2017年10月29日日曜日

映画「女神の見えざる手」ワシントンD.C.のロビイストが銃規制で対峙するポリティカル・スリラーの傑作

 ジェシカ・チャステイン主演のワシントンD.C.のロビイストもの。予想以上に面白いスリリングなポリティカル・スリラーに仕上がっていた。



  主人公は天才的なロビイスト。法律の穴を突いて依頼主の目的である法案の成立または成立阻止に向けて全力を尽くす。勝利至上主義のためなら何でも利用する手段を選ばないエキセントリックな女性でジェシカ・チャステインの演技がこの作品を支えている。

  彼女は全米ライフル協会側の依頼を断る。実の所この仕事は思想信条だけでは断ってない。それだけなら多分彼女は引き受けたんじゃないか。
  それよりも依頼主が度しがたい時代錯誤で女性を馬鹿にしたシンプルで馬鹿げた案を持ってきて侮辱されたと思ったから撤回させて建て直させようとした。そして依頼主より自分の上司が激怒。その結果「それなら向こう側を勝たせてやる」と考えたのが発端になっている。
  勝利主義者にとって負けると分かっている勝負を上司のご機嫌取り如きで受けるような真似はしない。それが彼女の仕事に対するルールなのだから。

  この作品の推進力は彼女のそういう勝利至上主義の下に抱えている謎にある。そして物語が最後に辿り着いた時の鮮やかな一手に驚かされる作品に仕上っている。彼女の勝利至上主義における犠牲には何も例外はない。何もだ。それ故に彼女は最後に嫌われていた人物にすらある種のリスペクトを勝ち得ている。

  公開規模が小さく見に行くのが大変なのが残念です。こんな面白い政治スリラーは早々ないと思います。



ロビイスト:アメリカ議会などに働きかけを行う専門職。外国政府から受託して活動するロビイストもいる。(参考)「米国の気候変動政策過程の背後で働くロビイスト

スーパーPAC:Political Action Communitee=政治活動委員会。政治献金の話はほとんど出てこない。支持候補・政党と関係ない政治的表明であれば献金額の制限を受けないため政治行動委員会(PAC)が資金集めとその資金を用いたネガティブキャンペーンの発信源になっていて、しかもそれが選挙戦のCM戦略の中心になっていて膨大な選挙資金が必要な理由にもなっている。議員を動かす鍵の一つはこの巨額な運動資金献金がある事は台詞で示される。

ポリティコ:ワシントンD.C.の議会、ホワイトハウス、ロビイスト、報道機関に特化したマルチメディア・ニュース。