2010年11月29日月曜日

米澤穂信「折れた竜骨」


米澤作品は古典部シリーズ、「さよなら妖精」、「ボトルネック」など日常の謎型ストーリーが多いと思っています。
これらの作品はストーリーが主でその中に謎解きが埋め込まれており小説の旨みや苦みを楽しめますし、ここが持ち味じゃないかと思っています。

「折れた竜骨」は魔術がある中世欧州を舞台とする事で本格推理を展開する舞台を構築したという意味で直球の本格推理勝負に出た作品。
戦闘シーンや細やかに書き込まれた世界観は素晴らしいのですが、私には何かが足りない。。。
多分もう一度読み返さないと結論は出そうにないのですが、一つ思い当たるのは今回のトリックは読んだタイミングではなるほどと思いつつも、それって分かる訳がないと思わせてしまっている点が問題の一つ。ある意味凄いロジックだけど、それって読み手の事は考えてないように思える。
ネタバレは出来ないからこれ以上は書きませんが、小説としては納得しかねるオチだなぁ。。。

この種の作品の先達としては北山猛邦さんの「少年検閲官」がありますが、
同作品を超えられていないように思えます。
こちらも本格推理の系譜に属する作品ですが独特の世界観、終末感は素晴らしいものがあります。この作品の終末感は未だ記憶に残っています。
こちらも東京創元社のミステリ・フロンティアレーベルですね。
少年検閲官 - 北山猛邦|東京創元社 http://ow.ly/3gr6a


「少年検閲官」で持ち込まれたルールはありえない世界観です。
ただ現代世界がベースなのでそのありえなさが想像力をかき立てる。
「折れた竜骨」は緻密な世界表現と言ってもそもそも中世に詳しい訳ではないし、そこで魔術解禁されても足腰が弱いのでファンタジーになってしまう問題。
正直別に中世欧州でなくても中世日本で良かったのではないか。
だとすれば、まだ立脚点があるのでそこで呪術が入ってきてもしっくり読めたと思う。
結局、修道士カドフェルシリーズに免疫があるかどうかなのかなぁ。。。
悪い作品じゃないけどいつものように没入し損ねたのが残念。