2013年12月14日土曜日

[映画] ゼロ・グラビティ

2013年12月14日(土)に3D吹替版で見ました。
(2回目:12月27日(金)IMAX 3D字幕版)
ネタバレします。























STORY
映画の構造はシンプル。ロシアの衛星爆破でケスラー・シンドロームと思われる衛星の連鎖破壊現象が発生して、ハッブル望遠鏡を修理していた医療ミッションスペシャリストのライアンとミッションコマンダーのコワルスキー「中尉」は帰る先であるスペースシャトルを失う。どうやって地球へ帰るのか。コワルスキーが装備していた宇宙遊泳用パックを利用してISSへ向かう二人。90分ごとに襲って来る破片をかわしてどうやって地球へ戻るのか。

新しい3D映画ショーケース(宇宙編)
宇宙での3D映画作品のショーケースとも言うべき作品でした。二人の顔のクローズアップ等丁寧な3D映像になっていて、納得のリアリティ。私は普通の3Dで見たのですが、可能ならIMAXで、と言い切れる一作になってます。
飛んで来る破片が当たると思わされる迫力、スピード感。グルーニーとブロックの二人の宇宙の無重力での動き等、どうやって撮ったのか見当がつきません。

シンプルな物語
地球へ戻る。その為に何が使えるのか。そして何故生きる為に戦うのかを問い続ける構造。実のところ物語自体は海難ものの定番「ポセイドン・アドベンチャー」や山岳遭難ものが持つストーリーそのもの。ただそれが悪いかといえば、本作にはマッチしていてこの事が本作の問題点という事はありません。

モチベーションがないライアンをコワルスキーが勇気づけるシーン。「ひょっとして2001年宇宙の旅以来の宇宙服なし真空状態?」と思ったら実は……というのもわりと定番展開。人によってはどこかでコワルスキー再登場すると読んでたのではないかなと。ただグルーニーが総じてはまり役(ブロックのライアンもですが)なので、文句はありません。

問題点
・コワルスキーが単なるLieautenantで(陸海空で異なりますが、大尉か中尉にしかならない。古参ミッションコマンダーなら佐官級のはず)、宇宙遊泳でハッブルを修理していたライアンが医療ミッションスペシャリストという設定は謎です。英語もそうなっているのでわざとなんでしょうけど。。。
・静止軌道で起きたと思われる事故(放送衛星が落ちて行くシーンもあったところから推定)で、高度500km以下と比較的低高度を飛ぶISSやスペースシャトルに破片が降り注ぐと思えないのですが、どうでしょう?
・ISS到着時にコワルスキーがある決断をする訳ですが、ワイヤー類でからまったライアンがコワルスキーのワイヤーをつかんで止めた状態だと、運動量が全部ISSに吸収されるのでフックを外しても飛んで行く事はないはずなんですが。(このシーン、そもそも山岳もののザイル1本でぶらさがった人が自らザイルを切るシーンの応用でしょうね)
・ソユーズの帰還用ポッドの着陸時再噴射ロケット。制御卓でパラメーター入れたらだませるものかなと。あと船首を目標に向けて噴射という表現であっさりたどり着けるものなのかも謎です。
・中国版ソユーズで降下したライアン。損傷があったのかポッド内の操縦系が燃えて行くのですが、あんなに火がつくものなのかなと。ヒューズやブレーカーがとんで終わりだと思うのですが、一体どういう状況だったのか謎です。

にもかかわらず傑作
まずは実際に宇宙で見てきたかのような映像のリアリティの高さは圧巻。上記で上げた欠陥もだいたいは見ている間は気付いてません。(コワルスキーの決断シーンは除く。どこのアルプス、ヒマラヤかと思った)
宇宙を扱う映画の水準を押し上げる可能性を秘めた映画であり、3Dで見ておく事を強くお勧めしたいと思います。

IMAX 3D
映画世界の没入感は通常の3D版と比較になりません。天井から床まで使うスクリーンサイズでようやくライアンの背後で起きていた事の予兆が描かれていたりと、そもそも本作の作り込みが細かいところまで手が及んでいて、それが普通のスクリーンだと気付きにくいという事でしょう。
字幕版は文字大き過ぎで3D映像の邪魔でした。
ただこの字幕版で良かったのは日本語字幕の内容を台詞を一部聞き取って補足できた点。日本語吹替版、微妙に説明が省かれているような印象があります。例えばライアンがメディカルMSである点はハッブルに搭載されたシステムがライアンの手によって開発、NASAに提案されたものである事は触れられてます。(でもコワルスキーが「中尉」であるという謎は解けず)

クルーニー、ブロックの台詞、環境音を上手く織り交ぜていて臨場感が高い。これは日本語吹替では再現出来ていない所ですね。
この事を考えると単純にIMAX 3D日本語吹替版で、という気にならないのは確か。