2012年3月3日土曜日

オーケストラアンサンブル金沢定期演奏会

日時:2012年3月3日(土)15:00〜
会場:石川県立音楽堂コンサートホール

指揮:井上道義
ソプラノ:アンナ・シャファジンスカヤ
バス:ニコライ・ディデンコ

プログラム
ビゼー=シチェドリン/カルメン組曲
ショスタコーヴィチ:交響曲14番


「カルメン」は編曲経緯が面白い。バレエ楽曲として編曲を委嘱しようとしてショスタコ先生などがビゼーの、あの傑作の編曲かという事で回避。結局夫だったシチェドリンが編曲を手がける事になったとか。
当日の演奏は井上道義氏の「踊り」が入るという演出。オケ、観客の信頼関係がなければ「地方都市を馬鹿にしている」とか言われるようなやり方ですが、ちゃんとオケの指揮はされていた訳で、固定概念で批判は適当ではないと思う。

後半は本命のショスタコーヴィチの交響曲14番。「死者の歌」とも言われる交響曲ですが、これも作曲家自身の命名ではなかったらしく本演奏会では「14番」にて記載。
歌手の二人はショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト時の方が再度招聘されていたのですが、バスの方が病気降板でディデンコ氏に交替。演奏を聞いての感想は素晴らしいもので降板だから、といった事は全くなかったと思う。
この公演、プロジェクターとスクリーンが用意されており、オケの上のスクリーンに詩の訳の字幕が投影される仕組み。井上道義氏は観客の楽曲理解を重視されている事がよく分かるし、実際演奏中に紙の音がしないという事一つとっても大変有効な方法でありがたかった。

演奏は見事。歌手二人の見事な歌唱力。14番は複数の詩から成っていて描かれる世界が全く異なるのですが、字幕のおかげで内容理解しながら歌を聴く事が出来た事は大変ありがたく作品世界を堪能する事が出来た。
ショスタコ先生の歌付交響曲はこの演奏会まで敬遠気味でしたが、食わず嫌いでした。ショスタコ先生は「死」をテーマにした作品を選んでいましたが、自分の人生の残り短さが要因だったようには思えなかった。ただ人生の最後に直面した人々に対する敬意からこの作品を書いたのではないか。そう思わされる詩の選択と作曲だったように思えた。
遠征した甲斐がありました。この演奏会に行けて本当に良かった。