2012年4月21日土曜日

[映画] 「裏切りのサーカス」(Tinker Tailor Soldier Spy)


4月21日、28日、5月12日の3回見ました。


まず洋画配給会社の皆さんのおかげで見られた事に感謝しつつ、小説がとっくの昔に邦訳されていて傑作とされていたのにそれを台無しにするマーケティングセンス、というより知識のなさを糾弾したい気分に駆られた邦題でした。「裏切りのサーカス」でル・カレ原作知っている人が気付かない=潜在的映画観客を自ら減らす行為にしか見えません。要するに「NUTS!」(1944年にバストーニュでドイツ軍に降伏勧告を受けたマコーリフ准将の返答)ってことです。

映画、主人公であるスマイリーが基本無口。日本で多いナレーションの類もなし。監督の演出力が問われるところ。Cに引退を道連れにされたスマイリーが次官に呼び出されて面談するシーン。机越しに話をするシーンが結構面白い。最初は机の間にオブジェがあって画面を分断。次官に対して「引退している」と反感を示すところは、オブジェによって同じ立場に立っていない事を暗示。
アングルが変わってオブジェが画面右側に写るだけのシーンになってから、次官の説得を受けてスマイリーが支援要員の要求をするようになった訳ですが、この時点で「拒否」から同じ側に立った事をスクリーン上でも示しているように思えます。

一見、アクションシーンが少ないのですが、いざ出てくるとリアルな描写多数。エンドロールを見ているとハンガリー、イスタンブールの撮影チームもクレジットされていたので手が込んでいます。70年代の英国など東西冷戦華やかな頃の世界がうまく映像化された印象でした。VFXのクレジットもあったのですがどういうところで使っているのか、なかなか想像出来ません。

チケット購入時に小さなリーフレットを渡されたのですが、2回目以降1000円という複数回見る事推奨映画になっています。問題はやっている映画館が名古屋でも中心地ではなく港寄りだという点。この事さえなければあと1回見て膨大な映像情報を見直したいところです。中部はあと静岡しか上映がないという点が本当に残念。洋画冬の時代、更に状況が悪くなっているように思えます。(結局もう2回見ました)