2016年2月8日月曜日

[映画] V8,V8,V8 ! 「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」(原題:Mad Max Fury Road)

最終的に17回見ました。(2D字幕*11(極上爆音*1含む)、IMAX3D字幕、4DX吹替、4DX字幕、3D DOLBY ATMOS*3)

祝!2016年リバイバル上映。IMAXやDOLBY ATMOS、4DXの上映もあります。
詳しくはこちらへ。

以下、ネタバレに該当する部分も含まれるので、念のため行を開けておきます。
見れば見る程、奥行きのある物語でいろいろと調べたくなってしまい、まとめてみました。なお世界観、設定については推測によるものもあります。








(改版情報)
2015/8/5 Warlord/Warlord Jr.、She's ours !、I’ll pike her in the spine, keep her breathing for you. 、Tree / Tree thingsについて記述追加。「2. 「妻たち」の呼び方から見えてくる物語」で妻たちの呼び方についてその単語を誰が使っているのか説明を追加。
2015/8/3 Is that just the wind, or is that a furious vexation?、Green place of many mothers、McFeasting、It was poisoned. It was sour.、Bullet Farm/Farmer について記述追加。
2015/7/29 History Woman/Man、Organic Mechanic、Cog Fodder、The Wretchedについて記述追加。
2015/7/22 第1版公開


1. シンプルなストーリー、奥行きのある物語構造と登場人物たち
 最初見た時は、行って戻る物語でシンプルなストーリーだけど、何故登場人物がそういう選択するのか分からない人(ニュークスが立場を変えたのはフラフラしていただけのようにも見えた)や一瞬中身のないマクガフィンだと思ってしまった「妻」たちの描写があったとは言え、それだけじゃないぞと思ったのですが、まだこの段階ではまだそこまで気に入っていたかと言えば、何か植え付けられた印象はあっても意識は出来ていなかった。

 2回目IMAX3Dで見た時、最初の印象がぬぐい去られた。ニュークスが立場を変えたのはあるきっかけとその後の成長で憑き物が落ちた事が分かる展開になっている。(槍手との対比も上手い)
一見何も考えてないステレオタイプな女性像を具現化したように見える「妻」たちも一人一人が強い個性を持ち、これまでのイモータン・ジョーから虐げられた事の影響とそこからの脱出の意思が描かれている。

 この映画、導入部こそマックスの独白と脳内で響いているであろう過去の記憶、亡霊たちの声なのですが(石油戦争、水戦争、核戦争があった事が示される)、フュリオサの首筋のイモータン・ジョーの所有を示す焼印がスクリーンに出た瞬間から彼女の物語に転換され神話の始まりへと繋がっていく。

2. 「妻たち」の呼び方から見えてくる物語
 イモータン・ジョーの妻たちはまだ人間らしい「Wives」という呼び方の他に「Breeders」(繁殖家畜の意)、「Tresures」(宝物)、「Assets」「Property」(資産、財産)と呼ばれていて、決して人扱いされていない。またその事は彼女ら自身が認識していて「Things」(物)という言い方も繰り返し使われている。
 またこれらの単語は人によって異なる。例えば「Property」「Assets」はイモータン・ジョーらWarlord階級の間でのみ使われている。そのイモータンがニュークスと話す際は「Tresures」といって話をしており、あの世界における階級社会がどのようなものか分かるようになっている。

 彼女たちが中身のないマクガフィンではない事はそれぞれに特徴ある名前がついている事でわかる。面白い事に必ずしも台詞では使われないあだ名がついている人もいる。(トーストは「Toast the knowing」と呼ばれるシーンはない。逆にフラジールは「Cheedo」とも呼ばれるシーンがある。)

 妻たちの名前を列挙してみた。意味についても調べてますが、スラング由来も多く正しくない解釈があるかもしれない点はご容赦下さい。
  • Splendid Angharad:Splendid=「華麗な」「輝かしい」、
    Angharad=姓か名前?
  • Capable:「有能」「能力のある」
  • Toast the knowing:Toast=「ヤバい」「終わっている」(スラング)、Knowing=「聡明」「物知り」
  • The Dag:「変わり者、ダサい人」(豪のスラング?)
  • Cheedo the Fragile:Cheedo=「クール」(スペイン語のスラング?)、
    Fragile=「壊れやすい、儚い」

3. 不憫なウォー・ボーイズとイモータン・ジョーの関係 Highway of Valharra
 イモータン・ジョーは彼らの事を「俺の半分の寿命しかないウォー・ボーイたち」と呼んでいる。実際、ニュークスは左肩に大きな瘤(腫瘍か?)が2つ出来ており(自分の仲間、ラリーとバリーと呼んでいる)、気管を圧迫して息が止まりそうになるとケイパブルに告白している。

 イモータン・ジョーは彼らをコントロールするのに、勇敢に死ねばヴァルハラのハイウェイに向かい入れられ再び生きる事ができると教えている。その死に意味を持たせるため、目撃される事(マックスのシタデル内での逃走劇で墜落死したウォー・ボーイも「Witness me」と叫んでいる)、目撃してあげる事(モロソフの特攻後「Witness him」が叫ばれた)というのは極めて重要視されている。
イモータン・ジョーがどのようにヴァルハラへ彼らを向かい入れるか描写はありませんが、目撃して生き延びたウォー・ボーイがImperatorを通じて報告するような仕組みがあるのではないだろうか。
 この仕組みは軍隊が戦死者を英雄として位置付ける仕組みと重なる。宗教性が高ければ「Witness」を必要としない。なぜなら神は見ていて当然の事で他者の目撃を求める事はない。あくまでウォー・ボーイズが勇敢に死ぬ事を後押しするための仕組みであり、またそのように死んだウォー・ボーイはイモータン・ジョーと仲間たちから忘れられないという建前が「Highway of Valharra」という虚構になっているのだと思う。

 なお銀色スプレーはV8エンジンを信奉するあまりに妻たちを目の当たりにしたニュークスがつい「So chrome」と言ってしまうあたりから、ヴァルハラに向かうに際して銀色で自らを清める意味合いがありそう。(魂が口から出て行くからスプレー説を教えていただいたフォロワーの方もいらっしゃいます。こちらも有力説だと思います)

4. ウォー・ボーイズたちの中から浮かび上がって個性を確立していくニュークス
 ニュークスはマックスに絡む形で最初から最後まで出てくる魅力的なキャラクターですが、登場当初は典型的なウォー・ボーイズとして描かれる。ただその中でも砂嵐会戦で右前輪バースト状態でも果敢なドライビング・テクニックを見せつける。(右前輪バースト後、スリットに指示して前輪に荷重を掛ける原因となっていたマックスを背後に移動させて、なおそのまま追跡を続行。味方車両が砂嵐とフュリオサの果敢な体当たり攻撃に吹き飛ばされる中で最後の一台となって追いすがった)
 砂嵐後、フュリオサと妻たち、マックスの間の抗争(フュリオサが本気でマックスを殺しに掛かっているにもかかわらず本作屈指のコメディシーンにも見える)で、気絶している中で引きずり回されて気がつくと敵=フュリオサと戦うマックスは味方論理で勝手に組して結局マックスの強烈な蹴りを受けて一時身動きできなくなる。
 マックスを含めて全員敵と理解した上でウォー・リグに潜入した際はケイパブルらに罵倒されて放り出される。そしてイモータン・ジョーの部隊に拾われると再度潜り込もうとして爆笑な展開に陥り、イモータン・ジョーから「凡人がっ」と吐き捨てられる。
 ケイパブルとの頭ゴンゴンからシャークティース風の唇を触れられるシーンは本作最大のロマンスシーンだと思います。

5. イモータン・ジョーの軍隊の指揮序列と民衆の関係
  • Warlord:軍閥の将軍、司令官。イモータン・ジョー、ビュレット・ファーマー、ピープル・イーターが該当。BuzzardやRock Ridersも同様の人物がいると思われるが出てきてない。
  • Warlord Junior:イモータン・ジョーの息子。リクタス・エレクタス、コーパス・コロッサス。軍隊指揮系統の位置付け、アクセサリーからは識別しにくいが二人とも鼻に呼吸補助用のチューブを挿していて特別な便宜を享受する立場にある事が分かる。
  • Prime Imperator/Imperator:額を黒く塗っている。また黒マフラーを首に巻いている。Primeと平のImperatorの識別点は不明。コンボイ指揮官やWarlordの参謀など指揮系統上部に位置する。
  • War Boys:Warlordの軍隊の兵士。ドライバー、ランサー、フレーマー、ポールキャット、音楽隊(ギターリスト、ドラマー)等の職種に分かれていると思われる。職制上、指揮権を持っているのはドライバーで船で言えば船長に近い役割とみなされているのではないか。というのはイモータン・ジョーやフュリオサが自ら運転している所から考え付く仮説です。(ビュレット・ファーマーやピープル・イーターは部下に運転させているので一概には言えない)
     音楽隊についてはウォー・リグがシタデル目指して引き返してきた際にドーフ・ウォーリアがギターをかき鳴らして緊急出撃を知らせる役を果たしていますので普通に軍楽隊相当の存在と見ていいでしょう。火炎放射器装備とすごく特殊ではありますが。。。
     フュリオサのコンボイ隊には副長格のThe Aceが配置されており、フュリオサが急に東に進路を変えた際にも理由確認に来て、命令を部下たちに伝えて徹底している。Imperatorという指揮官階級の存在やこのやりとりから見て、War Boysが軍事機構として指揮命令系をきちんと持っているのは明らか。
     彼らが身につけているアクセサリー類はImperatorと比べると少ない。その分を体を「改造」して個性を表しているように思える。
  • War Pups:War Boys 候補の少年。シタデルでイモータン・ジョーの従兵やエレベーターを動かす際のドラムを担当している姿が出てくる。
  • History Woman/Man:Word Burgersという異名もあるらしい。Miss Giddyは全身に歴史の入れ墨を施して知識を伝承していて、妻たちにその知識を教えていると思われる。(ピアノや書籍の山もこの点を補強)
  • Organic Mechanic:医師(ドクター)のはずですが、この世界では人の治療=車の治療に例えており(この点はV8 Valharra教の教えと重なるようにも思える)、医師も「生体メカニック」という肩書きとなっている。
  • 警備兵:エレベーターの警備やそのエレベーターの上下降を人力で行っている「奴隷」を管理を行っている兵士。フルフェイスのマスクを付けて身元が分からないようにしており「奴隷」階層から抜擢した人材の可能性もある。人数は多くないようでフュリオサたちが帰還時の反応検討した際もあまり考慮されていなかった。
    ※Blu-ray予告編では Cog Fodderと呼ばれている。直訳的には「歯車を守る消耗品扱いの兵士」ぐらいの意味でしょうか。ただこれは次の「奴隷」も含んでいる可能性があります。
  • 奴隷:シタデル高層でエレベーターを人力で動かしている人たち。シタデルに入れない人々と変わりない民衆層に見える。この他に農業も行っておりこういった労務を彼らで賄っている可能性があるが、作中ではエレベーター以外の労務は出てこない。
    ※最後のシーンではブレーキに注目。エレベータのブレーキを最初に解除しようとしたのはWar Pupsではない事が分かる。ジョージ・ミラー監督の素晴らしい目配せ。
  • The Wretched 民衆:シタデルに入れてもらえない人々。シタデルの3つの山の周りに住んでおり、一人だけ入れるような日よけと水を受ける容器を持っている。若年層は皆無に近く、そういう「将来」嘱望されるような子供はWar Pupsとしてシタデルに収容されているのではないか。(なおWretchedには「哀れな」といった意味があります)
6. "AQUA COLA" IS IMOTAN JOE REGISTERD BRAND.
 作中登場する名詞で興味深いのは「Water」の別表現として「Aqua Cola」が使われている事。これは冒頭のフュリオサを隊長とするコンボイ出撃のウォー・ボーイズのコール&レスポンスの中で「Aqua Colaを運ぶ」というくだりが出てくる。
 この単語の意味する所は塩湖を渡ろうとしたフュリオサたちをマックスが止めて城塞(字幕では「砦」。台詞としてはCitadel=城、城塞などの意。砦=出城という意味合いもあるので城、城塞の方が意味的には適切か)に戻る事を提案した際に、トーストが城塞で地下水を組み上げており、その水を「Aqua Cola」と呼んでいる事やイモータン・ジョーが管理して全ての所有権を主張している事を説明している。水ももはやイモータン・ジョーのブランドな訳ですね。種の守り手が「私は彼(イモータン・ジョー)を好きになれないわね」という訳です。

 実際のところ、水の潤沢さはどうかというと、まず妻たちは水の利用についてあまり頓着しません。だから砂漠の真ん中だというのにポンプを回してタンクの水をふんだんに使って洗うという贅沢もやってのけている。またマックスがシタデル内で逃亡企てた際に水を湛えたピットに落ちるシーンもありますが、こういった事を考えるとシタデル内部の水利用はかなり緩い可能性があります。その一方でシタデル外の民衆への水の「配給」は十数秒と厳格でむしろなぜ配給をきちんと行っているのか。その理由は解き明かすヒントはないように見えます。強いて挙げれば「奴隷」供給源ぐらいでしょうか。

7. 災難なBuzzards と Rock Rider
 Buzzardsはフュリオサのコンボイが強行突破しなければ戦いに入る事はなかった。彼らからしてみたら自衛の戦いであげくにイモータン・ジョーの部隊の追跡先行部隊とも交戦する羽目に陥っている。
 Rock Ridersは約束の燃料をフュリオサが置いていかないので、当然のごとく契約履行を求めて追跡。結局燃料ポッドがRock Ridersの最後の攻撃の余波で爆発してしまい、そこで追跡終了。マックスとフュリオサらが引き返してきた第二次峡谷会戦ではその姿が出てきても戦いには参加していない。彼らは戦いの後、ウォーボーイズ残党を攻撃した可能性がありそう。
 なお峡谷の峠の「門」には錆びた車のスクラップが山積み。Rock Ridersは普段はあそこで不意打ち仕掛けているのだろうと思われる。(ひょっとしたら、通行料をとるだけで、払えない人達だけそういう目にあっている可能性はある)

8. 「160日間」の謎
 フュリオサは当初塩しかない砂漠を越えてみると言う。バイクで平均時速50kmで1日8時間走ると160日で6万4000km走る事になります。平均時速30kmに下げても3万8400km。この数字の大きさ不思議に思ったのですが、塩の砂漠=昔の海だとしたら、この数字は正しいし、マックスが160日間走っても砂漠しかないだろうという指摘はもっともな事です。

9. 物語る人の存在仮説
 本作の神話構造はよく指摘されているところですが、同時進行と俯瞰視点が特徴としてあると思う。例えばイモータン・ジョーがDoof Wagonなどの部隊を率いて出撃した際、ビュレット・ファームとガス・タウンに応援を求める信号弾を立て続けに打ち上げるが、この時は砂漠上空の俯瞰カットになっている。そして4発目が発射されたところでカットがフュリオサらのウォー・リグに変わって4発目の信号弾が空中で爆発したのが見える。
戦闘シーンでもそれぞれが戦いを繰り広げており、第二次峡谷会戦だとVuvaliniの婆ちゃんたちがライフルぶっ放したりしている。焦点のあっていない背景描写も見逃せない。

 第二次峡谷会戦でのニュークスが峠でウォー・リグを横転させて後続のドーフ・ワゴンもろとも崖崩れが引き起こされるシーン。最後にウォー・リグのハンドルが飛んでくるが大変わざとらしい描写として仕上げられている。このような演出は本作全体をこの世界の未来から誰かの口で語られているものだとしたら大変しっくりくるように思えますがどうでしょう?「妻たち」の使われないあだ名があるのも腑に落ちます。

この物語る人はおそらく最後にテロップで言葉を残している人物なのだろうと思います。そしてその人物はMiss Giddyの後継者という事になりそうです。

10. ミュージカル映画としての音楽
 本作の音楽は徹底的に絵に合わせてきている。象徴的なのが砂嵐の後、マックスがウォー・リグに辿り着く直前に掛かる Water 。フュリオサのエアフィルターの砂を払う打撃音とドラムがシンクロしています。こういう作曲は映像に合わせて作り込まないと出来ません。またイモータン・ジョーの追撃隊出撃前のニュークスとスリットのやりとりで掛かる Blood Bag も場面に音楽を明確に当ててきてますね。
 本作では画面転換でしばしば暗転が入りますが、楽曲もそこで切り替えており映像に音楽を合わせ、かつ大半のシーンで音楽が鳴り響き続ける作りを選択すれば当然の帰結です。

 そのように作られた音楽は弦楽(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)主体にホルン主体(他にバゾン、クラリネット、イングリッシュホルン/オーボエ、バスクラリネット)の管楽器が支える構造になっていてオーケストレーションは手堅くできています。そしてその上に作曲家自らギターやドラム、シンセサイザーを重ね、更にはコーラス隊も使うというかなり贅沢な音楽が実現されてます。

 オリジナル・サウンド・トラック、デラックスバージョンは総演奏時間2時間6分。映画を振り返るのに大変素晴らしいアルバムに仕上がっていておすすめです。

11. 字幕について (また気になったところは適宜追加します)
 固有名詞の選択含めてかなり「ヒャッハー」な方向で翻訳されています。意味が変わっている部分もあったので、英語台詞文字起こしページを元に調べてみました。

  • Valharra 字幕では「英雄の館」となっていますが、イモータン・ジョーの「教養」を吹き飛ばす行為でどうなのかなと。普通にヴァルハラで通じると思いますが。。。
  • Warlord / Warload Jr. 字幕では「悪魔」「悪魔の子」。直訳では「軍閥将軍」「軍閥将軍の子」ぐらいの意味でしょうか。ここは意味改変してしまっている部分。
    なおDevil、Diabloといった「悪魔」を連想する単語は台詞で使われてません。
  • Fang it ! フュリオサもBuzzards戦闘突入を決断した際、またスリットが砂嵐突入前のウォー・リグ追撃中に叫んでいる。字幕では「殺せ!」実際の意味は豪スラングで「飛ばせ!」「フルスロットル」「アクセル全開!」の意味。アルゼンチンのF1パイロットの姓 Fangio を縮めたもので「牙」の意味ではない。
  • She's ours ! ニュークス・カーがウォー・リグに追いついた際にニュークスがスリットに呼びかけた台詞。字幕は忘れたましたが「彼女(フュリオサ)は俺たちのものだ!」とはなってなかったはず。
  • Mediocre 悪い意味合いで「平凡」。スリットがモロソフの特攻を表してと連呼。字幕だと「よく死んだ」と出ているあたり。他のボーイたちは Witness を連呼している。ニュークスがイモータン・ジョー様に見られた!と大喜びしている時にあくまで「地平線だろ」「血液バッグだろ」とひねくれた事を言ってのけるスリットなので、モロソフの特攻を単に「目撃した!」とだけ祝福なんてする訳がなかった。(そんな彼が散った時「Valharra!」と叫んでいたのが印象的)
     また、第一次峡谷会戦のイモータン・ジョーの追撃でニュークスがウォー・リグへ潜入を失敗した所でも一言この言葉を吐いている。
  • Decapito 砂嵐突入前にマックスを車体前部から外して後ろに移動させた際のスリットがマックスに「頭とお別れしな、首!」と言った際に出てくる。この単語そのものはないのですがスペイン語で"Decapitar”が斬るという意味なので、まあ、そういう事ですね。(字幕だと「あばよ、死ね」に大幅短縮だったと記憶)
  • Is that just the wind, or is that a furious vexation? ダグが地平線のイモータン・ジョーの車両群を見ての台詞「あれは蜃気楼?〜」といった字幕ですが、直訳だと「あれは風?それとも激烈な憤懣?」という風な訳文当てられるかなと。いずれにせよダグがちょっと他の視点が異なる(操る単語数も多い?)ように見える部分という側面はあると思う。(なお「Mirage」(蜃気楼)という単語は台詞では出てきません)
  • So Shiny, So Chrome ニュークスが妻たちを見た際に字幕では「キラキラ」となっていた部分。V8 Highway of Valharra の世界なので、美的表現が車を表現する言葉にずれている。砂漠の世界で木を指す言葉すら知らないウォーボーイたちなので、この方面の表現が乏しくなっているのは当然といえば当然。
  • Shred her ! 砂嵐後のマックスとフュリオサらの乱闘をマックスが制した後、ニュークスがフュリオサを罵倒する所で出てくる。字幕は「死ね!」ですが、直訳すると「彼女をバラバラにする!」なので殺し方、結構エグそうです。
  • Green place of many mothers  「緑の地」の正式な名称。スプレンディッドがウォー・リグの前で銃撃される直前にこの形で述べているが、字幕では「緑の地」としてしか触れられていない。
  • He’s a crazy smeg who eats schlanger. ダグがウォー・リグ車内でマックスを罵った際の言葉。「ホモ野郎」云々と字幕に出てました。「彼は自分自身のナニを食べるイカれたチンカス野郎だわ」ぐらいの意か。(smeg=smegma=恥垢。schlanger=高齢オーストラリア人のスラングで男性器の意)
  • Gas Town Boys 追跡戦に加わったガスタウンの部隊の呼称。字幕では「ガスタウン軍」。部隊はガソリン精製能力があるという大型リグ(ピープル・イーター座乗)、ポールキャッツ、フレーマー(火炎放射器)から成る。
  • Bullet Farm / Farmer 字幕では「武器農場」「武器将軍」。ガスタウンと異なり、部隊名称は Bullet Farmer となっているようなのですが、結果として司令官の名前と区別が付かないという現象が起きています。また部隊編成もRip-Saw戦車(司令官専用車らしい)以外はよく分からない。
  • We count Three War parties ! Rock Rider の人がフュリオサを難詰した際の台詞。字幕だと「大軍団」ですが、台詞としては「3つの部隊」ぐらいが相当。
  • Pass 字幕では「門」「谷」となっていた部分。普通は「峠」ですね。門はさておき谷はどうかなと。
  • I’ll pike her in the spine, keep her breathing for you. ニュークスがイモータン・ジョーにフュリオサの生け捕りを提案する際の台詞。字幕は「生け捕りにします」といった意味で出ていたと思いますが、実際のところはフュリオサの背骨に手に持っていた工具を突き立てて、息はある状態でイモータンに差し出すと言っている。脊髄分断して動けなくすると言っているわけなので、この時のニュークスは「ヴァルハラから名前を呼ばれた状態」、つまりやる気満々だった事が分かる。
  • McFeasting ニュークスがリグ上の銃座でケイパブルと話している際にヴァルハラについて「不死となり全ての時代の英雄たちとの饗宴が繰り広げられる」と説明している時に出てくる単語。おそらくFeast(饗宴)にMc+ingで動詞化したものだと思われる。(注:+ingつけないと登録商標になるので、という事が影響している可能性がある。商標登録者=マクドナルド・オーストラリアらしい。)ミラー監督インタビューによると大半の言葉はそのまま使っているそうですが二語だけ元の単語を調整した造語になっているとの事。(もう一つはImortal → Imortan)
  • Tree / Tree things ニュークスが「高くなっているところにある物」といった所でケイパブルに「彼の言っているのは木の事」と言われるところから、ニュークスが「Tree」という単語を知らなかった事が分かる。でもその後で木を呼ぶ際に「Tree Things」と言っていてよく理解は出来てなかった事が分かるようになっている。
  • It was poisoned. It was sour. Vuvaliniたちと出会った際にフュリオサが「緑の地」について尋ねた際の回答の一部。土壌の毒性の他に酸性化が起きていると言っている。字幕では酸性化は触れてない。
  • Shows 字幕では「テレビ番組」となっていた部分。そのような存在がすでに失われて久しいので「ショー」という言い方しか出来なくなっている。
  • Baby 「Pregnant」(妊娠)という単語が失われていて、Babyで表現するように変わっている。(発音としては「バイビー」)
  • Mad 字幕では「MAD(狂気)」で何回か出てきますが、台詞としては insane、crazyのいずれかです。

12. 余談
  • 最後のショットで画面右端に破損したチューバが飛んでいくのが見えます。Doof Wagon、どうもチューバ装備しているようですね。15回目でようやく気付くぼんくらでした。。。
    フォロワーの方から教えて頂きましたが、トランペットやホルンともどもDoof Wagonに装備されていたとの事。ラッパ型スピーカーに見えた分、実際はこれら楽器だったという事です。(どうやって演奏する仕組みになっているかは謎)
    なおサウンドトラックを演奏したオケはホルン隊(12名)はクレジットされてますが、トランペット、チューバはいません。


参考資料)