2014年11月21日金曜日

ラザレフと日本フィルのショスタコーヴィチ交響曲第4番

2014年10月25日(土)、こだまに乗って東京へ上京。5年ぶりのサントリーホールへ。
この日の演目はチャイコフスキーの弦楽セレナーデとショスタコーヴィチの交響曲第4番という大曲。2014年の本曲演奏はピアノ4手連弾(ショスタコーヴィチによる試演用編曲版が存在)が東京で、また春には大阪フィルが常任指揮者に就任された井上道義氏の指揮で演奏。そして日本フィルが今年最終の演奏に。管弦楽版は編成も大きく国内だと年1回あれば良い所だと思うのできわめて特異な年になりました。



私の場合はTwitterの日本フィル公式アカウントで土曜日の演奏会に若干空きがあるとの情報を見て、事務局にTEL入れて速攻で予約。(最終的に土曜日も全席完売)

昼前に会場近くの駅に到着。コーヒーを飲みながら時間調整の上でプレトークを聞くべくサントリーホールへ。山野さんのプレトークはチャイコフスキーの弦楽セレナーデ=肉汁たっぷりと表現。またショスタコーヴィチ交響曲第4番についてはシンプルかつ的確。この曲に意味や物語を探してもない、感じるしかない事やショスタコーヴィチの二面性の指摘。喜怒哀楽全部入っている曲だと思っていたので納得の解説でした。

今回の座席は1F4列目中央。ラザレフさんの指揮を正面近くで堪能出来る配置。代わりに後方の奏者が見えにくいのが難点でしょうか。音は解像度が高くサントリーホールの豊かな残響を堪能出来る場所ではあったと思います。

チャイコフスキーの弦楽セレナーデは弦楽の音の厚みが襲いかかってくる演奏。確かに肉汁たっぷりだ、これは。そしてラザレフさんの指揮を見ていると演奏+残響のコントロールを意識して振られていたように見えた。

休憩後、ショスタコーヴィチ交響曲第4番。コンマスのヴァイオリンの弓の毛がいきなり1本切れたのが見えたのですが冷静に猛烈な演奏が続く。
ラザレフさんの指揮は精緻。ショスタコーヴィチの楽譜自体変な所があって低音通奏させておきつつ、別のパートがメロディを奏でて被せるといった事を仕掛けている。CD音源だとこのあたり音量も小さく分かりにくい所ですが、ライブで見ているとラザレフさんが指示を送ってコントロールしているのが見て分かる。本曲はこのような弦楽セクションがメロディを紡ぎ音を揺らす中で金管、木管、パーカッション、ピアノ・チェレスタなどの楽器を巧く入れて出す必要があり、指揮者が全体を把握して上手に進行させつつ感情を込めた演奏を引き出さなければならない。指揮者の負担が絶大。
ラザレフさんが日本フィルを振るようになって時が経過していますが、その信頼関係があって熟成した演奏になっていたように思えます。

第3楽章最後のチェレスタ。この部分の演奏は通常メロディーを奏でるのが通例。ラザレフさんの指揮はこの点を音を置いていくようにキューを送っていてメロディー性を排除していた。演奏会終了後、iPodに入れてあった本曲音源確認しましたが、この点は特異な解釈による演奏だったように思います。(本曲の世界初演で指揮をしたキリル・コンドラシンさんの音源もここはメロディーになっている)
私はこの新しい解釈による演奏は、本曲で見せた世界から現実に戻るに際しての最後の「希望」的なものを感じて、これはこれでありだろうと思ったのですがどうでしょうか。

追記:この時のライブ録音のCDがオクタヴィアレコードから2015年5月29日発売されるとの事で楽しみです。