。
英国サイトはヘプタボットの数学知識について、代数は理解してないのに素数は理解しているというギャップがある事を突き止めていて、人類と科学基盤が異なる文明である事を発見している。

モンタナ・サイトのベースキャンプ:陸軍とCIAが仕切っている。指揮所(または通信センター)は「コンドル」、外部の環境要員らは「アルファ」+番号のコールサインを使用。長期の交渉になった結果、テントの仮設施設から仮設プレハブなども混じった基地に拡大され、戦闘ヘリなども配備されていたように見える。のちにM1戦車も登場しており、それなりに戦力を用意していた事が分かる。

人民解放軍:上海サイトの監視に当たっていた中国軍の部隊主力は海軍部隊だった。映画では米海軍ストックビデオをいじって中国海軍艦艇として見せている。ヘリ・VSTOL機運用能力を持つLHAクラスの揚陸艦では甲板にJ-20戦闘機の機影が見えているがF-22相当の機材なのでありえない組み合わせではある。

宣戦布告に及ぼうとしていた際に3〜4連装ミサイル発射機を積んだ駆逐艦が出てくるが、ロシアから購入した艦艇に見えるが、描かれているミサイル発射機は実際は単装であり、ソヴレンヌイ級ミサイル駆逐艦を元にCGIで作った架空の艦だと思われる。

この他、Z-10対戦車ヘリらしき機影も一瞬登場している。(上空でHUDにヘプタポッドの船を捉えているカット直後に後方から撮った機影が出てくる)

UH-60ブラックホーク:メインローター1基の中型輸送ヘリ。映画ではメド・バッグに格納された傷病者の搬送で飛来していたらしい描写が入っている。(あのバッグに入っていたのが精神的に耐えられなかったというウォーカー博士の可能性はありそう)
この様子を見てルイーズは何事と後で質問している。

CH-47チヌーク:メインローターを2基持つ大型輸送ヘリ。映画ではモンタナ・サイトのキャンプ設営の物資搬送で複数機が頻繁に離発着を繰り返しているシーンが入っている。

SKYJACK SJ7135RT:荒地対応のリフト車。実在。10m程度までリフトアップ出来る。映画だともっと伸びているような気がしますがそういう設定なのでしょう。